16:45 〜 17:00
[PPS07-05] リュウグウ試料リハーサル分析としてのCM, CI隕石とその加熱試料の高空間分解能三色CT
キーワード:はやぶさ2、リュウグウ、nano XCT
JAXAの小惑星探査機「はやぶさ2」は昨年12月に無事に地球へ帰還し、現在も小惑星「リュウグウ」の試料のキュレーションが始まった。リュウグウは反射スペクトルの分析などから、弱い加熱を受けた含水炭素質隕石に類似する物質で構成されていると考えられている[1]。このような物質はサブミクロンスケールで複雑な組織をもつことから、高空間分解能での三次元組織観察が粒子の生成過程を考えるうえで有効である。我々のグループではSPring-8 BL47XUのナノXCTを使ったリュウグウ試料の分析を予定しており、分析準備を進めている。
模擬試料としてCM(Murchison, Murray)、CI(Orgueil)隕石およびその加熱実験試料の粒(~50 µm)を用意し、それぞれ放射光単色X線を用いてナノXCT観察(ピクセルサイズ~70 nm)をおこなった。試料はFIBによりTi針先に固定、もしくは樹脂を用いて炭素ファイバーに固定した。X線のエネルギーは、FeのK吸収端を挟むように、7.00, 7.35 keVとして、二つの異なるX線吸収係数(LAC)像を得た。また、一次元走査を行うX線顕微鏡[2]により8.00 keVにおけるX線屈折率減量(RID)像も取得した(RIDは物質密度にほぼ比例する)。これら三つのCT像の位置合わせを行うことで、各画素が7.00 keVのLAC、7.35 keVのLAC、8.00 keVのRIDの三変数をもつ疑似カラー三次元画像を作成した。これにより、試料内部の鉱物相を色で判別しその3次元分布を知ることができる。さらに、7.00 keVの画像については、Chan-Vase法によるセグメンテーションを行い、粒子形状や空隙率の見積りを行った。
非加熱Murchison隕石と400 ℃X時間加熱の試料を比較すると、TCI (tochilinite-cronstedtite intergrowth)の一部がマグネタイト化している様子が確認できた。さらに600 ℃X時間ではマトリクスとTCIが反応していた。またMurray隕石では、600℃、1時間の加熱の試料のTCIはその形は保っていたが一部がマトリクスと反応していた。
一方非加熱Orgueil隕石とその500 ℃、50時間加熱の試料を比較したところ、マトリクスを構成するMgに富む層状ケイ酸塩やマグネタイトの組織にはほとんど変化が見られなかった。一方で、非加熱試料には普遍的に見られた5 マイクロメートルほどのFe-serpentineと考えられる鉱物からなる唇のような形状を持つ組織が、加熱試料ではやや縮むことにより周囲のマトリクスから剥離している様子が観察された。この唇様組織はCI隕石が弱い熱変成を受けた時に形成すると考えられ、加熱条件を制約する指標となる可能性があるため、リュウグウ試料においても特に着目すべき組織であると考えている。
[1] Kitazato et al., Science 364, 272–275 (2019)
[2] Takeuchi et al., J. Synchrotron Radiat. 20, 793–800 (2013).
模擬試料としてCM(Murchison, Murray)、CI(Orgueil)隕石およびその加熱実験試料の粒(~50 µm)を用意し、それぞれ放射光単色X線を用いてナノXCT観察(ピクセルサイズ~70 nm)をおこなった。試料はFIBによりTi針先に固定、もしくは樹脂を用いて炭素ファイバーに固定した。X線のエネルギーは、FeのK吸収端を挟むように、7.00, 7.35 keVとして、二つの異なるX線吸収係数(LAC)像を得た。また、一次元走査を行うX線顕微鏡[2]により8.00 keVにおけるX線屈折率減量(RID)像も取得した(RIDは物質密度にほぼ比例する)。これら三つのCT像の位置合わせを行うことで、各画素が7.00 keVのLAC、7.35 keVのLAC、8.00 keVのRIDの三変数をもつ疑似カラー三次元画像を作成した。これにより、試料内部の鉱物相を色で判別しその3次元分布を知ることができる。さらに、7.00 keVの画像については、Chan-Vase法によるセグメンテーションを行い、粒子形状や空隙率の見積りを行った。
非加熱Murchison隕石と400 ℃X時間加熱の試料を比較すると、TCI (tochilinite-cronstedtite intergrowth)の一部がマグネタイト化している様子が確認できた。さらに600 ℃X時間ではマトリクスとTCIが反応していた。またMurray隕石では、600℃、1時間の加熱の試料のTCIはその形は保っていたが一部がマトリクスと反応していた。
一方非加熱Orgueil隕石とその500 ℃、50時間加熱の試料を比較したところ、マトリクスを構成するMgに富む層状ケイ酸塩やマグネタイトの組織にはほとんど変化が見られなかった。一方で、非加熱試料には普遍的に見られた5 マイクロメートルほどのFe-serpentineと考えられる鉱物からなる唇のような形状を持つ組織が、加熱試料ではやや縮むことにより周囲のマトリクスから剥離している様子が観察された。この唇様組織はCI隕石が弱い熱変成を受けた時に形成すると考えられ、加熱条件を制約する指標となる可能性があるため、リュウグウ試料においても特に着目すべき組織であると考えている。
[1] Kitazato et al., Science 364, 272–275 (2019)
[2] Takeuchi et al., J. Synchrotron Radiat. 20, 793–800 (2013).