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[PCG17-P02] 将来の惑星探査機搭載用高エネルギー電子観測器のASIC技術による小型化開発
太陽系の宇宙空間の電子の起源は太陽と惑星大気であり、その典型的なエネルギーは10 eV以下である。それにもかかわらず、keVを超えるエネルギーの電子があらゆる惑星近傍で観測されており、一部は惑星大気に降りこんでエネルギーを与える。その加速機構の解明、惑星環境への影響の評価は惑星科学における重要課題である。特に10-100 keVのエネルギーは熱的な分布から非熱的な分布に遷移する点で電子の加速研究において重要なエネルギー帯である。近年このエネルギー帯に感度の良い検出器であるAPD(Avalanche PhotoDiode)が地球周回衛星用の電子観測器に適用された。本研究ではAPDを惑星探査機搭載用の電子観測器に応用する。我々はこれまでの研究で衛星スピンに依存せず、2-pi srの半球視野をカバーできる高エネルギー電子観測器を開発し、ロケット実験で超高層大気での動作性能を確認した。一方で視野を広げたことで重量が増加し、ペイロード重量制限の厳しい惑星探査搭載には不向きである。そこで電子観測器で大きな体積を占めている信号処理基板をASIC (Application Specific Integrated Circuit) 化することで、観測器を小型化することを目指している。この研究は遠方の惑星探査や小型探査など、近年の小型化需要に応えるものである。我々はこれまでに前置増幅・波形整形・ピークホールド回路・ADC回路を含む信号処理回路のASIC回路設計・シミュレーション・素子配置設計を行ってきた。この回路はAPDの信号処理に最適化した設計となっており、APDが増幅率を内蔵し、大きな容量を持つという特性を考慮して、ダイナミックレンジ~106 e-・波形整形回路の時定数~1 μsとなるような回路設計を行い、シミュレーション上での動作を確認した。ASIC回路の素子配置設計では、5 mm四方のチップに搭載可能なサイズに収まるように設計した。これは元の基板サイズのおよそ100分の1である。さらに本研究ではAPD信号処理用ASICの動作をコントロールする回路の設計を行い、シミュレーションで動作を確認した。