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[O07-P73] 輝線に見るセイファート銀河の特徴
キーワード:分光観測、輝線、活動銀河核
要旨
岡山県美星天文台の口径101cm望遠鏡で、10個のセイファート銀河の低分散分光観測を行った。取得したスペクトルデータを分析し、それらに見られるHα、Hβ、HeⅡ、[NⅡ]、[OⅢ]、[SⅡ]等の輝線の幅や強さを測定し、セイファート銀河中心核における元素の分布のモデル化を行った。また、前出の輝線の幅からセイファート銀河を再分類した結果、型の変化したものも見られることから、銀河中心核にある分子トーラスの濃度は一定ではなく、ムラがある可能性が示唆された。
1.はじめに
セイファート銀河とは、1943年にC.Seyfertが発見した活動銀河の一種である。セイファート銀河は、大多数が渦巻銀河で、1974年にE.KhachikianとD.Weedmanが、中心核のスペクトル中の輝線の幅が広い1型と輝線の幅が狭い2型に分類した。今日では、1型と2型の中間的なセイファート銀河は1.5型と呼ばれ、クェーサーやブレーザーなども含めた活動銀河核統一モデルが提唱されている。
高校生の先行研究としては、岡山県立玉島高校(2010)や本校平成29年度(2017年度)卒業生が、分光観測により様々な活動銀河核に表れる輝線の特徴について研究を行っているが、我々は対象をセイファート銀河に絞り、一歩踏み込んで輝線の幅や強度について量的に捉えたいと考えた。
2.目的
我々の目的は、同定した1型・2型の輝線の特徴の違いからセイファート銀河中心核付近の構造を明らかにすること。また、文献により分類が異なる為、我々が取得したスペクトルを用いて、セイファート銀河を分類し直すことである。
3.方法
岡山美星天文台にある口径101cmカセグレン式反射望遠鏡、分光器、冷却CCDカメラを使用して、セイファート銀河と考えられている下表の10個の銀河の低分散分光観測を行った。さらに、これらの天体の観測データをすばる画像処理ソフト「Makali’i」や分光データ解析ソフト「BeSpec」(川端哲也氏)を用いて処理し、「Microsoft Excel」を使用して各輝線の幅(FWZI)を測定した。
4.結果
各セイファート銀河についての輝線幅を下表に記す。
5.考察
我々の観測から、以下の2点の考察を得た。
(1) 下図に示すとおり、銀河核中心部にはHやHe、銀河核外縁部にはO・N・Sといった元素が多いと言える。(2) 観測データからセイファート銀河を再分類した結果、型の変化したものも見られることから、銀河中心部の分子トーラスの濃度は一定ではなく、ムラがある可能性があると考えた。
謝辞
本研究を行うにあたり、大阪教育大学の福江純先生、松本桂先生及び美星天文台の前野研究員、伊藤研究員にご指導、ご助言をいただきました。この場をお借りして厚く御礼申し上げます。
参考文献
1)谷口義明ら,『シリーズ現代の天文学4 銀河Ⅰ-銀河と宇宙の階層構造』,日本評論社,2007
2)福江純ら,『超・宇宙を解く-現代天文学演習』,恒星社厚生閣,2014
3)福江純,『完全独習 現代の宇宙物理学』講談社,2015
4)国立天文台・(株)アストロアーツ,「Makali’i マカリ」 http://makalii.mtk.nao.ac.jp/
5)川端哲也,「BeSpec」 http://www.bao.city.ibara.okayama.jp/soft/bespec/index.html
6)R.MAIOLINO, "MOLECULAR GAS, MORPHOLOGY, AND SEYFERT GALAXY ACTIVITY", THE ASTROPHYSICAL JOURNAL, 1997 August
7)Catalogue of Seyfert Galaxies http://spider.seds.org/spider/ScholarX/seyferts.html
8)原田瑞穂(玉島高等学校),活動銀河核の分光観測とブラックホールとの関連
http://www.asj.or.jp/jsession/old/2010haru/28_jsession2010.pdf
