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[SCG47-03] 火山弧の隆起形態の推定を目指して:奥羽脊梁山地北部におけるアパタイトフィッション・トラック法の適用
キーワード:低温領域の熱年代学、火山弧、奥羽脊梁山地、フィッション・トラック法、隆起・削剥
弧-海溝系では,プレートの沈み込みに伴う変形(火成活動や地震活動,造山運動)が活発であり,原理的にはこのような変形現象は媒質の応答特性と加わる力を推定することで理解できる(深畑ほか,2019,地学雑誌).ただし,地殻の変形応答性(媒質特性),特に応力(力)の推定は困難であり,観測された変形に適当な仮定や制約条件(媒質特性)を設け,原因となる応力を推定することになる.弧-海溝系に一般的にみられる火山弧は,スラブの脱水やマントルウェッジの熱による地殻の部分溶融が成因とみられている(例えば,中島,2016,火山)が,火山弧の形成・発達に伴う鉛直方向の変形過程(隆起・削剥史)は定量的には理解が進んでいない.
島弧として典型的な地形配列を有する東北日本弧では,中軸部に火山弧である奥羽脊梁山地が分布し,その形成過程は層序学(Nakajima, 2013, INTECH)や火山地質学(Yoshida et al., 2013, Geol. Soc. Lon.),構造地質学的手法(Sato, 1994, JGR)などに基づいて検討されてきた.これらの研究により,第四紀以降の東西圧縮応力によって奥羽脊梁山地は急速に隆起してきたとされるが,山地の定量的な変形過程は明らかでない.近年は,日本列島のような起伏の小さい山地においても熱年代学的手法に基づく隆起・削剥史の定量的な復元が可能になり(Sueoka et al., 2016, Geosci. Front.),FT法や(U-Th)/He法などの低温領域の熱年代学的手法に基づく研究(Sueoka et al., 2017, EPS; Fukuda et al., 2019, JAES:X; Fukuda et al., 2020, EPS)が試みられている.最近の展開として,東北日本弧南部における1~数 km間隔の稠密なアパタイトフィッション・トラック法(AFT法)およびアパタイト(U-Th)/He法の適用により,奥羽脊梁山地が地質学的スケールでドーム状に隆起してきた可能性が指摘されている(Fukuda et al., submitted).このような典型的な島弧における火山弧の隆起形態の推定は,東北日本弧の構造発達史のみならず,プレート沈み込み帯に分布する火山弧の鉛直変形モデルを提供できると期待される.本研究では100万年スケールにおける奥羽脊梁山地の形成過程の推定を目的として,奥羽脊梁山地北部を横断する測線に沿って比較的閉鎖温度の低いAFT法(90~120℃: Ketcham et al., 1999, Am. Mineral.)を適用した.得られたAFT年代の空間パターンに基づき,奥羽脊梁山地の隆起形態の推定を試みた.
奥羽脊梁山地北部における7地点の白亜紀~中新世花崗岩試料のAFT年代測定結果を報告する.日本原子力研究開発機構 東濃地科学センターに敷設されたFT自動計測装置(TrackScan Plus Professional)およびレーザーアブレーション装置を備えた誘導結合プラズマ質量分析装置(Analyte G2: ArF 193 nm excimer laser+Agilent 7700x: ICP-QMS)を用いて,トラック数の計測およびウラン濃度定量分析を行った.今回新たに得られたAFT年代は数十~数Maを示し,この結果は奥羽脊梁南部で実施された既報AFT年代(Fukuda et al., submitted)と整合的である.この数Ma程度の年代は6.5 Ma頃に始まり3~2 Ma以降に加速した東西圧縮に伴う隆起・削剥(例えば, Nakajima, 2013)を反映していると示唆される.本講演では,北部におけるAFT年代の空間的傾向と南部における結果を比較し,奥羽脊梁山地全体の隆起形態を議論したい.
今後は,①FT長分布を利用した熱史逆解析や,より低温領域の熱年代学的手法の適用,②奥羽脊梁山地の詳細な形成過程モデルの検討,③他の島弧(例えば,比・ルソン弧)における同様の方法論での結果との比較を実施する予定である.
島弧として典型的な地形配列を有する東北日本弧では,中軸部に火山弧である奥羽脊梁山地が分布し,その形成過程は層序学(Nakajima, 2013, INTECH)や火山地質学(Yoshida et al., 2013, Geol. Soc. Lon.),構造地質学的手法(Sato, 1994, JGR)などに基づいて検討されてきた.これらの研究により,第四紀以降の東西圧縮応力によって奥羽脊梁山地は急速に隆起してきたとされるが,山地の定量的な変形過程は明らかでない.近年は,日本列島のような起伏の小さい山地においても熱年代学的手法に基づく隆起・削剥史の定量的な復元が可能になり(Sueoka et al., 2016, Geosci. Front.),FT法や(U-Th)/He法などの低温領域の熱年代学的手法に基づく研究(Sueoka et al., 2017, EPS; Fukuda et al., 2019, JAES:X; Fukuda et al., 2020, EPS)が試みられている.最近の展開として,東北日本弧南部における1~数 km間隔の稠密なアパタイトフィッション・トラック法(AFT法)およびアパタイト(U-Th)/He法の適用により,奥羽脊梁山地が地質学的スケールでドーム状に隆起してきた可能性が指摘されている(Fukuda et al., submitted).このような典型的な島弧における火山弧の隆起形態の推定は,東北日本弧の構造発達史のみならず,プレート沈み込み帯に分布する火山弧の鉛直変形モデルを提供できると期待される.本研究では100万年スケールにおける奥羽脊梁山地の形成過程の推定を目的として,奥羽脊梁山地北部を横断する測線に沿って比較的閉鎖温度の低いAFT法(90~120℃: Ketcham et al., 1999, Am. Mineral.)を適用した.得られたAFT年代の空間パターンに基づき,奥羽脊梁山地の隆起形態の推定を試みた.
奥羽脊梁山地北部における7地点の白亜紀~中新世花崗岩試料のAFT年代測定結果を報告する.日本原子力研究開発機構 東濃地科学センターに敷設されたFT自動計測装置(TrackScan Plus Professional)およびレーザーアブレーション装置を備えた誘導結合プラズマ質量分析装置(Analyte G2: ArF 193 nm excimer laser+Agilent 7700x: ICP-QMS)を用いて,トラック数の計測およびウラン濃度定量分析を行った.今回新たに得られたAFT年代は数十~数Maを示し,この結果は奥羽脊梁南部で実施された既報AFT年代(Fukuda et al., submitted)と整合的である.この数Ma程度の年代は6.5 Ma頃に始まり3~2 Ma以降に加速した東西圧縮に伴う隆起・削剥(例えば, Nakajima, 2013)を反映していると示唆される.本講演では,北部におけるAFT年代の空間的傾向と南部における結果を比較し,奥羽脊梁山地全体の隆起形態を議論したい.
今後は,①FT長分布を利用した熱史逆解析や,より低温領域の熱年代学的手法の適用,②奥羽脊梁山地の詳細な形成過程モデルの検討,③他の島弧(例えば,比・ルソン弧)における同様の方法論での結果との比較を実施する予定である.