日本地球惑星科学連合2021年大会

講演情報

[E] 口頭発表

セッション記号 P (宇宙惑星科学) » P-EM 太陽地球系科学・宇宙電磁気学・宇宙環境

[P-EM11] Coupling Processes in the Atmosphere-Ionosphere System

2021年6月3日(木) 15:30 〜 17:00 Ch.05 (Zoom会場05)

コンビーナ:Liu Huixin(九州大学理学研究院地球惑星科学専攻 九州大学宙空環境研究センター)、Chang Loren(Institute of Space Science, National Central University)、大塚 雄一(名古屋大学宇宙地球環境研究所)、Yue Deng(University of Texas at Arlington)、座長:Loren Chang(Institute of Space Science, National Central University)、穂積 裕太(電気通信大学)

16:30 〜 16:45

[PEM11-23] Sq-EEJ電流系における準6日振動現象の季節依存性

*高山 久美1、吉川 顕正1、三好 勉信1 (1.九州大学)


キーワード:準6日波、準6日振動、Sq-EEJ電流系、主成分分析、GAIAモデル、季節依存性

大気圏-電離圏結合過程の解明を目指して、MAGDAS(全球的地磁気観測ネットワーク)及びGAIA モデル(全大気領域を包含する大気モデルと電離圏モデルとを統合した数値モデル) の磁場データを活用したSq-EEJ電流系における大気振動現象の解析を行った。本研究では、電離圏で励起される準6日振動現象に着目し、その全球的特徴やその励起特性の地方時依存性及び季節依存性について報告する。

大気波動の一つである準6日振動現象は、熱帯対流圏の湿った空気による大気加熱により引き起こされ[Miyoshi and Hirooka1999]、春分と秋分に強く発達する季節依存性をもつことが知られている[Liu et al.,2014]。赤道ジェット電流(EEJ)は、下層からの大気波動を含む様々な強制機構の影響を受けて変動する「可変性」が、非常に高いことが示唆されており、EEJにおける6日振動現象については、CHAMP衛星、Swarm衛星のEEJ強度データ及びAura衛星による温度観測から見積もられた等圧面高度場(GPH)により確認されている[Yamazaki et al., 2018]。更にGPSのTEC(大気圏・電離圏の全電子数)及びAura衛星のGPHを用いて、赤道付近の準6日波の分布が明らかにされ、電離圏と下部熱圏の準6日波にほぼ1対1の対応などが示されてきた[Yamazaki, 2018]。しかしながら、Sq-EEJ電流系により励起される地上磁場変動データに顕われることが期待される、大気波動成分の理解は進んでいない。

そこで本研究では、MAGDASの磁場データを用いてSq-EEJ電流系における準6日振動現象の全球的特徴や、その励起特性の地方時依存性及び季節依存性の解析を行った。

解析には、MAGDAS及びGIS(国土地理院)、INTERMAGNETの日本セクターに位置する計19観測点及びGAIAモデルの2007~2011年における磁場データを用いた。解析手法として、Sq-EEJ電流系による磁場の変動をより明確に取り出すため、主成分分析を取り入れた。主成分分析とは特徴量の抽出に使われる手法で、データの内部構造を可視化することができる。今回は第1次成分から第5次成分までを足し合わせたものを基本成分として使用した。また、準6日振動が背景磁場の振幅の大小に左右されないように、[Yamazaki et al., 2018]で用いられた相対振幅で表した。

結果として、準6日振動現象は赤道のEEJよりも中緯度のSq電流系において、昼側でより強く発達していることがわかった。また、GAIAモデルとMAGDASの磁場データにおける準6日振動の緯度-時間分布を比較すると、そのピークが一致したことから、相対振幅の有用性が証明された。また、励起源である準6日波の季節依存性と一致する3月と9月に強く発達する季節変動が見られた。

今後の課題として、GAIAモデルを用いて準6日波がどのように電気伝導度に作用し、電場を生成するのかを解析することにより、大気圏-電離圏の結合過程の解明につなげる予定である。