日本地球惑星科学連合2021年大会

講演情報

[E] 口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-CG 固体地球科学複合領域・一般

[S-CG39] Science of slow earthquakes: Toward unified understandings of whole earthquake process

2021年6月5日(土) 15:30 〜 17:00 Ch.21 (Zoom会場21)

コンビーナ:井出 哲(東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻)、廣瀬 仁(神戸大学都市安全研究センター)、氏家 恒太郎(筑波大学生命環境系)、波多野 恭弘(大阪大学理学研究科)、座長:廣瀬 仁(神戸大学都市安全研究センター)

15:45 〜 16:00

[SCG39-14] 2018~2019年豊後水道長期的SSEのすべりの時空間分布の推定

*瀬下 幸成1、吉岡 祥一2,1 (1.神戸大学大学院理学研究科惑星学専攻、2.神戸大学都市安全研究センター)


キーワード:豊後水道、2018~2019年、長期的スロースリップイベント、すべりの時空間分布

国土地理院のGNSS時系列データを用いて、2018年から2019年に豊後水道で起こった長期的スロースリップイベント(長期的SSE)のすべりの時空間分布の推定を行った。
 豊後水道の直下ではフィリピン海プレートがアムールプレートに対し、北西方向に約6.5cm/yearの速度で沈み込んでいる。この地域のプレート境界面では、数ヶ月から数年の継続時間をもつ長期的SSEと呼ばれる非地震性のプレート間すべりが生じている。過去の研究から、豊後水道では約6年の間隔で長期的SSEが発生しているということが明らかになっている。具体的には、1997年~1998年、2002年~2004年、2009年~2011年である。新たに2018年~2019年に長期的SSEが発生していることがGNSS観測によってとらえられた。
 データはGEONETの日々の座標値(F3解)のデータを使用した。使用した観測点は四国西部と九州東部の114点で、解析期間は2016年1月1日~2020年6月30日である。長期的SSEによる変位を含まない中国地方北部の6観測点の変動を平均して、参照点の変動とした。GNSS時系列データには、地震時ステップやアンテナ交換等に伴うステップ、共通誤差成分、年周・半年周変動等の情報が含まれている。SSEによる変動を抽出するため、これらを取り除いた。また、プレート運動に伴うテクトニックな変動を1次関数で近似し、トレンドの推定期間を2016年1月1日~2017年12月31日として、そのトレンドを差し引いた。
 その後、すべりの空間分布がなめらかである、すべりは主にプレート収束方向を向く、すべりの時間変化がなめらかである、という3つの先験的拘束条件を与えたインヴァージョン法(Yoshioka et al., 2015)を用いて解析した。解析期間は2018年1月1日~2019年12月31日までで、タイムステップは0.1年とした。
 インヴァージョン解析の結果、総すべり量は最大で約27cm、モーメント解放量は3.7×1019Nm、Mw7.0と推定された。この期間に生じたすべりは主に2つの過程に分けられる。1つ目のすべりは2018.3年から2018.7年まで豊後水道の南西側で見られた。総すべり量は最大約10cm、モーメント解放量は8.9×1018Nm、Mw6.6と推定された。最大すべり速度は2018.5-2018.6の期間で約36cm/yrと求まった。2つ目のすべりは2018.8年から2019.4年まで豊後水道直下で見られた。総すべり量は最大約19cm、モーメント解放量は2.0×1019Nm、Mw6.8と推定された。最大すべり速度は2019.1-2019.2の期間で約53cm/yrと求まった。深部低周波微動はすべりが加速した2018.9年以降、長期的SSEのすべり域のダウンディップ側で活発化していた。また、2つ目のすべりの終了後、2019.5-2019.7の期間でわずかにすべりが見られ、すべりが継続している可能性もある。
 過去に豊後水道で発生した長期的SSEと比較すると、1つ目のすべりが豊後水道の南西側で発生し、2つ目のすべりが豊後水道の中心付近で起きたという点で、2002年から2004年に発生した長期的SSEと似ているといえる。ただ、1つ目のすべりと2つ目のすべりの間隔が短い点、2つ目のすべりの後半で、すべりが北東-南西方向に拡大したという点は異なる。また、モーメント解放量はほとんど同じだが、総すべり量と最大すべり速度は大きくなっている。これは前回の長期的SSEの発生からの間隔が少し延びたことが関係しているかもしれない。