17:15 〜 18:30
[SCG46-P08] 水流体と相分離するシリケイトネットワークの破壊挙動
キーワード:破壊、シリケイトネットワーク、水流体、相分離・不混和
水流体と相分離するシリケイトネットワークが自発収縮する下部地殻と、それによって受動的に変形を受ける通常岩石の上部地殻という地殻構造を仮定することで、これまでに短期的現象として地殻内陸地震、長期的現象として地殻の圧縮的安定化といった地殻内現象の説明を試みた (Koyama, JpGU2012, JpGU2019, JpGU-AGU2020, JPS2020, AGU2020)。この活動的下部地殻と受動的上部地殻において重要な問題の一つは、流体に満たされた下部地殻ネットワークの強度である。なぜなら、岩石内の亀裂へと注入された流体は、破壊を誘起することで岩石強度を実質低下させる、というよく知られた事実があるからである (Hubbert and Rubey, 1959; Michaelske, 1982)。
この流体効果は、力学的・化学的に地殻岩石の破壊を進行させる。水流体の場合には、H2Oがその圧力により非浸透性の亀裂壁を押し広げて亀裂を滑らせ (Hubbert and Rubey, 1959)、さらに亀裂先端周囲の岩石物質の結合を化学反応により切断することで亀裂先端を進展させる (Michaelske, 1982)。これらの原因は、異なる熱力学的状態から生じた二つの物質の接触にあるはずであり、この二状態が、非浸透性の界面を作り出して岩石と流体の対抗的圧力を生み、また、化学ポテンシャル勾配を作り出してそれらの界面付近での相互溶解を生む。
では、同じ単一の熱力学的状態から生じた、流体-固体間共存状態では、流体の作用はどのようなものとなるだろうか?流体と非晶質ネットワークとの相分離はまさにこのような状況を実現する (Koyama, 2009, 2018; Tanaka, 2017);水-シリケイト混合系の相分離において、共存するシリケイトネットワーク固体への水流体の効果は、上記の流体-岩石接触系の場合と同じてあろうか?ここで私は異なると予想する。なぜなら、相分離中のH2OとSiO2との熱力学的関係が、流体-岩石接触系とは異なるからである。同一の起源の二つの共存相においては、圧力は共通、かつ流体はネットワークを拡散可能であり、一方、相分離において二つの成分を不混和させる化学ポテンシャル勾配は、ネットワーク切断を生むような化学反応を抑制するはずである。よって、流体による流体固体間対抗圧力や亀裂先端の進展の作用は、共存状態のネットワークに対しては発生し難く、つまり、流体は共存ネットワークの強度を低下させ難い、ということになる。
もしこれらが正しいならば、下部地殻に仮定された流体と共存するネットワークは、流体に満たされた状況のもとでその強度を保ち得る。さらに、この収縮する下部地殻ネットワークから拡散する流体は、この下部から上部への浸透を通じて、上部地殻岩石を弱めるだろう。よって、下部地殻ネットワークは上部地殻岩石よりも強く、前者の自発収縮が後者の一方的な受動変形を引き起こす、という可能性を考えられるようになる。
この流体効果は、力学的・化学的に地殻岩石の破壊を進行させる。水流体の場合には、H2Oがその圧力により非浸透性の亀裂壁を押し広げて亀裂を滑らせ (Hubbert and Rubey, 1959)、さらに亀裂先端周囲の岩石物質の結合を化学反応により切断することで亀裂先端を進展させる (Michaelske, 1982)。これらの原因は、異なる熱力学的状態から生じた二つの物質の接触にあるはずであり、この二状態が、非浸透性の界面を作り出して岩石と流体の対抗的圧力を生み、また、化学ポテンシャル勾配を作り出してそれらの界面付近での相互溶解を生む。
では、同じ単一の熱力学的状態から生じた、流体-固体間共存状態では、流体の作用はどのようなものとなるだろうか?流体と非晶質ネットワークとの相分離はまさにこのような状況を実現する (Koyama, 2009, 2018; Tanaka, 2017);水-シリケイト混合系の相分離において、共存するシリケイトネットワーク固体への水流体の効果は、上記の流体-岩石接触系の場合と同じてあろうか?ここで私は異なると予想する。なぜなら、相分離中のH2OとSiO2との熱力学的関係が、流体-岩石接触系とは異なるからである。同一の起源の二つの共存相においては、圧力は共通、かつ流体はネットワークを拡散可能であり、一方、相分離において二つの成分を不混和させる化学ポテンシャル勾配は、ネットワーク切断を生むような化学反応を抑制するはずである。よって、流体による流体固体間対抗圧力や亀裂先端の進展の作用は、共存状態のネットワークに対しては発生し難く、つまり、流体は共存ネットワークの強度を低下させ難い、ということになる。
もしこれらが正しいならば、下部地殻に仮定された流体と共存するネットワークは、流体に満たされた状況のもとでその強度を保ち得る。さらに、この収縮する下部地殻ネットワークから拡散する流体は、この下部から上部への浸透を通じて、上部地殻岩石を弱めるだろう。よって、下部地殻ネットワークは上部地殻岩石よりも強く、前者の自発収縮が後者の一方的な受動変形を引き起こす、という可能性を考えられるようになる。