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[SCG41-08] ICDP DSeis計画:M5.5オークニー地震の下部地殻質貫入体を持つ地震発生場の孔内検層と回収コア情報の統合整理
キーワード:地震発生場、ICDP科学掘削、南アフリカ大深度金鉱山、下部地殻質の変質貫入岩体
ICDP DSeis計画(ICDP 2019 The Thrill to Drill)は、地下2.9 kmからフル・コア掘削を行い、M5.5オークニー地震の余震発生帯上縁部付近から、総延長1.6 kmのコアの回収に成功している(Ogasawara et al. Deep Mining 2019)。この地震発生場の母岩は、太古代の変成堆積岩(Quartziteなどの29億年前のWest Rand層群)であることは、掘削前にわかっていた。
本発表は、2017-2018年に行われた孔内検層(γ線・密度・弾性波速度・磁化率・水温・水伝導度)と、2019年に高知コアセンターに輸入して行われた、核心部百数十m長のコアの非破壊分析(MSCLなど)の統合整理の結果について報告する。
2017-2018年に行われた掘削と検層は、West Rand層群の変成堆積岩(Roodepoort、Crown, Babrosco層)の密度やVpが上部地殻並であることだけでなく、下部地殻並の密度と地震波速度を持つmaficな板状貫入岩体が、地震発生場にあることも明かにした。
M5.5左横ずれ地震の余震発生帯との交差部付近からは、Lamprophyre dykeと断層ガウジ・角礫が回収され(Ogasawara et al. Deep Mining 2019)、Talcなども検出されていた(横山 2020阪大修士論文)。余震発生帯との交差部で孔が崩落・閉塞したため、交差部とその奥の孔内検層を行うことができていなかった。この部分を高知コアセンターに輸入し2019年度にMSCLやX線CTなどが行われた。
2020年度はこれらを統合整理した。その結果、Dolerite Sillの密度と弾性波速度は下部地殻並であったが、余震発生帯の場所で交差したLamprophyreの、Intactな部分の密度はDolerite Sillよりも有意に大きいこと、断層角礫・ガウジ帯に近づくと、磁化率が急増し、Vpが急減することがわかった。それらは、Lamprophyre Dyke中でもタルクが多く検出された場所と一致した。
Dolerite Sillと別のmaficなダイクの交差部では、非天水起源で塩分がほとんど飽和し、非生物起源の溶存有機炭化水素に富む湧水やガス(海嶺の熱水噴出孔付近に類似?)も見つかっている(Wiersberg et al. 2019 EGU; Rusley et al. 2018 AGU; Nisson et al. 2019 AGU; Warr et al. 2020 AGU)。余震は筋状に分布し、その筋の向きと、余震面とDolerite Sillの交わる線はほぼ平行である(田所 2021立命館修士論文)。Maficな貫入体が地下流体流に影響を与えることは良く知られているため、これらを統合解析することによって、地震発生場における、下部地殻物質と水と破壊の関係を議論できる可能性が見えてきた。
ICDPチームは、日本・南ア・アメリカ・ドイツ・スイス・インド・イスラエル・オーストラリアの研究者と南アの鉱山産業界の実務者から構成されており、最近の活動コアメンバーは、矢部康男・伊藤高敏(東北大)、船戸明雄(深田地質研究所)、J. Mori (京都大)、廣野哲朗(大阪大)、山本祐二(高知大)、B. Liebenberg (Moab Khotsong鉱山)、T.C. Onsott(Princton大)、T.L. Kieft(New Mexico Tech)、T. Wiersberg(GFZ)、R.J. Durrheim(Wits大)、J. Castillo (Free State 大), M. Ziegler (ETH, Zurich)らと彼らの学生達である。
本掘削計画は、SATREPSや科研費の成果を発展させたものであり、ICDP、JSPS Core-to-Core Program, JSPS-SA NRF bilateral Program, 立命館大学、災害を軽減するための地震火山観測研究計画、米国NSF、ドイツDFG、南アNRFなどによってサポートされている。
本発表は、2017-2018年に行われた孔内検層(γ線・密度・弾性波速度・磁化率・水温・水伝導度)と、2019年に高知コアセンターに輸入して行われた、核心部百数十m長のコアの非破壊分析(MSCLなど)の統合整理の結果について報告する。
2017-2018年に行われた掘削と検層は、West Rand層群の変成堆積岩(Roodepoort、Crown, Babrosco層)の密度やVpが上部地殻並であることだけでなく、下部地殻並の密度と地震波速度を持つmaficな板状貫入岩体が、地震発生場にあることも明かにした。
M5.5左横ずれ地震の余震発生帯との交差部付近からは、Lamprophyre dykeと断層ガウジ・角礫が回収され(Ogasawara et al. Deep Mining 2019)、Talcなども検出されていた(横山 2020阪大修士論文)。余震発生帯との交差部で孔が崩落・閉塞したため、交差部とその奥の孔内検層を行うことができていなかった。この部分を高知コアセンターに輸入し2019年度にMSCLやX線CTなどが行われた。
2020年度はこれらを統合整理した。その結果、Dolerite Sillの密度と弾性波速度は下部地殻並であったが、余震発生帯の場所で交差したLamprophyreの、Intactな部分の密度はDolerite Sillよりも有意に大きいこと、断層角礫・ガウジ帯に近づくと、磁化率が急増し、Vpが急減することがわかった。それらは、Lamprophyre Dyke中でもタルクが多く検出された場所と一致した。
Dolerite Sillと別のmaficなダイクの交差部では、非天水起源で塩分がほとんど飽和し、非生物起源の溶存有機炭化水素に富む湧水やガス(海嶺の熱水噴出孔付近に類似?)も見つかっている(Wiersberg et al. 2019 EGU; Rusley et al. 2018 AGU; Nisson et al. 2019 AGU; Warr et al. 2020 AGU)。余震は筋状に分布し、その筋の向きと、余震面とDolerite Sillの交わる線はほぼ平行である(田所 2021立命館修士論文)。Maficな貫入体が地下流体流に影響を与えることは良く知られているため、これらを統合解析することによって、地震発生場における、下部地殻物質と水と破壊の関係を議論できる可能性が見えてきた。
ICDPチームは、日本・南ア・アメリカ・ドイツ・スイス・インド・イスラエル・オーストラリアの研究者と南アの鉱山産業界の実務者から構成されており、最近の活動コアメンバーは、矢部康男・伊藤高敏(東北大)、船戸明雄(深田地質研究所)、J. Mori (京都大)、廣野哲朗(大阪大)、山本祐二(高知大)、B. Liebenberg (Moab Khotsong鉱山)、T.C. Onsott(Princton大)、T.L. Kieft(New Mexico Tech)、T. Wiersberg(GFZ)、R.J. Durrheim(Wits大)、J. Castillo (Free State 大), M. Ziegler (ETH, Zurich)らと彼らの学生達である。
本掘削計画は、SATREPSや科研費の成果を発展させたものであり、ICDP、JSPS Core-to-Core Program, JSPS-SA NRF bilateral Program, 立命館大学、災害を軽減するための地震火山観測研究計画、米国NSF、ドイツDFG、南アNRFなどによってサポートされている。