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[PCG19-06] 熱くて塩っぱい大質量原始星円盤:星形成観測から隕石学への架け橋?
★招待講演
キーワード:星形成、アルマ観測、難揮発性物質
大質量星(>10太陽質量, >10,000太陽光度)は強力な輻射, 恒星風, 超新星爆発を介して、銀河内物質の物理的・化学的進化をコントロールする重要な天体です。形成段階から大質量原始星の輻射は強力で、周辺(>1000au)の分子雲ガスを100K以上にまで加熱し、大型有機分子などの多様な化学種の生成を促進します。このような領域/様相は「ホットコア」と呼ばれ、長年、星間化学の重要な研究対象とされていました。私たちはアルマ望遠鏡を用いて形成段階にある大質量連星系IRAS16547-4247の高分解能観測を行い、原始星近傍100au付近までの構造を詳細に調べました。その結果、2つの原始星円盤に付随する塩化ナトリウム(NaCl), ケイ素化合物(SiO, SiS), 振動励起した水(H2O v2=1)のガス分子輝線を検出しました(Tanaka et al. 2020, ApJL; 図参照)。星形成領域において難揮発性物質のガス分子が検出されることは稀で、特にNaClが発見されるのはこれが2例目となります。大型有機分子などの典型的なホットコア分子が1000auスケールのエンベロープ構造をトレースするのに対して、新たに発見された分子輝線は原始星近傍100auスケールの円盤構造の良いプローブとなることが分かりました。ダスト破壊によって生成される難揮発性分子ガスや、高励起状態(Eu/k>3000K)の水蒸気の存在は、大質量原始星円盤の熱くダイナミックな様子を示しています。このような「ホットディスク」は大質量星形成過程を詳細に探る鍵となるだけでなく、星形成領域における金属元素の研究に対して大きな可能性を秘めています。今後、ホットディスク輝線観測から、CAIやコンドリュールといった太陽系最古の隕石包有物の起源にも新たな知見を与えられることが期待されます。