17:15 〜 18:30
[PEM12-P07] ERG衛星,DMSP衛星, SuperDARNで共役観測されたSAPS Wave Structureの事例解析
キーワード:SAPS、あらせ衛星、SuperDARN
Subauroral Polarization Stream (SAPS)や Subauroral Ion Drift (SAID)は, 地球電離圏夕方側サブオーロラ帯に発生する西向きの高速フローであり, 電離圏における極方向の強力な電場によって駆動されると考えられている. [Spiro et al., 1979; Anderson et al., 1993; Foster and Burke, 2002]. Ericson et al. (2002)により,SAPS内部に数十 km規模の不規則構造を伴う事例が報告され, SAPS Wave Structure (SAPSWS)と呼ばれている. Mishin and Burke (2005)はCRRES衛星の観測から, SAPSWSの電磁場変動と同時に, 高温のイオンが内部磁気圏に侵入し特徴的なエネルギ分散を伴う空間分布(ion nose structure)を示すことを明らかにした. Ebihara et al. (2009)は磁気圏・電離圏サブオーロラ帯を結合させた計算機シミュレーションにより, 内部磁気圏に侵入した高温プラズマの複雑な圧力分布が, SAPSの時間的・空間的変動に寄与することを示した. 磁気圏衛星の直接観測により電磁場変動と高温イオンの関係をさらに詳しく調査することはSAPSWSの機構を理解するうえで重要である.
そこで本研究では, 磁気圏において電磁場や環電流粒子のフラックスを計測するERG衛星[Miyoshi et al., 2018]のデータを用いた. 粒子計測器(MEP-i, LEP-i, LEP-e)の観測結果から発見した15例の ion nose structure に対し, 動径方向の電場変動の有無と, MEP-iが計測した高温イオン(10-180 keV)のフラックスから計算した等方圧力を調べた. また, 15例のうち, 電離圏のイオンドリフト速度・磁場等を計測するDMSP衛星や2次元的に電離圏のフローを観測する SuperDARN レーダー[Greenwald et al., 1995]によって電離圏の共役観測が得られているイベントについても解析を行なった.
15例の ion nose structure のうち, 7例で振幅1 mV/m以上の電場変動が観測されていた. また,電場変動が1 mV/m未満の8例に比べて,1 mV/m以上の7例のうち6例で,2倍以上の振幅の高温イオンの圧力変化が見られた. ERGとSuperDARN Christmas Valley East(CVE)が電離圏共役だった2017年7月9日 2:30-3:00UTのイベントでは SuperDARN CVE でフロー速度の変化幅が200 m/sの小規模構造が観測された.また,ERGとDMSPF18衛星が共役だった2017年8月31日 8:40-9:10 UTのイベントでは,DMSPでフロー速度200 m/sの変化幅をもつ小規模構造が観測された. SuperDARN・DMSPのフロー速度観測から極方向の電場変化を算出すると, いずれも10 mV/m程度であった. 一方ERGは17-19 MLT, L=4-5 付近で振幅2 mV/m以上の強い動径方向の電場変動を観測しており, この変動を双極子磁場を仮定して電離圏にマッピングすると30-40 mV/mとなる.これに比べて電離圏での観測に基づく電場変動幅10 mV/m は同程度ながら若干小さいが,SuperDARN, DMSPと も西向きからは少しずれた方向のフロー速度を観測していた点,実際の磁場が双極子磁場とは異なっていたことなども考慮する必要がある. 2017年7月9日 2:30-3:00UTのイベントにおいて, 磁気圏に形成されていたと考えられる構造のスケールをSuperDARNと ERG衛星の観測からそれぞれ見積もると, どちらも3,000-4000 kmと近い値であった. またERGでは高温イオンの圧力変化が大きい場所に対応して,沿磁力線電流を示唆する磁場の変動も確認された.
これらの電離圏フロー・磁気圏電場・高温イオン圧力変動の観測結果から,磁気圏において小規模な圧力不均一を伴いながら地球方向に到来する高温イオンが沿磁力線電流を生じて電離圏にSAPSWSを引き起こしていたことが示唆される.
そこで本研究では, 磁気圏において電磁場や環電流粒子のフラックスを計測するERG衛星[Miyoshi et al., 2018]のデータを用いた. 粒子計測器(MEP-i, LEP-i, LEP-e)の観測結果から発見した15例の ion nose structure に対し, 動径方向の電場変動の有無と, MEP-iが計測した高温イオン(10-180 keV)のフラックスから計算した等方圧力を調べた. また, 15例のうち, 電離圏のイオンドリフト速度・磁場等を計測するDMSP衛星や2次元的に電離圏のフローを観測する SuperDARN レーダー[Greenwald et al., 1995]によって電離圏の共役観測が得られているイベントについても解析を行なった.
15例の ion nose structure のうち, 7例で振幅1 mV/m以上の電場変動が観測されていた. また,電場変動が1 mV/m未満の8例に比べて,1 mV/m以上の7例のうち6例で,2倍以上の振幅の高温イオンの圧力変化が見られた. ERGとSuperDARN Christmas Valley East(CVE)が電離圏共役だった2017年7月9日 2:30-3:00UTのイベントでは SuperDARN CVE でフロー速度の変化幅が200 m/sの小規模構造が観測された.また,ERGとDMSPF18衛星が共役だった2017年8月31日 8:40-9:10 UTのイベントでは,DMSPでフロー速度200 m/sの変化幅をもつ小規模構造が観測された. SuperDARN・DMSPのフロー速度観測から極方向の電場変化を算出すると, いずれも10 mV/m程度であった. 一方ERGは17-19 MLT, L=4-5 付近で振幅2 mV/m以上の強い動径方向の電場変動を観測しており, この変動を双極子磁場を仮定して電離圏にマッピングすると30-40 mV/mとなる.これに比べて電離圏での観測に基づく電場変動幅10 mV/m は同程度ながら若干小さいが,SuperDARN, DMSPと も西向きからは少しずれた方向のフロー速度を観測していた点,実際の磁場が双極子磁場とは異なっていたことなども考慮する必要がある. 2017年7月9日 2:30-3:00UTのイベントにおいて, 磁気圏に形成されていたと考えられる構造のスケールをSuperDARNと ERG衛星の観測からそれぞれ見積もると, どちらも3,000-4000 kmと近い値であった. またERGでは高温イオンの圧力変化が大きい場所に対応して,沿磁力線電流を示唆する磁場の変動も確認された.
これらの電離圏フロー・磁気圏電場・高温イオン圧力変動の観測結果から,磁気圏において小規模な圧力不均一を伴いながら地球方向に到来する高温イオンが沿磁力線電流を生じて電離圏にSAPSWSを引き起こしていたことが示唆される.