日本地球惑星科学連合2021年大会

講演情報

[E] 口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-CG 固体地球科学複合領域・一般

[S-CG39] Science of slow earthquakes: Toward unified understandings of whole earthquake process

2021年6月5日(土) 13:45 〜 15:15 Ch.21 (Zoom会場21)

コンビーナ:井出 哲(東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻)、廣瀬 仁(神戸大学都市安全研究センター)、氏家 恒太郎(筑波大学生命環境系)、波多野 恭弘(大阪大学理学研究科)、座長:波多野 恭弘(大阪大学理学研究科)

14:30 〜 14:45

[SCG39-10] 二種類の周期を持つ電離圏擾乱の振幅比に現れるスロー地震のしるし

*日置 幸介1、高坂 宥輝1 (1.北海道大学大学院理学研究院地球惑星科学部門)

キーワード:スロー地震、電離圏擾乱、GNSS-TEC

断層の動きが励起する地震波に含まれる周波数成分には断層サイズに関する情報が含まれており、一般的に大きな地震の方が多くの低周波成分を含むことが知られている。断層運動の立ち上がりの速さも同様に地震波の周波数スペクトルに影響を与える。例えば津波地震として知られる断層すべりがゆっくり進行する地震は、短周期の地震動の振幅に比べて大きな津波を励起する。本研究では断層運動に伴う地殻上下変動が励起する大気波動について、長周期成分と短周期成分の振幅を比較する。そのような大気波動はしばしば高度300 kmまで伝搬し、地震時電離圏擾乱をもたらす。それらは全球航法衛星システム(GNSS)で電離圏全電子数(TEC)の振動として観測される。地震時電離圏擾乱には通常地震の約十分後に生じる音波(AW)による擾乱が最も大きく観測されるが、大きな地震では重力による復元力がもたらす内部重力波(IGW)の成分が見えることがある。前者は約4分の周期を持ち、0.8-1.0 km/sで伝搬するが、後者は12分程度の周期を持ち、0.2-0.3 km/sで伝搬するため、通常両者は明瞭に見分けられる。本研究では地震時電離圏擾乱に含まれるAW成分とIGW成分の振幅を、2011年東北沖地震、2010年マウレ地震、2003年十勝沖地震、1994年北海道東方沖地震に加え、津波地震として知られる2010年メンタワイ地震の計五個の地震についてGNSS観測網のデータを解析して求めた。その結果 (1)大きな地震ほど大きなIGW/AW比を示すこと、(2)津波地震はそれらのトレンドから大きくずれた大きなIGW/AW比を示すこと、の二点が明らかになった。これは断層運動が長い時間かけて起こるほど、地殻上下変動もゆっくり進行し、その結果長い周期の大気波動をより効率的に励起することを物語る。