17:15 〜 18:30
[SCG46-P10] 岩石非弾性に対する理論的アプローチ;
粒界すべりモデルの二次元への拡張
キーワード:非弾性、粒界すべり、地震波減衰
岩石の非弾性は、上部マントルの地震波速度・減衰構造に大きな影響を与える物性であるが、実験が難しくデータが限られている。このため、岩石非弾性に対する理論的アプローチが重要となる。既存の実験データは、粒界すべりが上部マントル条件における岩石非弾性の主要なメカニズムの一つであることを示している(e.g., Jackson & Faul, 2010; Takei et al., 2014)。粒界すべりによる非弾性モデルは、Raj & Ashby (1971)により開発された。このモデルは、凸凹を噛み合わせた二つの弾性体ブロック間のすべりを扱う準一次元モデルであり、凸凹の振幅が小さい時に、二つのブロックのすべりによって生じる実効剛性率の低下と減衰を周波数の関数として解析的に求めている。そして周波数によって弾性、非弾性、粘性と連続的に変化する多結晶体の粘弾性的振る舞いのモデル化に成功した。Morris & Jackson (2009)は凸凹の振幅を表す微少量εを導入し、Raj & Ashby (1971)のモデルを摂動法を用いてより厳密に定式化し直した。これら従来の準一次元モデルの基本場は、一枚の平面的な粒界に加わる剪断応力の緩和のみを記述するものであり、実際の多結晶体中の粒界のように垂直応力と剪断応力の両方が働く全体的な状況は再現できていない。また、従来のモデルでは高周波側に大きなピークが存在することが予告されるが、カンラン岩(Jackson & Faul, 2010)や岩石アナログ物質(Takei et al., 2014)を用いた実験結果ではそのようなピークが見られない。本研究では、多結晶体の粒界すべりモデルを二次元で開発する。より現実的な構造でモデル化することで、基本場に鉱物粒子スケールでの噛み合わせが反映されるため、粒界の中での原子スケールでの噛み合わせを一次の摂動において考察することが可能になる。ピークの大きさを定量的に予告するためには、鉱物粒子スケールでの噛み合わせと原子スケールでの噛み合わせの両方を考慮することが重要である。
本モデルでは任意の粒子形状を持つ二次元多結晶体の剛性率と減衰を周波数の関数として求める。前述のMorris & Jackson (2009)によって提案された摂動法を用いて、まず粒界が真円の場合を基本場として解く。円の弾性変位場と応力場の一般解はLove (1927)によって求められている。これらに粒界拡散と粒界粘性に関する境界条件を与えることで、物質拡散や粒界すべりがある場合の粒子の変位場および応力場を求めることができる。そして円からずれた任意の形状の粒子については、摂動法を用いることで粒界の形状に依存した近似解を解析的に求めることが可能になる。これまでに基本場を求めたところ、Burgersモデルの粘弾性的性質を示すことが分かった。今後は1次の摂動までの解を求める予定である。
本モデルでは任意の粒子形状を持つ二次元多結晶体の剛性率と減衰を周波数の関数として求める。前述のMorris & Jackson (2009)によって提案された摂動法を用いて、まず粒界が真円の場合を基本場として解く。円の弾性変位場と応力場の一般解はLove (1927)によって求められている。これらに粒界拡散と粒界粘性に関する境界条件を与えることで、物質拡散や粒界すべりがある場合の粒子の変位場および応力場を求めることができる。そして円からずれた任意の形状の粒子については、摂動法を用いることで粒界の形状に依存した近似解を解析的に求めることが可能になる。これまでに基本場を求めたところ、Burgersモデルの粘弾性的性質を示すことが分かった。今後は1次の摂動までの解を求める予定である。