日本地球惑星科学連合2021年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 P (宇宙惑星科学) » P-PS 惑星科学

[P-PS06] 惑星科学

2021年6月4日(金) 17:15 〜 18:30 Ch.03

コンビーナ:仲内 悠祐(宇宙航空研究開発機構)、菊地 紘(宇宙航空研究開発機構)

17:15 〜 18:30

[PPS06-P15] 磁気流体力学的に降着する原始惑星系円盤のスノーラインの進化:一貫したダストモデルを用いた解析

*近藤 克1、奥住 聡1、森 昇志2 (1.東京工業大学、2.東京大学)


キーワード:原始惑星系円盤、磁気流体力学、降着、スノーライン、惑星形成

原始惑星系円盤の中で氷の昇華が起こる軌道をスノーラインと呼ぶ.スノーラインが中心星や円盤の進化とともにどのように移動するかを理解することは,地球をはじめとする岩石惑星の形成を理解するために必要不可欠である.
本研究では,磁場とガスとの相互作用で降着する円盤の温度構造とスノーライン移動に注目する.近年の磁気流体力学シミュレーションによると,磁気的に降着する円盤では降着加熱が非効率であることが示されている.Mori et al. (2021)はシミュレーションに基づいた円盤温度進化モデルを構築し,スノーラインが円盤進化の早い段階で1 auに到達することを示した.しかし,この研究では円盤の温度を決める冷却効率と電離度構造の計算で0.1 μmの均一サイズのダストを用いていた.したがって,ダストの成長に伴うサイズ分布進化などに応じて,円盤の温度構造やスノーラインの位置がどのように変化するのかを整合的に調べることができなかった.
そこで本研究では,磁気流体力学に基づく温度円盤モデルに一貫したダストモデルを導入し,ダストのサイズ分布の変化に伴う円盤の温度分布変化をはじめて計算した.ダストのサイズ分布は冪乗則に従うとし,最大ダストサイズをパラメータとした.その結果,最大ダストサイズが100 μm以下のときは,ダストの成長とともに電離度が上昇する効果で円盤温度も上昇することがわかった.一方,サイズが100 μmを超えると,ダストオパシティの減少の効果が電離度の上昇の効果を上回るようになり,ダストの成長とともに円盤温度が減少することもわかった.つまり,最大ダストサイズが100 μm程度のときに円盤は最も効率的に暖まる.この結果,ダストサイズが0.1 μm程度の場合は円盤形成から0.65 Myr程度でスノーラインが1 auの軌道に到達するのに対し,最大ダストサイズが100 μmであれば到達時間は2.2 Myrまで遅れることが分かった.
本研究によって,ダストのサイズ分布によっては,磁気流体力学的に降着する円盤でも降着加熱の寄与が無視できないことを示した.また,本研究のスノーラインの1 au到達時間から,円盤の加熱効率が最大となる状況(最大ダストサイズがおよそ100 μmの場合)であれば,1 auで誕生した原始惑星は地球のような岩石惑星に進化する可能性があることが示唆された.今後はダストの成長に伴うサイズ分布の時間進化も取り入れることで,地球がいつ・どこで形成されたのかを明らかにしていく予定である.