日本地球惑星科学連合2021年大会

講演情報

[E] ポスター発表

セッション記号 P (宇宙惑星科学) » P-EM 太陽地球系科学・宇宙電磁気学・宇宙環境

[P-EM13] 太陽地球系結合過程の研究基盤形成

2021年6月4日(金) 17:15 〜 18:30 Ch.05

コンビーナ:山本 衛(京都大学生存圏研究所)、小川 泰信(国立極地研究所)、野澤 悟徳(名古屋大学宇宙地球環境研究所)、吉川 顕正(九州大学大学院理学研究院地球惑星科学部門)

17:15 〜 18:30

[PEM13-P03] 電離圏擾乱の研究に資するマルチスケール数値シミュレーションの開発

*横山 竜宏1、古元 泰地1 (1.京都大学生存圏研究所)

キーワード:プラズマバブル、電離圏、シミュレーション

赤道域の電離圏で発生するプラズマバブルと呼ばれる擾乱現象は不規則な密度構造を内部に持ち,測位衛星等からの電波伝搬に影響を及ぼす.プラズマバブル自体は80年以上前から観測されているが,現在においても発生原因の解明はされておらず,予測を行うことは困難である.本研究ではプラズマバブルの研究を行うための新しいシミュレーションモデルを開発した.電離圏をシミュレーションするモデルとしては大きく分けると全球電離圏モデルと局所電離圏モデルがある.両者には計算領域と解像度という点でトレードオフがある.局所電離圏モデルの1つであるHigh-Resolution Bubble (HIRB)モデルではプラズマバブルを1 km程の解像度で高精細に表現することができているが,計算領域が限られており,地球規模の現象と同時に表現することができない.そこで本研究で開発するモデルは,HIRBモデルを全経度に拡大する際に,高解像度領域と通常解像度領域の異なる解像度を持つマルチスケールな数値モデルとなるようにした.この方法により,必要な計算機資源は同程度に保ちつつ,全球電離圏モデル,局所電離圏モデル双方の長所を生かし,短所を補った新しいモデルを開発することに成功した.本研究で開発,改良を行ったマルチスケールモデルで,準平衡状態のプラズマ密度分布に対して初期密度変動を付与することで,プラズマバブルと呼ばれる低密度領域が電離圏上部まで上昇する様子を確認することができた.従来のモデルであるHIRBモデルほどの高解像度ではないが,バブル内部の不規則構造も再現されていることが確認できた.過去の観測データとシミュレーションにより得られたドリフト速度を比較しても,ほとんど一致した結果を示し,開発したモデルが現実の条件に則していることが示された.以上,本研究では,局所電離圏モデルであるHIRB モデルをマルチスケールで全経度化させたモデルで,プラズマバブルを表現し,かつ,全計算範囲でプラズマ密度を不整合なく求めることができた.高解像度領域の解像度をさらに上げることで,プラズマバブルをより繊細に表現することが可能であるため,並列化等を用いた高速化により,更なるモデルの改良が進むことを期待する.