日本地球惑星科学連合2021年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 P (宇宙惑星科学) » P-CG 宇宙惑星科学複合領域・一般

[P-CG18] 惑星大気圏・電磁圏

2021年6月3日(木) 17:15 〜 18:30 Ch.01

コンビーナ:関 華奈子(東京大学大学院理学系研究科)、前澤 裕之(大阪府立大学大学院理学系研究科物理科学科)、今村 剛(東京大学大学院 新領域創成科学研究科)、寺田 直樹(東北大学大学院理学研究科)

17:15 〜 18:30

[PCG18-P04] 木星氷衛星大気におけるNaとCaの探索:地上望遠鏡による可視観測

*高木 聖子1、松尾 太郎2、木村 淳3、吉岡 和夫4 (1.北海道大学大学院理学研究院、2.名古屋大学、3.大阪大学、4.東京大学)

キーワード:ガリレオ衛星、大気、地上観測

大気中の原子は太陽光共鳴や電子衝突により励起され、特定波長の輝線を発する。イオやエウロパにおいては、ナトリウム原子とカリウム原子による発光輝線(波長590, 767 nm)が検出されたことから、イオやエウロパ周辺にナトリウム及びカリウム原子の存在が明らかになった[Brown and Chaffee, 1974; Trafton, 1975; Brown and Hill, 1996; Brown, 2001]。イオにおいて検出されたそれらの原子の起源は、イオの火山から噴出した火山ガスに起因すると推測されている。エウロパにおいては、地下海由来の塩類が存在する衛星の表面に木星磁気圏の高エネルギー粒子が衝突し、原子が叩き出される(スパッタリング)という内的要因や、彗星等による衝突加熱と昇華により、彗星か衛星のいずれかに内在した原子が生じる衛星の内的または外的要因などが提案されているが、観測されたナトリウム/カリウム比がいずれの数値モデルによる見積もりとも合わないことから、原子の起源は謎のままである。同様の過程によるマグネシウム原子の発光(波長285.2 nm)も予測されたが検出には至らず[Horst and Brown, 2013]、現在検出されているのはイオやエウロパにおけるナトリウム原子とカリウム原子の発光輝線のみである。このような物質の探索は、現在のガリレオ衛星に存在する物質を知るだけでなく、衛星の誕生環境や進化過程を知る手がかりである。
北海道大学大学院理学研究院附属天文台(北緯44.4°、東経142.5°)は北海道名寄市にあり、地上望遠鏡(ピリカ望遠鏡)を所有している。ピリカ望遠鏡とその搭載観測装置は、惑星を優先的に観測することを目的として2011年に本格運用を開始した。主鏡口径は1.6 mであり、その大きさは惑星観測用の望遠鏡としては世界最大級である。ピリカ望遠鏡のカセグレン焦点には、本研究院宇宙惑星グループによって開発されたスペクトル撮像装置MSI (350-1050 nm)が搭載されている。我々は、大学の望遠鏡が持つ豊富な観測時間を活かして、2018年から2020年にかけてガリレオ衛星の大気観測を実施し、特にイオとエウロパ大気におけるナトリウムとカルシウムの探索を行った。本講演ではその報告を行う。