日本地球惑星科学連合2021年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 P (宇宙惑星科学) » P-PS 惑星科学

[P-PS07] 太陽系物質進化

2021年6月5日(土) 17:15 〜 18:30 Ch.02

コンビーナ:松本 恵(東北大学大学院)、小澤 信(東北大学大学院理学研究科地学専攻)、日比谷 由紀(国立研究開発法人海洋研究開発機構 海底資源センター)、川崎 教行(北海道大学 大学院理学研究院 地球惑星科学部門)

17:15 〜 18:30

[PPS07-P05] CVコンドライト隕石の凝縮CAIの初生26Al/27Al比バリエーション

*川崎 教行1、坂本 直哉2、圦本 尚義2 (1.北海道大学 大学院理学研究院 地球惑星科学部門、2.北海道大学)

隕石に含まれるCAI (Ca-Al-rich inclusion)は,太陽系最古の岩石であり(Connelly et al., 2012),形成時に半減期70万年の短寿命放射性核種である26Alを含んでいた(e.g., Lee et al., 1976)。近年二次イオン質量分析法により,CAIの高精度26Al−26Mg鉱物アイソクロンが取得され始め,個々のCAIそれぞれの,形成時の26Al/27Al初生比が明らかになってきた。CVコンドライト中のfluffy Type A CAIや細粒CAIといった「凝縮CAI」は,約5.2 × 10^−5の均一な26Al/27Al初生比を示すことが報告された(MacPherson et al., 2010, 2012)。一方,太陽系円盤内で溶融・結晶化を経験したとされる「火成CAI」は,約5.2から4.2 × 10^−5にかけた26Al/27Al初生比の広がりを示す(MacPherson et al., 2012, 2017; Kawasaki et al., 2018)。しかし,凝縮CAIの高精度26Al−26Mg鉱物アイソクロンの測定例は,まだ3例のみと少数であったため,その形成年代幅を火成CAIのそれと単純に比較することは困難であった。そこで本研究では,CVコンドライト隕石,エフレモフカ・ヴィガラノ・Thiel Mountains 07007・Northwest Africa 8613に含まれる凝縮CAI 9つ(fluffy Type A CAIが2つと細粒CAIが7つ)の高精度26Al−26Mg鉱物アイソクロンデータを,二次イオン質量分析計 (CAMECA ims-1280HR,北海道大学)を用いて取得した。
新たに得られた2つのfluffy Type A CAIの26Al−26Mg鉱物アイソクロンはそれぞれ,(4.70 ± 0.08) × 10^−5と (4.39 ± 0.08) × 10^−5という26Al/27Al初生比を示し,7つの細粒CAIは,(5.19 ± 0.17) × 10^−5から (3.35 ± 0.21) × 10^−5の間で26Al/27Al初生比の連続的な広がりを示した(Fig. 1)。また,9つの凝縮CAIすべての初生26Mg/24Mg比は,太陽組成ガスのMg同位体進化線上にプロットされた。本研究により明らかとなった凝縮CAIの26Al/27Al初生比の広がりは,火成CAIのもの(5.2から4.2 × 10^−5)と類似している。したがって,CAI形成領域において26Alが均一に分布していた場合には,凝縮と溶融・結晶化というCAIを形成した熱プロセスが,太陽系形成最初期の少なくとも約40万年間続いていたことを示す。もしくは,CVコンドライトのCAI形成領域において,26Al/27Al比が,少なくとも,3.4 × 10^−5から5.2 × 10^−5にわたり不均一に分布していたのかもしれない。

Fig. 1. CVコンドライトのCAIの初生26Al/27Al比分布(Kawasaki et al. 2020を改変)。色付きデータは本研究。他データソースは,Jacobsen et al. (2008), Larsen et al. (2011), MacPherson et al. (2010, 2012, 2017), Kita et al. (2012), Kawasaki et al. (2018)より引用。