日本地球惑星科学連合2021年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 P (宇宙惑星科学) » P-CG 宇宙惑星科学複合領域・一般

[P-CG19] 宇宙における物質の形成と進化

2021年6月4日(金) 10:45 〜 12:15 Ch.04 (Zoom会場04)

コンビーナ:瀧川 晶(東京大学 大学院理学系研究科 地球惑星科学専攻)、三浦 均(名古屋市立大学大学院理学研究科)、大坪 貴文(自然科学研究機構 国立天文台)、野村 英子(国立天文台 科学研究部)、座長:荒川 創太(国立天文台)、山本 大貴(宇宙航空研究開発機構 宇宙科学研究所)

11:30 〜 11:45

[PCG19-04] 円盤形成初期にある連星系IRAS 16293-2422 Aを取り巻くエンベロープガス、原始星円盤、およびアウトフローの関係

*大屋 瑶子1 (1.東京大学)

キーワード:星間物質、低質量原始星、原始星円盤、連星系

近年、観測技術の向上によって、原始惑星系円盤がリングやギャップなどの内部構造をもつ様子が捉えられるようになった。これらの構造が惑星系形成過程においてどのような役割をもつのかは興味深いトピックである。同時に、その起源を探ることも円盤形成研究において重要な課題の一つである。とくに、円盤/エンベロープ構造の形成過程は、ガスの角運動量のやりとりを通じてアウトフローの噴出機構とも密接に関連する。我々はこの問いに取り組むため、円盤形成初期の段階にある若い低質量原始星天体に対して、ALMAを使った高解像度観測を実施してきた。
へびつかい座にあるClass 0天体IRAS 16293-2422は原始星天体Source A, Bからなる連星系である。さらに、Source A自体もまた非常に近接した連星系 (~50 au) である。我々は、波長1 mmおよび3 mmのALMA観測により、Source Aに含まれる原始星A1, A2を空間的に分解した。また、Source A全体を取り巻く円盤状のエンベロープガスと、原始星A1に付随する原始星円盤を検出した。これらのガス円盤の速度構造は、C17OとH2CSの分子輝線によって捉えられ、簡単な物理モデルによって再現された。我々はこの速度構造の解析から、ガスの比角運動量などの物理パラメータを評価した。
加えて、Source Aから吹き出すアウトフロー構造の根本付近を、SO分子輝線で捉えた。連星系Source Aは、2対のアウトフロー構造を持つことが知られており、このうち北西-南東方向に伸びるものを検出した。このアウトフロー構造は、円盤/エンベロープ構造と同じ向きの回転運動を示した。これら三つの構造でのガスの比角運動量を比較した結果、原始星A1に付随する原始星円盤がもつ角運動量を抜き取る機構として、このアウトフローが働いている可能性が示された。これらの構造がどのように相互に関係しているのかを明らかにすることは、この若い連星系での円盤形成過程を理解する重要な手がかりを与えると期待される。