9)奈良県立青翔高等学校第12期生,『平成29年度卒業生 スーパー探究科学論文集』,2018
岡山県美星天文台の口径101cm望遠鏡で、10個のセイファート銀河の低分散分光観測を行った。取得したスペクトルデータを分析し、それらに見られるHα、Hβ、HeⅡ、[NⅡ]、[OⅢ]、[SⅡ]等の輝線の幅や強さを測定し、セイファート銀河中心核における元素の分布のモデル化を行った。また、前出の輝線の幅からセイファート銀河を再分類した結果、型の変化したものも見られることから、銀河中心核にある分子トーラスの濃度は一定ではなく、ムラがある可能性が示唆された。
1.はじめに
セイファート銀河とは、1943年にC.Seyfertが発見した活動銀河の一種である。セイファート銀河は、大多数が渦巻銀河で、1974年にE.KhachikianとD.Weedmanが、中心核のスペクトル中の輝線の幅が広い1型と輝線の幅が狭い2型に分類した。今日では、1型と2型の中間的なセイファート銀河は1.5型と呼ばれ、クェーサーやブレーザーなども含めた活動銀河核統一モデルが提唱されている。
高校生の先行研究としては、岡山県立玉島高校(2010)や本校平成29年度(2017年度)卒業生が、分光観測により様々な活動銀河核に表れる輝線の特徴について研究を行っているが、我々は対象をセイファート銀河に絞り、一歩踏み込んで輝線の幅や強度について量的に捉えたいと考えた。
2.目的
我々の目的は、同定した1型・2型の輝線の特徴の違いからセイファート銀河中心核付近の構造を明らかにすること。また、文献により分類が異なる為、我々が取得したスペクトルを用いて、セイファート銀河を分類し直すことである。
3.方法
岡山美星天文台にある口径101cmカセグレン式反射望遠鏡、分光器、冷却CCDカメラを使用して、セイファート銀河と考えられている下表の10個の銀河の低分散分光観測を行った。さらに、これらの天体の観測データをすばる画像処理ソフト「Makali’i」や分光データ解析ソフト「BeSpec」(川端哲也氏)を用いて処理し、「Microsoft Excel」を使用して各輝線の幅(FWZI)を測定した。
4.結果
各セイファート銀河についての輝線幅を下表に記す。
5.考察
我々の観測から、以下の2点の考察を得た。
(1) 下図に示すとおり、銀河核中心部にはHやHe、銀河核外縁部にはO・N・Sといった元素が多いと言える。(2) 観測データからセイファート銀河を再分類した結果、型の変化したものも見られることから、銀河中心部の分子トーラスの濃度は一定ではなく、ムラがある可能性があると考えた。
謝辞
本研究を行うにあたり、大阪教育大学の福江純先生、松本桂先生及び美星天文台の前野研究員、伊藤研究員にご指導、ご助言をいただきました。この場をお借りして厚く御礼申し上げます。
参考文献
1)谷口義明ら,『シリーズ現代の天文学4 銀河Ⅰ-銀河と宇宙の階層構造』,日本評論社,2007
2)福江純ら,『超・宇宙を解く-現代天文学演習』,恒星社厚生閣,2014
3)福江純,『完全独習 現代の宇宙物理学』講談社,2015
4)国立天文台・(株)アストロアーツ,「Makali’i マカリ」 http://makalii.mtk.nao.ac.jp/
5)川端哲也,「BeSpec」 http://www.bao.city.ibara.okayama.jp/soft/bespec/index.html
6)R.MAIOLINO, "MOLECULAR GAS, MORPHOLOGY, AND SEYFERT GALAXY ACTIVITY", THE ASTROPHYSICAL JOURNAL, 1997 August
7)Catalogue of Seyfert Galaxies http://spider.seds.org/spider/ScholarX/seyferts.html
8)原田瑞穂(玉島高等学校),活動銀河核の分光観測とブラックホールとの関連
http://www.asj.or.jp/jsession/old/2010haru/28_jsession2010.pdf
9)奈良県立青翔高等学校第12期生,『平成29年度卒業生 スーパー探究科学論文集』,2018