日本地球惑星科学連合2021年大会

講演情報

[E] 口頭発表

セッション記号 P (宇宙惑星科学) » P-PS 惑星科学

[P-PS04] 太陽系小天体:はやぶさ2等の宇宙ミッションからの新展開

2021年6月6日(日) 09:00 〜 10:30 Ch.04 (Zoom会場04)

コンビーナ:岡田 達明(宇宙航空研究開発機構宇宙科学研究所)、中本 泰史(東京工業大学)、黒田 大介(京都大学)、座長:岡田 達明(宇宙航空研究開発機構宇宙科学研究所)、中本 泰史(東京工業大学)、YACHEN YANG(Center for Space and Remote Sensing Research)

09:35 〜 09:50

[PPS04-04] 小惑星のレゴリス起伏地形に形成されるクレーターに関する実験的研究

*横田 優作1、荒川 政彦1、保井 みなみ1、山本 裕也1、長谷川 直2、大川 初音1 (1.神戸大学大学院理学研究科、2.宇宙航空研究開発機構)

キーワード:クレーター

衝突クレーターは、小惑星や衛星のような固体天体において主要な地質学的特徴の1つである。平面に形成されるクレーターは円形である一方、斜面に形成されるクレーターは楕円形であることがわかっている。特に、小惑星や衛星には斜面やバルジ、峡谷など、様々な地形が存在する。近年、はやぶさ2やOSIRIS-RExなどの探査機によって、小惑星リュウグウやベンヌは赤道域に巨大なバルジ地形を有していることがわかった。さらに、リュウグウのバルジ上には、非対称なプロファイルを持つクレーターがいくつか見つかっている。ところが、これまでのクレータースケール則は、平面の標的に対して行われた実験の結果をもとに構築されたものである。従って、小惑星表面の起伏地形に形成されるクレーターの形成過程に適用するためには、小惑星表面の起伏地形の影響を考慮したクレータースケール則が必要である。そこで本研究では、小惑星表面の起伏地形を模擬した粉粒体標的に対してクレーター形成実験を行い、クレーターサイズや形状、エジェクタ放出過程における表面地形の影響を調べた。

小惑星表面の起伏地形を模擬するために、山脈型と円錐型の2種類の形状を持つ粉粒体標的を用意した。山脈型標的の傾斜角θは20°と30°、円錐型標的の傾斜角θは30°とした。また、それぞれの標的に対して、平面(θ= 0°)においても実験を行なった。山脈型標的では、山頂から衝突点までの水平距離dを変化させ、円錐型標的では、すそ野の幅wを変化させて実験を行なった。

クレーター形成実験は、神戸大学の縦型一段式軽ガス銃と宇宙科学研究所の縦型二段式軽ガス銃を用いて行なった。衝突速度は、69〜202 m/s(山脈型標的)と41 m/s〜4.21 km/s(円錐型標的)とした。また、クレーター形状を調べるために、PhotoScan Proというソフトウェアを使用して、クレーターの3次元形状モデルを構築した。

山脈型標的では、稜線方向の長さ(長径)が斜面方向の長さ(短径)よりも長い楕円形のクレーターが形成された。さらに、形成されたクレーターの堆積リムは、稜線方向には見られたが、斜面方向には見られなかった。また、クレーター形状の非対称性はdに強く依存していた。そこで、長径と短径の比をアスペクト比と定義すると、dが大きいほど、長径が小さいほどアスペクト比が小さくなることがわかった。この傾向は、θ = 20°の標的においても確認されたが、dと長径が同じクレーターでは、θ = 20°よりもθ = 30°の方がアスペクト比は大きくなった。また、πスケーリングによって山脈型標的のクレータースケール則を構築した。規格化クレーター半径πRθに依存し、平面のπRの方がおよそ1.3倍大きくなった。
円錐型標的では、衝突前の山の高さと衝突後の山の高さの比を観察した。弾丸の運動量を標的の質量で割った値を特性速度v*と定義し、様々な衝突速度におけるv*と衝突前後の高さ比の関係を調べた。v*が0.5 m/sより小さい範囲では、衝突速度に関係なく、v*の増加に伴って高さ比が指数関数的に減少した。従って、衝突前後の標的の高さ比は弾丸の運動量で整理できることがわかった。v*が0.5 m/sより大きい範囲では、標的のほとんどが掘削され、高さ比がほぼ0になった。また、円錐型標的に形成されたクレーターの直径は、同じ衝突エネルギーでは平面に形成されたクレーターの直径とほぼ同じ大きさであった。