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[PEM09-P12] Plasma Distribution Solverを用いた地球磁気圏における分散性Alfven波の性質と電子加速過程への寄与について
キーワード:地球磁気圏、Alfven波、Alfvenic加速、分散性Alfven波、電子加速過程、数値シミュレーション
FAST衛星の観測により、地球の高緯度領域にて数十eVから数keVに至る幅広いエネルギー帯におけるオーロラ電子降下が確認された[Chaston et al., 2002]。このオーロラ電子降下は分散性Alfven波による「Alfvenic加速」によるものと考えられている。Alfvenic加速は木星における電子加速機構としても注目され[e.g., Mauk et al., 2017; Saur et al., 2018]、磁化惑星におけるオーロラ電子加速過程でのAlfvenic加速の重要性は高まっている。Chaston et al. (2002) やWatt et al. (2006) などのように、地球におけるAlfvenic加速の研究は行われている一方で、被加速電子の特徴的なエネルギー分布やピッチ角分布を決定づける要因については未解明の問題が残されている。
Alfvenic加速の加速効率とそのエネルギー依存性については、分散性Alfven波の波動特性が大きな影響を及ぼしていると考えられる。本研究では、独自に開発した磁化惑星の磁力線に沿ったプラズマ分布と圧力分布を求める「Plasma Distribution Solver」を用いることにより、磁気圏内での分散性Alfven波の特性とその空間変化を定量的に考察する。まず、プラズマ圧と磁気圧の比 (β値) を求めることにより、磁力線上の各位置で分散性Alfven波がkinetic Alfven波/inertial Alfven波のいずれかの性質を示すことになるかを調べた。計算では、Case 1 (L=4, Ne_eq=240 cm-3)、Case 2 (L=4, Ne_eq=24 cm-3) ならびにCase 3 (L=15, Ne_eq=12 cm-3) の3つの異なる条件での結果を用いた。ここでNe_eqは磁気赤道での電子数密度を示し、背景磁場としてはdipole磁場を仮定した。その結果、Case 1では磁気緯度20度以下の領域でkinetic Alfven波の性質を示すこと、またCase 2およびCase 3では磁気緯度30度および50度程度までkinetic Alfven波の領域がそれぞれ拡大することが示された。
次に、Alfvenic加速による高エネルギー電子への影響を考察することを目的として、Chaston et al. (2004) の議論を参考に、電子のLarmor半径と分散性Alfven波の垂直波数成分k⊥との関係について調べた。Chaston et al. (2004) では、分散性Alfven波の波長とイオンのサイクロトロン軌道の変化が考察されており、背景磁場に対して垂直方向の波長がイオンのLarmor半径よりも小さい場合に、確率論的な加速が生じ得ることが示されている。ここで、k⊥についてはKinetic Alfven波はイオンのLarmor半径、inertial Alfven波は電子慣性長により評価できることから、Plasma Distribution Solverの計算結果を用いてそれぞれ検討した。Case 1において、磁気赤道で100 keVの電子のLarmor半径がイオンのLarmor半径より大きくなっていることから、kinetic Alfven波による影響が顕著になることが期待される。一方で10 keV以下の電子については、Larmor半径は波長以下のスケールになることが示される。Case 2では、100 keVの電子においても、Larmor半径がイオンのLarmor半径より小さいことから、kinetic Alfven波による影響は限定的であることが示唆される。Case 3では、磁気緯度20-60度の領域において、100 keVの電子に対してkinetic Alfven波/inertial Alfven波による影響が期待される結果となることが示される。本発表ではPlasma Distribution Solverで得られた結果とともに、電子加速過程のエネルギー依存性について議論する。
Alfvenic加速の加速効率とそのエネルギー依存性については、分散性Alfven波の波動特性が大きな影響を及ぼしていると考えられる。本研究では、独自に開発した磁化惑星の磁力線に沿ったプラズマ分布と圧力分布を求める「Plasma Distribution Solver」を用いることにより、磁気圏内での分散性Alfven波の特性とその空間変化を定量的に考察する。まず、プラズマ圧と磁気圧の比 (β値) を求めることにより、磁力線上の各位置で分散性Alfven波がkinetic Alfven波/inertial Alfven波のいずれかの性質を示すことになるかを調べた。計算では、Case 1 (L=4, Ne_eq=240 cm-3)、Case 2 (L=4, Ne_eq=24 cm-3) ならびにCase 3 (L=15, Ne_eq=12 cm-3) の3つの異なる条件での結果を用いた。ここでNe_eqは磁気赤道での電子数密度を示し、背景磁場としてはdipole磁場を仮定した。その結果、Case 1では磁気緯度20度以下の領域でkinetic Alfven波の性質を示すこと、またCase 2およびCase 3では磁気緯度30度および50度程度までkinetic Alfven波の領域がそれぞれ拡大することが示された。
次に、Alfvenic加速による高エネルギー電子への影響を考察することを目的として、Chaston et al. (2004) の議論を参考に、電子のLarmor半径と分散性Alfven波の垂直波数成分k⊥との関係について調べた。Chaston et al. (2004) では、分散性Alfven波の波長とイオンのサイクロトロン軌道の変化が考察されており、背景磁場に対して垂直方向の波長がイオンのLarmor半径よりも小さい場合に、確率論的な加速が生じ得ることが示されている。ここで、k⊥についてはKinetic Alfven波はイオンのLarmor半径、inertial Alfven波は電子慣性長により評価できることから、Plasma Distribution Solverの計算結果を用いてそれぞれ検討した。Case 1において、磁気赤道で100 keVの電子のLarmor半径がイオンのLarmor半径より大きくなっていることから、kinetic Alfven波による影響が顕著になることが期待される。一方で10 keV以下の電子については、Larmor半径は波長以下のスケールになることが示される。Case 2では、100 keVの電子においても、Larmor半径がイオンのLarmor半径より小さいことから、kinetic Alfven波による影響は限定的であることが示唆される。Case 3では、磁気緯度20-60度の領域において、100 keVの電子に対してkinetic Alfven波/inertial Alfven波による影響が期待される結果となることが示される。本発表ではPlasma Distribution Solverで得られた結果とともに、電子加速過程のエネルギー依存性について議論する。