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[PEM14-P01] 太陽高エネルギー電子短期増大現象時のⅢ型電波バーストと電子エネルギーの関連性
キーワード:太陽、高エネルギー粒子現象、エレクトロンイベント、Ⅲ型電波バースト
太陽高エネルギー粒子(Solar Energetic Particle: SEP)は太陽表面での爆発現象であるフレアやコロナ質量放出によって加速された10 keV~数10GeVのエネルギーを持つ電子、陽子、重イオンの総称である。SEPの出現様相は、その組成比やフラックスの時間変化からimpulsiveとgradualの二つのタイプに分類される。Impulsive SEPは電子主体のイベントとも呼ばれ、特に、電子フラックスが短期間に増大するエレクトロンイベントと呼ばれる現象は、フレアによって加速された電子が惑星間空間中を伝搬し地球近傍で観測されたものと理解されてきた。エレクトロンイベントで観測される電子は、そのエネルギースペクトルで数10keVに折れ曲がりを示すイベントが頻繁に検出されることが報告されている。その生成原因の一つとして、電子の伝搬中に、特に低エネルギーの電子が波動粒子相互作用によって運動エネルギーをLangmuir波のエネルギーへと変換し、運動エネルギーを消失するとする仮説が提案されている(Reid & Kontar [2013])。また、エレクトロンイベントの発生時には、波長が数10m~km帯のⅢ型バーストの出現と良い対応関係があることが報告されている(Wang et al. [2012])。Ⅲ型電波バーストは、磁気リコネクションによって加速された電子が開いた磁力線に沿って伝搬する際に、上述したLangmuir波を励起し、そのLangmuir波が電磁波へと変換されて出現すると考えられている。したがって、Ⅲ型バーストはエレクトロンイベントで出現するエネルギー電子によって励起されており、両者にはタイトな関連性があることが予想されるが、現在までその詳細な比較解析はなされてこなかった。そこで本研究は、エレクトロンイベント時の電子、電波の関連性の解明を目的に、両者の諸出現特性量について統計的な解析を行った。
本研究では、エレクトロンイベント時の電子、電波のデータとして惑星間空間で同時に観測されたものを使用し、共にNASAのWIND衛星に搭載されている粒子検出器3DP、電波・プラズマ波動検出器のWAVESの観測データを使用した、WIND衛星によって1994年から2005年までの間に観測された単発で出現した顕著なエレクトロンイベントのうち、電子のエネルギースペクトル上で折れ曲がりを示し、且つ、Ⅲ型バーストが同時に出現し、そのスペクトルがシンプルな37例のイベントについて抽出し、電子のエネルギースペクトル上の特性と、Ⅲ型バーストの出現特性について比較解析を行った。その結果、電子のエネルギースペクトルで、折れ曲がりを示すエネルギーよりも低エネルギー側の電子のべき指数とⅢ型バーストのダイナミックスペクトルから求めた電子ビーム速度、電波の強度、および、電波のエネルギーとの間には正の相関が確認された。一方、上述のReid & Kontar [2013]の仮説に関して、即ち、電子が伝搬中に波動のエネルギーへ変換され消失した可能性のある電子の運動エネルギーと電波のエネルギーの関係については、有意な相関が確認されなかった。以上の結果から、Ⅲ型バーストを励起は低エネルギー側の電子が担い、その電子のスペクトル形状(~ベキ指数)が電波の強度やエネルギーを定める要因であることが示唆され、Ⅲ型バーストの電波強度やエネルギーから、エレクトロンイベントの電子のスペクトル形状の情報を推察する可能性が示された。また、エレクトロンイベントの電子の特徴であるエネルギースペクトルの折れ曲がりの形状は、波動粒子相互作用で消失するエネルギーの存在のみでは説明出来ず、他の物理過程も関与する可能性も示された。
本研究では、エレクトロンイベント時の電子、電波のデータとして惑星間空間で同時に観測されたものを使用し、共にNASAのWIND衛星に搭載されている粒子検出器3DP、電波・プラズマ波動検出器のWAVESの観測データを使用した、WIND衛星によって1994年から2005年までの間に観測された単発で出現した顕著なエレクトロンイベントのうち、電子のエネルギースペクトル上で折れ曲がりを示し、且つ、Ⅲ型バーストが同時に出現し、そのスペクトルがシンプルな37例のイベントについて抽出し、電子のエネルギースペクトル上の特性と、Ⅲ型バーストの出現特性について比較解析を行った。その結果、電子のエネルギースペクトルで、折れ曲がりを示すエネルギーよりも低エネルギー側の電子のべき指数とⅢ型バーストのダイナミックスペクトルから求めた電子ビーム速度、電波の強度、および、電波のエネルギーとの間には正の相関が確認された。一方、上述のReid & Kontar [2013]の仮説に関して、即ち、電子が伝搬中に波動のエネルギーへ変換され消失した可能性のある電子の運動エネルギーと電波のエネルギーの関係については、有意な相関が確認されなかった。以上の結果から、Ⅲ型バーストを励起は低エネルギー側の電子が担い、その電子のスペクトル形状(~ベキ指数)が電波の強度やエネルギーを定める要因であることが示唆され、Ⅲ型バーストの電波強度やエネルギーから、エレクトロンイベントの電子のスペクトル形状の情報を推察する可能性が示された。また、エレクトロンイベントの電子の特徴であるエネルギースペクトルの折れ曲がりの形状は、波動粒子相互作用で消失するエネルギーの存在のみでは説明出来ず、他の物理過程も関与する可能性も示された。