日本地球惑星科学連合2021年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 P (宇宙惑星科学) » P-CG 宇宙惑星科学複合領域・一般

[P-CG18] 惑星大気圏・電磁圏

2021年6月3日(木) 10:45 〜 12:15 Ch.04 (Zoom会場04)

コンビーナ:関 華奈子(東京大学大学院理学系研究科)、前澤 裕之(大阪府立大学大学院理学系研究科物理科学科)、今村 剛(東京大学大学院 新領域創成科学研究科)、寺田 直樹(東北大学大学院理学研究科)、座長:原田 裕己(京都大学理学研究科)、今村 剛(東京大学大学院 新領域創成科学研究科)、寺田 直樹(東北大学大学院理学研究科)

11:30 〜 11:45

[PCG18-10] Mars Global Surveyorの電波掩蔽データ解析による火星大気の微細構造の抽出

*櫻井 龍太郎1、今村 剛1 (1.東京大学 新領域創成科学研究科)

電波掩蔽観測は、惑星大気中の微細な構造を研究するための効果的な手法の一つである。探査機から送信され惑星大気を通過したのち地上局で記録された信号データから大気の鉛直構造を導出する手法として、従来は各瞬間の電波経路を算出してから大気構造を求める幾何光学法が用いられてきた。これに対し、近年考案された電波ホログラフィ法は信号の時系列全体からまとめて大気構造を導出する。この一種であるFull Spectrum Inversion (FSI)(Jensen et al.2003)がImamura et al. (2018)によって金星大気に応用され、幾何光学法と比べて大幅に鉛直分解能が向上することによりこれまでの解析では捉えきれなかった大気中の細かい構造が見えてくることが示された。
火星では火星探査機Mars Global Surveyor (MGS)の電波掩蔽観測により火星大気の温度構造が求められ、そこから、大気重力波、対流境界層、夜間に発生する氷の雲による薄い安定層等の様々な微細構造が存在することが明らかにされてきた。そのような流体力学過程はエネルギーと運動量の輸送に重要な役割を果たしていると考えられている。しかし、従来の解析では高度分解能が1km程度であり、これらの現象の鉛直構造を十分に分解することができない。本研究の目的は、新しい解析手法であるFSIを火星の電波掩蔽データに適用することで、火星大気の微細構造をこれまで以上の分解能で解析し、これらの小規模プロセスの詳細を明らかにすることである。
本研究では、MGS電波掩蔽データを従来の幾何光学法と新手法であるFSIで解析し、結果を比較した。MGSは1997年から2006年までのミッション期間中に多数回の電波掩蔽を実施したが、ここではその一部のデータについての現段階における結果を報告する。また、幾何光学法によるMGS電波掩蔽データの解析はMGSプロジェクトによる公式プロダクトとして既に公開されているが、今回行った幾何光学法による解析ではより微細な構造が認められるため、その比較についても報告する。