日本地球惑星科学連合2021年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 P (宇宙惑星科学) » P-EM 太陽地球系科学・宇宙電磁気学・宇宙環境

[P-EM15] 宇宙プラズマ理論・シミュレーション

2021年6月4日(金) 09:00 〜 10:30 Ch.06 (Zoom会場06)

コンビーナ:天野 孝伸(東京大学 地球惑星科学専攻)、三宅 洋平(神戸大学計算科学教育センター)、梅田 隆行(名古屋大学 宇宙地球環境研究所)、中村 匡(福井県立大学)、座長:天野 孝伸(東京大学 地球惑星科学専攻)、岩本 昌倫(九州大学総合理工学研究院)

09:00 〜 09:15

[PEM15-01] Observation of non-gyrotropy of electrons caused by wave-particle interaction with intense whistler mode waves in mirror mode structures in the magnetosheath

*北村 成寿1、北原 理弘2、Boardsen Scott3,4、天野 孝伸1、Gershman Daniel3、大村 善治5、中村 紗都子2、小路 真史2、加藤 雄人6、小嶋 浩嗣5、三好 由純2、斎藤 義文7、平原 聖文2、横田 勝一郎8、Giles Barbara3、Paterson William3、Pollock Craig9、Le Contel Olivier10、Russell Christopher11、Ahmadi Narges12、Lindqvist Per-Arne13、Ergun Robert12、Burch James14 (1.東京大学大学院 理学系研究科 地球惑星科学専攻、2.名古屋大学 宇宙地球環境研究所、3.NASA ゴダード宇宙飛行センター、4.メリーランド大学 ゴダード惑星太陽圏研究所、5.京都大学 生存圏研究所、6.東北大学大学院 理学研究科 地球惑星科学専攻、7.宇宙航空研究開発機構 宇宙科学研究所、8.大阪大学大学院 理学研究科 宇宙地球科学専攻、9.デナリサイエンティフィック、10.プラズマ物理学研究所 フランス国立科学研究センター/エコール・ポリテクニーク/ソルボンヌ大学/パリ南大学/パリ天文台、11.カリフォルニア大学ロサンゼルス校 地球惑星宇宙科学専攻、12.コロラド大学ボルダー校 大気宇宙物理学研究所、13.スウェーデン王立工科大学、14.サウスウェスト研究所)

キーワード:ホイッスラーモード波動、波動粒子相互作用、MMS衛星

地球磁気圏の外側にあるシース領域では、しばしばミラー不安定によって周囲より磁場強度が弱い磁気ミラー構造が生じる。そして、そのような磁気ミラー構造の多くでは、内部磁気圏の磁気赤道と似たように、磁場の極小付近から磁力線平行と反平行方向にホイッスラーモード波動が放射されており、Lion roarとも呼ばれている。本研究ではこのホイッスラーモード波動の源と考えられる領域付近で、波動粒子相互作用による電子のジャイロ非等方性の発生についての解析結果を報告する。MMS衛星の観測データのうち、ホイッスラーモード波動の観測にはSearch-coil magnetometerとElectric field double probe によって8192 Hzサンプリングで取得された電磁場のburst modeの観測データを用い、背景磁場としてはFluxgate magnetometersの16 HzサンプリングのFast survey modeのデータを用いた。電子の観測データはFast plasma investigation Dual electron spectrometerのデータを用いた。通常、電子のバーストデータの時間分解能は30 msであるが、この時間分解能では100 Hz程度(=周期約10 ms)のホイッスラーモード波動に伴う電子の変動を分解することはできない。この30 msの間に6 eVから30 keVの32のエネルギーステップを2往復掃引しているので、各エネルギーステップの計測の積分時間196 μsまで分解し、エネルギー、ピッチ角ごとにジャイロ非等方性の有無、波動電磁場との位相関係を調べた。その結果、一部のエネルギーにおいて波動の伝搬方向と逆向きに運動する電子のうち、サイクロトロン共鳴条件を満たすピッチ角よりかなり90°に近いピッチ角において非共鳴の相互作用によると考えられるジャイロ非等方が現れることを発見した。ホイッスラーモード波動の振幅が背景磁場の数%にも達するため、サイクロトロン共鳴速度から大きく離れた電子も波の1周期分とすれ違う間に位相空間内で無視できない程度に主にピッチ角方向に振動する。電子はミラー構造の成長によって生じたと考えられるバタフライ分布になっており、バタフライ分布のピークより90°に近いピッチ角では電子が振動するdiffusion curveに沿った位相空間密度の勾配が大きくなっているため、非共鳴の相互作用によるジャイロ非等方が観測可能になったと考えられる。つまり本観測は大振幅波動による非共鳴相互作用の直接証拠と解釈できる。