日本地球惑星科学連合2021年大会

講演情報

[E] ポスター発表

セッション記号 P (宇宙惑星科学) » P-EM 太陽地球系科学・宇宙電磁気学・宇宙環境

[P-EM11] Coupling Processes in the Atmosphere-Ionosphere System

2021年6月4日(金) 17:15 〜 18:30 Ch.04

コンビーナ:Liu Huixin(九州大学理学研究院地球惑星科学専攻 九州大学宙空環境研究センター)、Chang Loren(Institute of Space Science, National Central University)、大塚 雄一(名古屋大学宇宙地球環境研究所)、Yue Deng(University of Texas at Arlington)

17:15 〜 18:30

[PEM11-P09] しらせ搭載姿勢安定高精度イメージャーのイメージ処理システムの開発と精度評価

*山科 佐紀1、齊藤 昭則1、坂野井 健2、津田 卓雄3、穂積 裕太3、青木 猛3、江尻 省4、西山 尚典4、直井 隆浩5、永原 政人5 (1.京都大学大学院理学研究科、2.東北大学大学院理学研究科惑星プラズマ・大気研究センター、3.電気通信大学大学院情報理工学研究科、4.国立極地研究所、5.情報通信研究機構)

キーワード:オーロラ、大気光、電離圏観測

オーロラや大気光といった電離圏での現象を光学観測で捉えるのは地上に設置された全天イメージャーが主であるため、海上部分で、特に海の占める割合の大きい南半球で観測空白領域が生じていた。これらの観測空白領域が解消されると、南北半球間で現象を比較して相違を評価したり、地上では収まらない程大規模な構造を持った現象を観測したりするのが可能となる。加えて、海上・陸上での現象を比較して、海陸分布が超高層大気の変動に及ぼす影響を評価することも可能となる。これらの観測・評価を行うためにも、海上での光学観測を可能として観測空白領域を解消することが必要となる。海上から光学観測を行う場合、地上とは異なり、船舶の揺動を考慮しなければならない。船舶の揺動により露光時間内にイメージャーの姿勢が変化し、さらに船の移動に伴いイメージャーの位置・向きが観測データごとに変化する。これらの船舶特有の問題を解決して大気光・オーロラの構造を掴むことが本研究の目的となる。2019年11月から2020年3月にかけて行われた第61次南極地域観測において、南極観測船「しらせ」に全天イメージャーを設置して光学観測を行った。「しらせ」の航路は南側のオーロラ帯下を長期間航行するのでオーロラの観測に適している。さらに日本から南下する際に赤道異常帯も通過するので大気光を観測するのにも適している。イメージャーは船舶の揺動を打ち消す3 軸姿勢安定ジンバルに載せられ、中心波長630.0nmの干渉フィルターと魚眼レンズを取り付けられており、船の揺動を極力受けずに高度250㎞での発光を捉える観測システムが構築された。イメージャーの露出は20秒であり、日没から月が昇ってくるまでの時間において毎日自動撮影された。解析には、しらせの位置・姿勢データとして得られた、1秒ごとの緯度・経度・船速のデータ、1/4秒ごとの方位角データを用いた。これらのデータに加えて2020年から2021年にかけて行われた第62次南極地域観測では、イメージャーを2台にして新たに670.0nm波長の発光を捉えただけでなく、GNSS受信機を設置して電離圏全電子量データも得られた。船舶の揺動・移動によりイメージャーの撮影方向は撮影ごとに変動するため、撮像画像内の船の構造物の自動検出を行うことで撮影方向の船舶に対する相対方位角を求め、しらせの位置・姿勢データと組み合わせて、撮影方向の自動検出を行なった。この方向推定精度を、撮像画像内の星の位置から求めた撮影方向との比較によって評価すると、その誤差は最大2度であった。これは高度250㎞での水平スケールで数十㎞に相当する誤差であり、オーロラ・大気光の水平スケールと比較して十分小さいといえる。この他、光学的感度の補正も行った。2019年11月22,23日には低緯度での630.0nm大気光による赤道異常帯の観測、そして2020年2月末~3月初めの数晩では高緯度域でのオーロラの観測に成功した。これらの現象をOMTIなどによる他の観測データと比較して観測システムの精度の評価を行う。本研究の結果は今年行われる第63次南極地域観測での観測システムの開発・改良に活かされ、さらに将来的には他の船舶での観測システム開発にも発展されうる。