日本地球惑星科学連合2021年大会

講演情報

[E] 口頭発表

セッション記号 P (宇宙惑星科学) » P-EM 太陽地球系科学・宇宙電磁気学・宇宙環境

[P-EM09] Dynamics of Magnetosphere and Ionosphere

2021年6月6日(日) 15:30 〜 17:00 Ch.05 (Zoom会場05)

コンビーナ:藤本 晶子(九州工業大学)、尾崎 光紀(金沢大学理工研究域電子情報学系)、佐藤 由佳(日本工業大学)、中溝 葵(情報通信研究機構 電磁波研究所)、座長:尾花 由紀(大阪電気通信大学工学部基礎理工学科)、横山 佳弘(京都大学大学院理学研究科地球惑星科学専攻)

16:15 〜 16:30

[PEM09-23] 磁場・電場複合観測に基づくサブストーム時の中緯度電離圏応答の精査

*林 萌英1、吉川 顕正1、藤本 晶子2、大谷 晋一3 (1.九州大学、2.九州工業大学、3.ジョンズホプキンス大学応用物理研究所)


キーワード:サブストーム、沿磁力線電流、カレントウェッジ、電離層電流

本研究では、サブストームによって引き起こされる全球的な3次元電流系構造をより包括的に捉え、理解することを目的とする。

 極域電離圏の電流システムには、磁気圏対流系の消長と連動するR1-電流と、内部磁気圏の圧力勾配領域の消長と連動するR2-電流が存在することが知られている[Iijima and Potemra, 1976, 1978]。サブストームは近地球領域での強いプラズマインジェクションによって引き起こされ、このインジェクションに伴うフローのエッジで成長するプラズマの渦は、R1電流系と同じ電流クロージャーのセンスを持つカレント・ウェッジ電流系を形成する。また、カレントウェッジより低緯度側では、内部磁気圏のプラズマ圧力増大と連動した、R 2型の電流系が発達する。その消長はカレント・ウェッジ電流系の消長と必ずしも一致しない。このR2型電流系は、カレント・ウェッジ電流系の成長に伴う巨視的な電離層電流系が低緯度・赤道域まで到達する効果を弱めるシールディング効果をもたらすだけでなく、時にはそれを卓越し、逆方向の電流系を成長させるオーバーシールディング効果をもたらすことが知られている(Kikuchi et al [1996]; Nishida [1968])。

 サブストーム時に観測される地上磁場変動は電離層電流の効果だけでなく、カレントウェッジの成長に伴う沿磁力線電流そのものが作る磁場変動も大きな影響をもたらしている。特にこの影響が大きい中低緯度領域では、サブストーム時に変動する磁場変化が電離層電流系の形成によるものなのか、カレントウェッジ電流系の遠隔磁場効果であるのかを磁場データのみから同定することは難しく、より本質的な理解の為には電離層電場の直接観測との比較が不可欠となる。

 本発表では、九州大学がロシアのパラツンカに設置したHFドップラーレーダーによる電場データとSuperMag, MAGDASの磁場データを用いて、サブストームオンセットの中緯度電離圏変動を調査した結果を報告する。解析期間は2006年10月〜2007年05月でイベント数は100である。初期結果として、中緯度夜側の磁場・電場変動には2つのパターンが確認された。(i)SCW夕方側の磁場変動と電場変動オンセット後、30分から1時間西向きの電場が観測された(20イベント中14イベント)。(ii)SCW中心の磁場変動と電場変動オンセットの前後10分間でW型に振動し、その後西向きとなる電場変動が観測された(6イベント中4イベント)。これはサブストームに伴うFACやカレントウェッジの消長を示していると考えられる。このことについて詳細に全球的に検証した結果を報告する。