日本地球惑星科学連合2021年大会

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[E] ポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-CG 固体地球科学複合領域・一般

[S-CG41] ハードロック掘削科学〜陸上掘削から深海底掘削そしてオマーン〜

2021年6月6日(日) 17:15 〜 18:30 Ch.15

コンビーナ:高澤 栄一(新潟大学理学部理学科地質科学科プログラム)、道林 克禎(名古屋大学 大学院環境学研究科 地球環境科学専攻 地質・地球生物学講座 岩石鉱物学研究室)、岡崎 啓史(海洋研究開発機構)

17:15 〜 18:30

[SCG41-P07] オマーンオフィオライト・サラヒ岩体の蛇紋岩化作用について

*吉羽 洋紀1、高澤 栄一1,2 (1.新潟大学理学部、2.海洋研究開発機構)

キーワード:オマーンオフィオライト、蛇紋岩化作用、マントルセクション、熱水変質、アンチゴライト

オマーンオフィオライトは,白亜紀後期のネオテチス海で形成された海洋リソスフェアが,沈み込みに伴う衝上プロセスを経て,白亜紀末期にアラビア半島東端に定置したものとされる. オマーンオフィオライトのかんらん岩は蛇紋岩化作用を被っており,サラヒ岩体のマントルセクションも例外ではない.本研究で用いた岩石試料は比較的蛇紋岩化の程度が低く,より初期の海洋リソスフェアの熱水変質作用の過程を研究する上で適している.そこで,本研究では,サラヒ岩体マントルセクション中部からモホ遷移帯にかけての熱水浸透による蛇紋岩化の過程を明らかにすることを目的とした.

変質鉱物の鏡下観察とレーザーラマン分光光度計による鉱物種の同定の結果から,すべての岩石試料で低温型の蛇紋岩化が進行していることが明らかとなった.さらに,高温型蛇紋石であるアンチゴライトや,滑石が広範囲に分布すること,トレモラ閃石や緑泥石が一部の岩石試料で見られることから,400-900 ℃の熱水浸透があったと考えられる.加えて,メッシュ組織やバスタイトが保存されていること,高温で安定するそれらの鉱物を,より低温で安定するリザダイトやクリソタイルなどが切断する産状から,徐々に温度が低下するような熱水変質を受け,400 ℃以下の熱水浸透も存在し,さらに地表での蛇紋岩化作用も進行していたと考えられる.その水の供給源としては,マントルセクションの下位の基底スラストから流入した海水や,断層沿いに流入した海水の可能性が考えられる .