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[PCG19-08] 非晶質ケイ酸塩ダストとCOガスとの酸素同位体交換速度論: 初期太陽系における酸素同位体進化への示唆
キーワード:非晶質ケイ酸塩、酸素、同位体交換反応、速度論、原始太陽系円盤
始原的太陽系物質の酸素同位体組成は、始原的固体物質と原始太陽系円盤ガスといった異なる同位体組成を持つリザーバー間の同位体交換に起因する質量非依存型の同位体分別を示す (e.g., Yurimoto and Kuramoto, 2004; McKeegan et al., 2011)。16Oに富むCOガス及び16Oに乏しいH2Oガスは、太陽系のもととなった分子雲または惑星系円盤においてCO分子の自己遮蔽効果により生成されたと考えられる (Yurimoto and Kuramoto, 2004; Lyons and Young, 2005)。したがって、3つの主要酸素同位体リザーバー (原始的固体物質, CO, H2O) 間の酸素同位体交換が、地球外物質に見られる酸素同位体変動をもたらしたと考えられる。
初期太陽系における主要な始原的固体物質の一つは、非晶質ケイ酸塩である (e.g, Nuth et al., 2005)。筆者らは先行研究において、非晶質ケイ酸塩-H2O間の酸素同位体交換速度を実験的に決定した (Yamamoto et al., 2018, 2020)。またH2O-CO間の酸素同位体速度論はAlexander (2004) により議論されている。しかし、非晶質ケイ酸塩-CO間の酸素同位体交換に関しては、未だ検討されていない。そのため本研究では、フォルステライト (Mg2SiO4) 組成を持つ非晶質ケイ酸塩 (以下、非晶質フォルステライト) と低圧COガスとの酸素同位体交換実験をおこなった。
実験にはガス導入系を有した真空加熱炉 (Yamamoto et al., 2018, 2020) を用いて、非晶質フォルステライト粒子 (平均粒径80nm) (Yamamoto et al., 2018) と18Oに濃集したCOガス (>95 atom% 18O) との酸素同位体交換実験を低圧COガス条件下 (PCO = 0.3 Pa)、温度803, 853, 883 Kで3–177時間実施した。炉内ガス種分析には、四重極質量分析計 (QMS) を用い、酸素同位体組成分析は、Yamamoto et al. (2020) で報告した分析手順を用いて、ペレット化した加熱試料について二次イオン質量分析装置 (Cameca ims-1280H) を用いておこなった。
加熱試料は、上記加熱条件下で結晶化せず (Yamamoto and Tachibana, 2018)、その酸素同位体組成 [18O/(18O + 16O)] (f18O) は、加熱時間にともなってほぼ直線的に増加した。QMS分析結果から、H218Oの分圧はPCOに比べ3桁以上低いことがわかった (< ~1 × 10–4 Pa)。加熱試料のf18O値は、~1 × 10–4 Paの分圧のH218Oガスと非晶質フォルステライトとの酸素同位体交換から予想される値 (Yamamoto et al., 2018) よりもはるかに大きい。このことから非晶質フォルステライト-C18O間で酸素同位体交換が起こったと結論づけた。加熱時間にともなうf18O値の直線的増加は、3次元球への拡散方程式 (Yamamoto et al., 2018, 2020) では説明できないことから、非晶質フォルステライト-低圧CO間の酸素同位体交換反応は、非晶質構造へのCOガスの溶解過程や、溶解したCO分子と構造中の酸素原子間の同位体交換過程に律速されていることが示唆された。また非晶質フォルステライト-CO間の同位体交換反応の時間スケールは、同じ温度圧力条件での非晶質フォルステライト-H2O間のものよりも約1–2桁小さいことがわかった (Yamamoto et al., 2018)。このように非晶質フォルステライト-CO間の酸素同位体交換は比較的遅い反応過程であるが、~0.1μmサイズの非晶質フォルステライトダスト-CO間の酸素同位体交換反応の時間スケールは、原始太陽系円盤における温度803–883 K, PCO = PH2O ~0.1 PaでのCO-H2O間の同位体平衡の時間スケール (Alexander, 2004) よりも4–5桁程度も短い。このことは、非晶質フォルステライトダストがCO, H2O両ガスと同位体交換を起こすことによりCO-H2Oガス間の同位体平衡を促進し、CO-H2O間の同位体平衡の時間スケールは、非晶質フォルステライトダスト-CO間の酸素同位体交換の時間スケール (e.g., 800–900Kで1年程度) によって決定されることを示唆している。つまり、原始惑星系円盤の酸素同位体平衡は,中低温領域 (~800–1200 K)において,非晶質ダスト-CO間の酸素同位体交換速度が律速となる。
