17:15 〜 18:30
[SCG44-P08] 瀬戸地域における堆積性カオリン鉱床下部のカオリン質サプロライト構成鉱物の産状
キーワード:カオリナイト、グリーンサプロライト、SEM-EDS、DCB法
カオリンは地球表層で普遍的に存在する粘土鉱物であると同時に、セラミックスや耐火材、フィラーなどの原料として用いられる重要な非金属鉱物資源である。日本国内におけるカオリン質粘土資源の多くは瀬戸・東濃地域に広がる堆積性カオリン鉱床に依存している。この地域の粘土資源(蛙目粘土・木節粘土)は花崗岩質の砕屑物から形成したものであり、高い可塑性・耐火度、白色度の高い焼成色など陶磁器やタイルの原料として優れた性質を持つ。一方で、近年は鉱量の枯渇など将来の原料確保に懸念が生じていることから、蛙目粘土・木節粘土の下部に存在する花崗岩風化殻に相当するカオリン質サプロライトを未開発資源と捉えてその利用が検討されてきた。また、カオリン質サプロライトの分布は上部のカオリン鉱床の分布と密接な関係にあることから、良質な堆積性カオリン鉱床の形成環境を推定するためにも注目されている[1]。本研究では現在利用されている蛙目粘土・木節粘土の下部に存在するカオリン質サプロライトを対象に、特に焼成色に影響する不純物である鉄の形態に着目しながら、その鉱物学的特徴を調べた。
瀬戸層群上部の矢田川層および下部の瀬戸陶土層が露出する、愛知県瀬戸市北部の稼行鉱山から試料を採取した。瀬戸陶土層のうち、木節粘土と蛙目粘土、その下部に存在するカオリン質サプロライト(緑灰色を呈することから以降、“グリーンサプロライト”と呼称する)をそれぞれ採取した。バルク試料および0.2-2 μm以下の粒径を水簸で集めた粘土画分について、XRF・粉末XRD・SEM-EDSによって主要元素および主要構成鉱物を調べた。結果、3種類の試料の主要構成鉱物は基本的に石英、長石、カオリナイトであり大きな差はなかったが、蛙目/木節粘土中にも共通して認められる長石由来の微粒なカオリナイトに加えて、グリーンサプロライト中には黒雲母由来の粗粒(~数百µm)のカオリナイトの二形態が混在していることが新たに分かった。また、グリーンサプロライトに含まれている鉄のうち、非晶質の水酸化物・酸化物に由来する量を推定するために、DCB法[2]による鉄水酸化物・酸化物の抽出を行い、抽出液中の鉄濃度をICP-AESによって定量した。グリーンサプロライト中の粘土画分についてはDCB法による抽出で半分以上は鉄を除去できるが、粗粒なカオリナイトも含むバルク試料からは鉄が25%程度しか抽出できないことが分かった。すなわち、粘土画分中の鉄の半分以上はカオリナイトの構造中ではなく抽出可能な水酸化物などとして鉄が混在しているといえる。さらに、メスバウアー分光に基づく鉄価数の推定結果と併せると、グリーンサプロライト中のカオリナイトに含まれる鉄は恐らくFe2+:Fe3+=7:5程度の価数比になっていることが示唆された。このことは、グリーンサプロライト層の緑色がFe²⁺によるものであるということと関係しているといえる。さらに、グリーンサプロライト層を陶磁器原料として使用した際、カオリナイトの構造中に含まれるFe²⁺の酸化のしやすさにもよるが、Fe³⁺が主体として存在している場合よりも焼成後の色の影響が小さくなると考えられる。また、以上の結果からグリーンサプロライト層のカオリン資源としての利用価値を高めるためには、粘土画分を分離し、鉄水酸化物・酸化物中の鉄を取り除くことが必要だと考えられる。
瀬戸層群上部の矢田川層および下部の瀬戸陶土層が露出する、愛知県瀬戸市北部の稼行鉱山から試料を採取した。瀬戸陶土層のうち、木節粘土と蛙目粘土、その下部に存在するカオリン質サプロライト(緑灰色を呈することから以降、“グリーンサプロライト”と呼称する)をそれぞれ採取した。バルク試料および0.2-2 μm以下の粒径を水簸で集めた粘土画分について、XRF・粉末XRD・SEM-EDSによって主要元素および主要構成鉱物を調べた。結果、3種類の試料の主要構成鉱物は基本的に石英、長石、カオリナイトであり大きな差はなかったが、蛙目/木節粘土中にも共通して認められる長石由来の微粒なカオリナイトに加えて、グリーンサプロライト中には黒雲母由来の粗粒(~数百µm)のカオリナイトの二形態が混在していることが新たに分かった。また、グリーンサプロライトに含まれている鉄のうち、非晶質の水酸化物・酸化物に由来する量を推定するために、DCB法[2]による鉄水酸化物・酸化物の抽出を行い、抽出液中の鉄濃度をICP-AESによって定量した。グリーンサプロライト中の粘土画分についてはDCB法による抽出で半分以上は鉄を除去できるが、粗粒なカオリナイトも含むバルク試料からは鉄が25%程度しか抽出できないことが分かった。すなわち、粘土画分中の鉄の半分以上はカオリナイトの構造中ではなく抽出可能な水酸化物などとして鉄が混在しているといえる。さらに、メスバウアー分光に基づく鉄価数の推定結果と併せると、グリーンサプロライト中のカオリナイトに含まれる鉄は恐らくFe2+:Fe3+=7:5程度の価数比になっていることが示唆された。このことは、グリーンサプロライト層の緑色がFe²⁺によるものであるということと関係しているといえる。さらに、グリーンサプロライト層を陶磁器原料として使用した際、カオリナイトの構造中に含まれるFe²⁺の酸化のしやすさにもよるが、Fe³⁺が主体として存在している場合よりも焼成後の色の影響が小さくなると考えられる。また、以上の結果からグリーンサプロライト層のカオリン資源としての利用価値を高めるためには、粘土画分を分離し、鉄水酸化物・酸化物中の鉄を取り除くことが必要だと考えられる。