17:15 〜 18:30
[PPS05-P07] 月などの地球外天体において簡易に地下構造を調べるためのシステム開発 ~CCA法による地震アレイ探査の小型化~
キーワード:微動アレイ探査、CCA法、月探査
現在、月の地下にあると考えられている「水氷」は将来の地球外での活動を行なう上で、資源として重要とされている。また、将来的には月面に基地を建てる計画が立てられている。こうした中、天体の地下のS波速度構造を求めることは、水資源の発見や地盤支持力の推定などに繋がり、重要である。地下に水資源が氷として存在する場合、高S波速度異常として現れることが期待される。
宇宙探査では、ロケットに搭載できる物資の量や金銭的な問題から、探査機の重量や大きさに限度がある。そのため、月で地震探査を行なう際においても、震源装置や地震計などの探査システムの軽量化、小型化が求められている。そこで、我々は、人工震源を必要としない微動アレイ探査に基づく地球外天体の探査システムの開発を目指し、研究を進めている。微動アレイ探査とは、人工震源を用いなくても常に発生している微弱な振動(常時微動)を用いることで、簡易的に地下のS波速度を推定できる方法である。地球における微動は、風や波、交通機関などに起因する。月でも昼間の時間帯であれば、月面の温度差による岩盤の膨張、圧縮から起きる熱月震などを微動源として利用することで、微動アレイ探査ができるのではないかと考えられる。さらに、微動アレイ探査の解析においてCenterless Circular Array(CCA)法という方法を用いることで、地震計アレイのサイズが1m以内と小さくても、比較的地下深くまで地下構造を求めることができることが分かっている。
このように、CCA法で解析することを前提とした、微動アレイ探査の小型化を行なうことができれば、人工震源が不要になること、探査機が小型で済むことの二つの点で問題が解決でき、月での地震探査が容易になると考えられる。したがって、本研究では、CCA法を用いることを前提とした、小型な微動アレイ探査システムを月面で使用した場合のアレイ配置毎の可探深度(解析できる地下深度)を評価することを目的とし、アポロデータを用いた検討を行なった。
ここで、CCA法では、微動の「NS比」(SN比の逆数であるノイズとシグナルのパワー比)、「アレイ半径」(地震計を配置する円の半径)、「地震計の数」により可探深度が変化する。アレイ半径と地震計の数は月では制約があるものの、私たちが自在に設定できるのに対し、微動のNS比は実際の月の環境や地震計の精度により変化する。したがって、実際に1969年から1977年にかけて月面で取得されたアポロ14号と17号の微動データを用いて、月の微動のNS比を推定し、月の環境下で小型アレイを使った場合を想定した評価を行なった。まず、微動として用いるシグナルは(A)月の昼間に遠方で起きたと思われる熱月震、(B)月の昼間の明瞭な月震を含まない微動の二つを考えた。また、月の夜間は熱月震が少ないことを考慮し、特別な震動を含まない夜間の微動からノイズを定義した。可探深度の評価は、実際の周波数毎の波数k(図1aの黒線)が、CCA法による最小波数解析限界kmin(図1aのカラーの点)を上回る最大波長を求め、その波長の三分の一から求めて行なった。実際の波数kはTanimoto et al.(2008)による月の微動データから求めた周波数毎の位相速度から算出した。最小波数解析限界kminは実際の月の微動のNS比、用いたいアレイの半径、地震計の数をパラメータとする評価法(Cho et al.,2006 )から求めた。
最終的には、CCA法を月での探査で用いる際に考慮すべき点や課題の整理と、月での可探深度(図1b)の推定より、求めたい深度に対してどのようなアレイ配置や地震計の精度が必要かを考察した。例えば求めたい深度が3mの場合、アポロの地震計よりも精度の良い地震計を用いてノイズレベルを抑える、もしくはノイズの小さい時間帯のデータを選んで解析すれば、5角形アレイでは0.3m半径、3角形アレイでは0.5m半径の小型アレイを使用すれば探査できる可能性があることが分かった。
謝辞:本研究ではJAXA Data Archives and Transmission System (DARTS)のアポロデータを使用させていただきました。記して感謝いたします。
宇宙探査では、ロケットに搭載できる物資の量や金銭的な問題から、探査機の重量や大きさに限度がある。そのため、月で地震探査を行なう際においても、震源装置や地震計などの探査システムの軽量化、小型化が求められている。そこで、我々は、人工震源を必要としない微動アレイ探査に基づく地球外天体の探査システムの開発を目指し、研究を進めている。微動アレイ探査とは、人工震源を用いなくても常に発生している微弱な振動(常時微動)を用いることで、簡易的に地下のS波速度を推定できる方法である。地球における微動は、風や波、交通機関などに起因する。月でも昼間の時間帯であれば、月面の温度差による岩盤の膨張、圧縮から起きる熱月震などを微動源として利用することで、微動アレイ探査ができるのではないかと考えられる。さらに、微動アレイ探査の解析においてCenterless Circular Array(CCA)法という方法を用いることで、地震計アレイのサイズが1m以内と小さくても、比較的地下深くまで地下構造を求めることができることが分かっている。
このように、CCA法で解析することを前提とした、微動アレイ探査の小型化を行なうことができれば、人工震源が不要になること、探査機が小型で済むことの二つの点で問題が解決でき、月での地震探査が容易になると考えられる。したがって、本研究では、CCA法を用いることを前提とした、小型な微動アレイ探査システムを月面で使用した場合のアレイ配置毎の可探深度(解析できる地下深度)を評価することを目的とし、アポロデータを用いた検討を行なった。
ここで、CCA法では、微動の「NS比」(SN比の逆数であるノイズとシグナルのパワー比)、「アレイ半径」(地震計を配置する円の半径)、「地震計の数」により可探深度が変化する。アレイ半径と地震計の数は月では制約があるものの、私たちが自在に設定できるのに対し、微動のNS比は実際の月の環境や地震計の精度により変化する。したがって、実際に1969年から1977年にかけて月面で取得されたアポロ14号と17号の微動データを用いて、月の微動のNS比を推定し、月の環境下で小型アレイを使った場合を想定した評価を行なった。まず、微動として用いるシグナルは(A)月の昼間に遠方で起きたと思われる熱月震、(B)月の昼間の明瞭な月震を含まない微動の二つを考えた。また、月の夜間は熱月震が少ないことを考慮し、特別な震動を含まない夜間の微動からノイズを定義した。可探深度の評価は、実際の周波数毎の波数k(図1aの黒線)が、CCA法による最小波数解析限界kmin(図1aのカラーの点)を上回る最大波長を求め、その波長の三分の一から求めて行なった。実際の波数kはTanimoto et al.(2008)による月の微動データから求めた周波数毎の位相速度から算出した。最小波数解析限界kminは実際の月の微動のNS比、用いたいアレイの半径、地震計の数をパラメータとする評価法(Cho et al.,2006 )から求めた。
最終的には、CCA法を月での探査で用いる際に考慮すべき点や課題の整理と、月での可探深度(図1b)の推定より、求めたい深度に対してどのようなアレイ配置や地震計の精度が必要かを考察した。例えば求めたい深度が3mの場合、アポロの地震計よりも精度の良い地震計を用いてノイズレベルを抑える、もしくはノイズの小さい時間帯のデータを選んで解析すれば、5角形アレイでは0.3m半径、3角形アレイでは0.5m半径の小型アレイを使用すれば探査できる可能性があることが分かった。
謝辞:本研究ではJAXA Data Archives and Transmission System (DARTS)のアポロデータを使用させていただきました。記して感謝いたします。