日本地球惑星科学連合2021年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 P (宇宙惑星科学) » P-CG 宇宙惑星科学複合領域・一般

[P-CG19] 宇宙における物質の形成と進化

2021年6月4日(金) 17:15 〜 18:30 Ch.06

コンビーナ:瀧川 晶(東京大学 大学院理学系研究科 地球惑星科学専攻)、三浦 均(名古屋市立大学大学院理学研究科)、大坪 貴文(自然科学研究機構 国立天文台)、野村 英子(国立天文台 科学研究部)

17:15 〜 18:30

[PCG19-P03] 50m大型ミリ波望遠鏡LMT/2mm帯受信機B4RによるOrion-KL領域の試験観測

*米津 鉄平1、前澤 裕之1、川邊 良平2、吉村 勇紀3、廿日出 文洋3、河野 孝太郎3、竹腰 達哉4、酒井 剛5、田中 邦彦6、谷口 暁星7、田村 陽一7、大島 泰2、島尻 芳人2、David Hughes8、David Sanchez-Arguelles8、Arturo Gomez-Ruiz8、Ivan Rodriguez-Montoya8、Javier Zaragoza-Cardiel8、Edgar Colin8、Miguel Chavez-Dagostino8、Sergio Rojas8、Pete Schloerb9、Kamal Souccar9、Min Yun9 (1.大阪府立大学、2.国立天文台、3.東京大学、4.北見工業大学、5.電気通信大学、6.慶應義塾大学、7.名古屋大学、8.INAOE、9.UMass)

キーワード:星間分子、アストロケミストリー、星形成、電波輝線、望遠鏡

我々は、メキシコの標高4600 mにある口径50 m大型ミリ波望遠鏡Large Millimeter Telescope (LMT)に搭載した2 mm帯高感度超伝導SIS受信機Band 4 Receiver(B4R)を用いて試験観測を行なってきた。B4Rは、2SB方式と2つの直交偏波の観測を採用することで、125-163 GHzのRF周波数帯の内、4-8 GHzのIF周波数帯の観測が可能であり、受信機雑音温度は60 K未満である。試験観測は、2018年10月と2019年11月に大質量星形成領域であるOrion-KL領域において、on the fly(OTF)法により実施している。観測領域は、10’x10’(2018年)、5’x5’ (2019年)であり、観測周波数帯域は127.9-130.4,131.9-134.4,141.6-144.1,145.6-148.1 GHz帯(2018年)、131.4-133.9,136.2-138.7,145.1-147.6, 149.9-152.4 GHz帯(2019年)である。
この観測領域は、太陽から約414 pcほど離れており、熱源となっている埋もれた若い星を付随するホットコアを含む。ホットコアでは複雑な炭素鎖分子が豊富に存在することがすでに知られている。さらにホットコアの約7秒角程度南西には、ホットコアよりも低温なコンパクトリッジ領域と呼ばれる高密度領域が分布し、ここではOxygen-bearingなどの複雑な有機分子も豊富に存在する。これらの領域の特徴の違いは、高密度コアの進化過程や温度などの物理的環境の違いを反映しているとされ、星形成や星間化学の理解に重要な領域となっており、単一鏡やALMA、SMAなどの干渉計を用いた豊富な先行研究が存在する。本観測においても、Oxygen-bearing分子(CH3OCHO,CH3OCH3など)がコンパクトリッジを中心に広範に広がっている様子が捉えられた。さらにNitrogen-bearing の炭素鎖分子(C2H5CN, C2H3CN,HC3Nなど) やSulfur-bearing分子など(SO2,OCSなど)はホットコアで相対的に強く広がり、これらの領域で化学組成の分布が系統的に変化する様子を明瞭に捉えることができた。また、CH3OCHO(v18=1)の高励起線や、水素の再結合線なども同定され、2mm帯では初めての観測結果も得た。本講演では、50m-LMT/B4Rにより、約10秒角の空間解像度 (~0.02 pc)で見た大質量星形成領域の上記分子種の空間分布や温度環境の解析結果について報告を行う。