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[PEM11-P22] 昭和基地におけるオーロラ降下粒子とOH大気光強度変動の関係
キーワード:OH大気光、オーロラ、中間圏界面、下部熱圏
OH大気光は高度85km付近の上部中間圏領域に発光層をもつ超高層大気特有の発光現象である。OH大気光のスペクトルはMeinel回転振動帯由来のバンド構造を有しており、各バンドに含まれる回転線強度同士の比を導出することで上部中間圏の中性大気温度を推定できる。OHの励起機構としてはオゾン分子と水素原子の反応が卓越していることが知られており、OH大気光の強度変動は上部中間圏における微量大気成分の光化学過程や鉛直輸送と密接に関係している。そのため、OH大気光のリモートセンシングは直接観測が困難である中間圏界面領域の大気状態をモニタリングする重要な手法であり広く用いられている。本研究では、第49次南極地域観測隊で南極昭和基地にOH分光計を設置し、2008年から2019年にかけて、冬季(2月末~10月中旬)の夜間にOH(8-4)バンドの分光観測を実施してきた。このOH分光計はオーロラ発光によるコンタミネーションの影響を極力抑えるよう観測波長帯が設定されており、オーロラが活発な晩においても条件付きで有効なデータの取得が可能である。本研究では、2008 - 2019年に昭和基地で取得された長期間にわたるOH大気光分光データを解析し、オーロラ活動に伴って引き起こされたと思われる大気光強度変動に着目して解析を行った。具体的には、振幅の大きい強度変動のうち、大気重力波による変動の特徴である正弦波的な挙動を示さない大気光強度の変動が観測されたケースに着目した。この種のイベントは数十分から、数日までの幅広いタイムスケールで起こっており、いずれもOH大気光の増光に寄与する酸素原子が豊富な空気塊の鉛直輸送が強化されたことにより起こっていると考えている。高エネルギー粒子の降り込みによる極域上部中間圏における大気組成の変動と、鉛直輸送の強化が複合的に働くことによってもたらされるOH発光強度への影響について議論する。