日本地球惑星科学連合2021年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 P (宇宙惑星科学) » P-EM 太陽地球系科学・宇宙電磁気学・宇宙環境

[P-EM14] 太陽圏・惑星間空間

2021年6月5日(土) 13:45 〜 15:15 Ch.06 (Zoom会場06)

コンビーナ:岩井 一正(名古屋大学 宇宙地球環境研究所)、成行 泰裕(富山大学学術研究部教育学系)、坪内 健(電気通信大学)、西野 真木(宇宙航空研究開発機構宇宙科学研究所)、座長:成行 泰裕(富山大学学術研究部教育学系)、西野 真木(宇宙航空研究開発機構宇宙科学研究所)

14:30 〜 14:45

[PEM14-10] 月ウェイク中の0.01Hzから0.3Hzの楕円偏波磁場擾乱について

*中川 朋子1、高橋 太2、清水 久芳3、斎藤 義文4 (1.東北工業大学工学部情報通信工学科、2.九州大学大学院理学研究院、3.東京大学地震研究所、4.宇宙航空研究開発機構宇宙科学研究所)

キーワード:月、ウェイク、偏波、磁場変動、イオンサイクロトロン周波数、かぐや

太陽風中の月の夜側のウェイク内は、太陽風粒子が直接入り込まないため昼側に比べ磁気擾乱は弱い。しかし弱いながら0.01Hzから0.3Hzの周波数帯にわたる磁場変動がかぐや衛星のMAP-LMAGによりウェイク内で観測されている。この磁場変動は線形偏波に近い楕円偏波であるが、その回転方向は、流れの中の障害物の下流にできる渦と同じ方向となっており、By卓越の背景磁場中では南北半球の偏波非対称、Bz卓越の背景磁場中では東西半球の偏波非対称として観測されている。波数ベクトルの方向は磁場に平行に近い斜め伝搬のことが多く、磁場強度も変動することから圧縮性の磁気音波と考えられる。周波数は、約0.1Hzのプロトンサイクロトロン周波数より高い0.3Hzまで伸びており、この周波数帯でも右回り、左回りの両方が観測されている。高い周波数では円偏波に近くなっていた。


この波はウェイク境界で強く、ウェイク中心に向かって徐々に弱くなってゆくことから、ウェイク境界または太陽風中で生じた波と考えられる。ウェイク境界には激しい密度勾配があるため、発見当初はK-H不安定のような表面波の可能性も想定されたが、必ずしも速度シアーを伴わないこと、また波数ベクトルの方向が境界面に沿っていないこと、ウェイクの最も深い真夜中でも観測され続けていることから表面波の可能性は低い。ウェイク境界における圧力勾配によって磁場擾乱が引き起こされ磁気音波が生じて斜め伝搬してウェイク中に入ったか、あるいは、磁気流体波として生じたものがウェイク境界のAlfven速度勾配のためにモード変換された可能性が考えられる。プロトンサイクロトロン周波数より高い周波数で左回りのきれいな円偏波が観測された理由は未解明である。