日本地球惑星科学連合2021年大会

講演情報

[E] 口頭発表

セッション記号 P (宇宙惑星科学) » P-EM 太陽地球系科学・宇宙電磁気学・宇宙環境

[P-EM11] Coupling Processes in the Atmosphere-Ionosphere System

2021年6月3日(木) 13:45 〜 15:15 Ch.05 (Zoom会場05)

コンビーナ:Liu Huixin(九州大学理学研究院地球惑星科学専攻 九州大学宙空環境研究センター)、Chang Loren(Institute of Space Science, National Central University)、大塚 雄一(名古屋大学宇宙地球環境研究所)、Yue Deng(University of Texas at Arlington)、座長:中田 裕之(千葉大学大学院工学研究院)、大矢 浩代(千葉大学大学院工学研究院)

15:00 〜 15:15

[PEM11-18] HFドップラー観測を用いた地震に伴う電離圏擾乱の空間分布の解析

*堀切 友晃1、中田 裕之2、大矢 浩代2、細川 敬祐3 (1.千葉大学大学院融合理工学府、2.千葉大学大学院工学研究院、3.電気通信大学大学院情報理工学研究科)

地震に伴う電離圏擾乱の伝搬特性は GPS観測等を用いた研究により、水平方向の伝搬については詳細に調べられてきたが、鉛直方向の伝搬に関する解析はきわめて少ない。現在電気通信大学を中心に行われているHFドップラー観測(HFD)は、日本全国に広がる複数の観測点で電波が受信できる観測システムであり、様々な電離圏変動の空間的な広がりを調べることが可能である。また、異なる周波数を受信することで、別々の高度での変動を調べることが可能である。そこで本研究ではHFD観測を用いて地震に伴う電離圏擾乱の鉛直方向の伝搬特性に特に注目し解析を行った。

本研究で用いるHFD観測では、異なる4種類の送信周波数(5.006, 6.055, 8.006, 9.595 MHz)の電波を受信することで最大で4つの高度で変動を観測できる。送信所は電気通信大学(調布)とラジオ日経長柄送信所(長柄)の2か所であり、受信局は今回飯舘・菅平・柿岡・木曽の4か所のデータを使用した。地震計データについては、HFD各反射点直下に最も近い地震計の上下動速度データを使用した。本研究では福島県浜通りで2011年4月11日に発生したマグニチュード7.0の地震に伴う電離圏擾乱について解析を行った。
解析に用いた4受信点すべてで9.595MHz以外の電波について地震発生から約10分後に2~4分程度の周期の変動が確認された。またそれぞれの電波反射点への変動到達時間の解析を行ったところ、HFDで見られた変動は震央から直接到達した音波ではなく、レイリー波により生じた音波が上空に伝搬することで発生したことが明らかとなった。また、地震計での上下動速度とHFDから得られた変動の上下動速度の解析を行った。反射点が震央から離れるにつれ電離圏擾乱の大きさが小さくなることが確認できた。しかし高度方向の伝搬に関しては変化の傾向が異なった。先行研究では地震による変動の周波数が高いほうが、高度方向へ伝搬した際に減衰が大きいという結果が出ているため、その影響を含めて考察する必要があると考えられる。