初期太陽系における主要な始原的固体物質の一つは、非晶質ケイ酸塩である (e.g, Nuth et al., 2005)。筆者らは先行研究において、非晶質ケイ酸塩-H2O間の酸素同位体交換速度を実験的に決定した (Yamamoto et al., 2018, 2020)。またH2O-CO間の酸素同位体速度論はAlexander (2004) により議論されている。しかし、非晶質ケイ酸塩-CO間の酸素同位体交換に関しては、未だ検討されていない。そのため本研究では、フォルステライト (Mg2SiO4) 組成を持つ非晶質ケイ酸塩 (以下、非晶質フォルステライト) と低圧COガスとの酸素同位体交換実験をおこなった。
実験にはガス導入系を有した真空加熱炉 (Yamamoto et al., 2018, 2020) を用いて、非晶質フォルステライト粒子 (平均粒径80nm) (Yamamoto et al., 2018) と18Oに濃集したCOガス (>95 atom% 18O) との酸素同位体交換実験を低圧COガス条件下 (PCO = 0.3 Pa)、温度803, 853, 883 Kで3–177時間実施した。炉内ガス種分析には、四重極質量分析計 (QMS) を用い、酸素同位体組成分析は、Yamamoto et al. (2020) で報告した分析手順を用いて、ペレット化した加熱試料について二次イオン質量分析装置 (Cameca ims-1280H) を用いておこなった。
加熱試料は、上記加熱条件下で結晶化せず (Yamamoto and Tachibana, 2018)、その酸素同位体組成 [18O/(18O + 16O)] (f18O) は、加熱時間にともなってほぼ直線的に増加した。QMS分析結果から、H218Oの分圧はPCOに比べ3桁以上低いことがわかった (< ~1 × 10–4 Pa)。加熱試料のf18O値は、~1 × 10–4 Paの分圧のH218Oガスと非晶質フォルステライトとの酸素同位体交換から予想される値 (Yamamoto et al., 2018) よりもはるかに大きい。このことから非晶質フォルステライト-C18O間で酸素同位体交換が起こったと結論づけた。加熱時間にともなうf18O値の直線的増加は、3次元球への拡散方程式 (Yamamoto et al., 2018, 2020) では説明できないことから、非晶質フォルステライト-低圧CO間の酸素同位体交換反応は、非晶質構造へのCOガスの溶解過程や、溶解したCO分子と構造中の酸素原子間の同位体交換過程に律速されていることが示唆された。また非晶質フォルステライト-CO間の同位体交換反応の時間スケールは、同じ温度圧力条件での非晶質フォルステライト-H2O間のものよりも約1–2桁小さいことがわかった (Yamamoto et al., 2018)。このように非晶質フォルステライト-CO間の酸素同位体交換は比較的遅い反応過程であるが、~0.1μmサイズの非晶質フォルステライトダスト-CO間の酸素同位体交換反応の時間スケールは、原始太陽系円盤における温度803–883 K, PCO = PH2O ~0.1 PaでのCO-H2O間の同位体平衡の時間スケール (Alexander, 2004) よりも4–5桁程度も短い。このことは、非晶質フォルステライトダストがCO, H2O両ガスと同位体交換を起こすことによりCO-H2Oガス間の同位体平衡を促進し、CO-H2O間の同位体平衡の時間スケールは、非晶質フォルステライトダスト-CO間の酸素同位体交換の時間スケール (e.g., 800–900Kで1年程度) によって決定されることを示唆している。つまり、原始惑星系円盤の酸素同位体平衡は,中低温領域 (~800–1200 K)において,非晶質ダスト-CO間の酸素同位体交換速度が律速となる。