日本地球惑星科学連合2021年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 P (宇宙惑星科学) » P-PS 惑星科学

[P-PS07] 太陽系物質進化

2021年6月5日(土) 17:15 〜 18:30 Ch.02

コンビーナ:松本 恵(東北大学大学院)、小澤 信(東北大学大学院理学研究科地学専攻)、日比谷 由紀(国立研究開発法人海洋研究開発機構 海底資源センター)、川崎 教行(北海道大学 大学院理学研究院 地球惑星科学部門)

17:15 〜 18:30

[PPS07-P01] 弾丸衝突実験によるコンドライト模擬物の空隙率変化の研究

*中村 昭子1、榛沢 悠樹2、大村 知美3、長谷川 直4 (1.神戸大学大学院理学研究科、2.神戸大学理学部、3.大阪産業大学、4.宇宙航空研究開発機構)

キーワード:コンドライト、空隙率、衝突、圧密、小天体

マトリックスとコンドリュールの凝集によって形成される始原的な小天体は、マトリックス割合に依存する疎な構造を持つ。天体の自己重力による圧縮だけでは、始原的小天体の空隙率をコンドライトの値にまで減らすのには不十分である[1,2]。空隙率減少の要因としては熱進化・水質変性の他に、衝突による圧縮が考えられる。先行研究では、円筒容器内に封じたダストとビーズからなるコンドライト母天体模擬物をアルミニウム円柱弾丸の衝突で加圧して衝突後の模擬物の空隙率を調べている[1]。本研究では、コンドライト母天体表面にインパクターが衝突してクレーターができ、エジェクタが放出される過程における空隙率変化を調べる。

マトリックス模擬物として1.5 μmの不規則形状シリカ粒子と4.3 μmのフライアッシュ、コンドリュール模擬物として直径220 μmのガラスビーズを混合し、水を加えて7-10 kPaで加圧したのちに50℃に保って乾燥させた試料を用意した。ガラスビーズの体積割合は13%(試料A)と35%(試料B)の2種類とした。乾燥後のそれぞれの空隙率は62%(試料A)と38%(試料B)であった。

これらの試料に対し、宇宙科学研究所の二段式軽ガス銃を用いて、直径3.2 mmのSUSとアルミニウムの球弾丸を速度4.5 km/sで衝突させ、衝突後6~3000 μsの間のいくつかのタイミングでフラッシュX線画像を撮影した。いずれの試料でも、時間とともにクレーターキャビティーが成長する様子が捉えられた。試料Aでは、キャビティー直下に圧密層が生じており、この圧密層が衝突からの時間が経過すると拡がることが観察できた。圧密層の空隙率は衝突点からの距離に依存すると考えられるが、簡単のため一定と仮定して、各時刻における圧密層の平均空隙率を求めたところ、23~54%となった。一方、試料Bでは、圧密層を検出することはできなかった。これはフラッシュX線画像の空間分解能とS/Nが、空隙率変化を捉えるのに十分でなかったためと考えられる。

本研究は宇宙科学研究所超高速衝突実験施設の共同利用により行いました。

[1] Beitz, et al., Icarus 225, 558-569, 2013.

[2] Omura, T. and Nakamura, A. M. Planetary Science Journal, accepted.