日本地球惑星科学連合2021年大会

講演情報

[E] ポスター発表

セッション記号 P (宇宙惑星科学) » P-EM 太陽地球系科学・宇宙電磁気学・宇宙環境

[P-EM12] Dynamics of the Inner Magnetospheric System

2021年6月5日(土) 17:15 〜 18:30 Ch.04

コンビーナ:桂華 邦裕(東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻)、三好 由純(名古屋大学宇宙地球環境研究所)、W Lauren Blum(University of Colorado Boulder)、Yuri Shprits(Helmholtz Centre Potsdam GFZ German Research Centre for Geosciences)

17:15 〜 18:30

[PEM12-P22] あらせ衛星によるサブストーム時の電子ドリフトホールの観測と統計的研究

*滑川 拓1,2、篠原 育1、三谷 烈史1、浅村 和史1、長井 嗣信1、笠原 慧2、横田 勝一郎3、堀 智昭4、松岡 彩子5、三好 由純4 (1.ISAS / JAXA、2.東京大学、3.大阪大学、4.名古屋大学、5.京都大学)


キーワード:Drifting electron hole、Particle injection、Substorm、Arase satellite

電子ドリフトホール(Drifting Electron Hole, DEH)は、地球磁気圏において電子のインジェクションに関連したエネルギー範囲で頻繁に観測される、電子フラックスの減少のことである[Sergeev et al., 1992]。このフラックス減少はサブストームオンセット前後の大規模な磁場構造の変動に伴って、ドリフトシェルが変形されることによって生じると考えられている。
これらのサブストームに関連したDEHは静止衛星軌道以遠では多く紹介されてきた[Cohen et al., 2019, Liu et al., 2019, Shukhtina et al., 1996]。また、あらせ衛星[Miyoshi et al., 2018]の観測により、地球同期軌道の内側のL>5の領域でもDEHが観測されている。しかし、これまでのDEHについての議論は非常に限られており、この現象についてはまだ十分に理解されていない。
そこでこのDEHの特徴を調べるために、あらせ衛星に搭載されたHEPおよびMEP-e観測装置で得られたデータを解析し、統計的な研究を行った。2017年から2019年にかけて、あらせ衛星が磁気圏の夜側から朝側までを観測した期間のデータの中から、インジェクションと同時に観測されたDEHイベントを選択した。これらのイベントは主に真夜中前から朝側で観測された。そしてDEHイベントのエネルギー分散からドリフト軌道を推定し、そのソース領域を特定した。その結果、DEHのソース領域は、同時に観測されたインジェクションのソース領域と同様に、磁気圏の真夜中付近に3-4時間程度まで広がっていることが明らかになった。この結果はSergeevらの提示したモデルと矛盾しない。一方で、同時に観測されているにもかかわらず、DEHとインジェクションのソース領域が異なるイベントも存在している。このようなイベントの存在は、DEHがそれほど単純な理解では説明できない可能性を示唆している。