日本地球惑星科学連合2021年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-CG 固体地球科学複合領域・一般

[S-CG46] 地球惑星科学におけるレオロジーと破壊・摩擦の物理

2021年6月5日(土) 10:45 〜 12:15 Ch.20 (Zoom会場20)

コンビーナ:東 真太郎(東京工業大学 理学院 地球惑星科学系)、清水 以知子(京都大学大学院理学研究科地球惑星科学専攻)、桑野 修(国立研究開発法人 海洋研究開発機構)、田阪 美樹(静岡大学)、座長:清水 以知子(京都大学大学院理学研究科地球惑星科学専攻)、桑野 修(国立研究開発法人 海洋研究開発機構)

12:00 〜 12:15

[SCG46-12] 炭酸塩岩の高歪速度変形時の挙動

★招待講演

*黒澤 耕介1、玄田 英典2、東 真太郎3、岡崎 啓史4、大野 遼1、新原 隆史5、三河内 岳6、富岡 尚敬4、境家 達弘7、近藤 忠7、鹿山 雅裕8、小池 みずほ9、佐野 有司10、松崎 琢也11、村山 雅史11、佐竹 渉1、松井 孝典1,12 (1.千葉工業大学 惑星探査研究センター、2.東京工業大学 地球生命研究所、3.東京工業大学 理学院 地球惑星科学系、4.海洋研究開発機構 高知コア研究所、5.東京大学 大学院工学系研究科 システム創成学専攻、6.東京大学 総合研究博物館、7.大阪大学 大学院理学研究科 宇宙地球科学専攻、8.東京大学 大学院総合文化研究科 広域システム科学系、9.広島大学 大学院理学研究科 地球惑星システム学専攻、10.東京大学 大気海洋研究所、11.高知大学 海洋コア総合研究センター、12.千葉工業大学 地球学研究センター)

キーワード:天体衝突、炭酸塩、塑性変形

大気水圏を持たない太陽系固体天体の表面を支配する地形は衝突クレータである. また地表で発見されるほとんどの隕石には高応力条件での変形によって引き起こされる独特の変成組織が含まれている. 天体間相互衝突が太陽系における基本的な地質過程の一つであることを物語る. 高速度天体衝突が起こると励起される衝撃波によって物質は流動化し変形する. その際の特徴的歪速度は衝突速度と衝突天体直径の比で表され, 典型的には1 s-1を超える. 10 km/sを超えるような超高速度衝突の際には発生する衝撃圧力が100 GPaを超え, 不可逆圧縮に伴う温度上昇によって完全流体近似が成立する. 衝突現象のこれまでの理解は完全流体近似が前提となっていることが少なくない. ところが隕石母天体が存在していた小惑星帯の平均衝突速度は~5 km/sであり, 岩石物質の音速と同程度であることから衝突時の弾塑性体応答は無視できない. 近年Kurosawa and Genda (2018), GRL, 45, 620-626は低速度天体衝突時の塑性変形に伴う加熱度は衝撃波伝播時の不可逆圧縮によるそれよりも大きくなり得ることを数値的に示した. 惑星科学の衝突研究において岩石物質の流動則を理解することの重要性が高まっているといえる.

このような状況を踏まえて我々は炭酸塩岩の衝撃応答について多角的な検討を開始した. 炭酸塩岩を使うことの利点は(1)降伏応力の温度圧力依存性が火成岩と同様の経験式で表現できること, (2)比較的低温で揮発性成分(CO2)を放出するため, CO2発生量を計測することで試料中の加熱度を定量的に評価できること, (3)安価に均質な実験試料を手に入れることが可能であること, などが挙げられる. 本研究ではイタリア産のCarrara marbleを参照物質として用いた. 100 – 300 um程度のCalciteの結晶が隙間なく敷き詰められた大理石である. 本発表ではCalciteの簡易的な流動則を組み込んだ数値衝突計算の結果[Kurosawa, Genda, Azuma, and Okazaki, Revised]をもとに大理石からのCO2脱ガス量を定量的に検討する際の流動則の重要性を示す. そして現在進めている大理石の衝撃回収実験の結果を紹介する. 我々の実験では衝撃圧力1 – 10 GPa, 歪速度105 – 106 s-1を経験した大理石を回収して分析に供することができる.