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[SCG44-P05] 三波川帯超苦鉄質岩類に含まれるクロムスピネルの微量元素組成
キーワード:三波川帯、超苦鉄質岩類、クロムスピネル、白金族元素
三波川帯は,関東山地から九州地方東部にかけて分布する白亜紀の高圧型変成帯であり,白亜紀の沈み込み帯テクトニクスを記録している.四国地方中央部の東赤石地域には,エクロジャイト相の変成作用を経験した変成岩類(苦鉄質片麻岩,変斑れい岩など)に伴い,大規模な超苦鉄質岩体が露出している(例えば,釘宮・高須,2002).また,三波川帯南部の御荷鉾帯には超苦鉄質火山岩類が,三波川帯の泥質片岩中には蛇紋岩ブロック(藤原岩体など)が見られる.本研究では,これら三波川帯の超苦鉄質岩類の起源を明らかにするため,クロムスピネルの主要元素分析と微量元素分析を行った.東赤石ダナイトやクロミタイトに含まれるクロムスピネルは,Cr#(=Cr/[Cr + Al];>0.6)が高く,TiO2(<0.3 wt.%)が低い.また,微量元素パターンはGa, Ti, Niに乏しく,白金族元素パターンでRuの正の異常は存在しない.これらの結果から,東赤石ダナイトとクロミタイトは,島弧に形成されたボニナイトのような,特に枯渇したマントルに由来するマグマから結晶集積したものであることが示唆される.一方,藤原岩体の蛇紋岩や御荷鉾帯のピクライトに含まれるクロムスピネルは,東赤石岩体と比較して,Cr#(0.4-0.6)とTiO2(0.4-1.7 wt.%)が中間的である.また,微量元素パターンはGa, Ti, Niに富み,白金族元素パターンはRuに有意な正の異常が見られた.これらの結果から,藤原岩体の蛇紋岩や御荷鉾帯のピクライトは,これまでの研究で提案されているように,大規模なマントルプルームの湧昇によって生成されたプレート内マグマに由来するものであることが示唆された(Ichiyama et al.,2014).東赤石岩体が伴う変成岩類は初期ジュラ紀の海洋性島弧に形成されたものであることから(Aoki et al.,2019; 2020),東赤石岩体はイザナギプレート上の前期ジュラ紀の海洋性島弧の下部地殻の一部であったと考えられる.一方,藤原岩体の蛇紋岩や御荷鉾帯のピクライトは後期ジュラ紀の海洋性台地の断片である可能性が高いと考えられる.これらの結果は,三波川変成帯のすべての超苦鉄質岩類がイザナギプレートの沈み込み過程を経てもたらされたことを示唆している.