日本地球惑星科学連合2021年大会

講演情報

[E] ポスター発表

セッション記号 P (宇宙惑星科学) » P-EM 太陽地球系科学・宇宙電磁気学・宇宙環境

[P-EM11] Coupling Processes in the Atmosphere-Ionosphere System

2021年6月4日(金) 17:15 〜 18:30 Ch.04

コンビーナ:Liu Huixin(九州大学理学研究院地球惑星科学専攻 九州大学宙空環境研究センター)、Chang Loren(Institute of Space Science, National Central University)、大塚 雄一(名古屋大学宇宙地球環境研究所)、Yue Deng(University of Texas at Arlington)

17:15 〜 18:30

[PEM11-P01] 静止軌道衛星ひまわりで観測された極中間圏雲の年々変化

*白 秉安1、津田 卓雄1、鈴木 秀彦2、穂積 裕太1、安藤 芳晃1、細川 敬祐1、中村 卓司3、村田 健史4 (1.電気通信大学、2.明治大学、3.国立極地研究所、4.情報通信研究機構)


キーワード:極中間圏雲、夜光雲、静止軌道衛星、ひまわり

極中間圏雲 (polar mesospheric cloud: PMC) は、高度 80–85 km の中間圏界面付近に発生する厚さ 1-2 km の雲で、地球上で最も高度の高い雲である。この雲は夜光雲 (noctilucent cloud: NLC) とも呼ばれるが、その構成成分は、夏期中間圏界面付近の極低温条件下 (150 K 以下) で水蒸気 (H2O) が凝結することで形成される氷粒子である。氷粒子の形成は中間圏の状態 (大気温度や H2O 混合比など) に敏感である為、PMC 観測は中間圏大気の力学過程・化学過程を調査する為の有用な手段となり得ると考えられている。例えば、近年の人間活動に起因する二酸化炭素 (CO2) やメタン (CH4) の増大が中間圏の CO2 放射冷却や H2O 混合比の増大を促進し、その結果として中間圏の PMC の形成が促進されることが指摘されている。このように、PMC 発生状況の長期的な観測は、全球的な長期変動 (と付随する中間圏大気の長期変動) の観測的指標として貴重な情報を提供する可能性を秘めている。

初めての PMC の観測報告 (1885 年) 以来、現在まで様々な手段で PMC 観測が進められてきている。カメラやライダーによる地上観測は観測条件による制限が大きいので、より連続的・系統的な PMC 観測の為には人工衛星による観測が有効である。低軌道衛星による PMC 観測は長年にわたって精力的に行われてきた。一方、静止軌道衛星による PMC 観測に関しては先行研究が少ないが、これまでに Meteosat First Generation (MFG)、Meteosat Second Generation (MSG)、ひまわり 8 号 (Himawari-8) といった静止軌道気象衛星による全球観測画像の地球リム領域のデータを活用した PMC 観測が報告されている。これらの静止軌道からの PMC 観測は、宇宙からの定点観測で PMC を連続観測することが可能な貴重な観測手段である。

我々は、ひまわり 8 号を活用した PMC 観測の取組みを進めている。最新状況として、ひまわり 8 号の全球観測画像に適用する PMC 自動検出手法を開発、定常的にデータ処理を行うことで、準リアルタイムの PMC モニタリングシステムを構築した。本研究では、ひまわり PMC モニタリングシステムによる連続・準リアルタイムの PMC 検出データを活用して、PMC 発生頻度を求め、最近数年間 (2015-2021 年) の年々変化について調査した。調査の結果、北半球の PMC 発生頻度は概ね増加傾向にあり、直近の北半球 2020 年夏期の PMC 発生頻度が最大であった。一方で、南半球では、PMC 発生頻度に関して単調な傾向は見られず、比較的複雑な年々変化が見られた。例えば、他の年と比べて、直近の南半球 2020-2021 年夏期の PMC 発生頻度は特に高いということはなかった。発表では、以上に述べた結果を示すと共に、Aura/Microwave Limb Sounder (Aura/MLS) による大気温度と H2O 混合比の観測データを併用し、ひまわり 8 号で観測された PMC 発生頻度の年々変化の要因について考察する。また、PMC 観測データを過去へと拡張する取組みとして、2005-2015 年に運用されたひまわり 6/7 号 (Himawari-6/7) による PMC 観測の可能性についても検討する。