17:15 〜 18:30
[SCG47-P04] 鮮新世~第四紀花崗岩類の形成深度・年代に基づく飛騨山脈黒部地域の削剥史(速報)
キーワード:黒部川花崗岩、第四紀深成岩体、Al-in-Hbl地質圧力計、ジルコンU-Pb年代測定法、削剥、飛騨山脈
一般に花崗岩などの深成岩体は,地下数km~数10kmで形成されるため,侵食・削剥により地表に露出するには107年以上を要する.一方,約5Maより若い深成岩体の露出が,プレート収束帯を中心に,地球上のいくつかの地域では報告されている(Harayama, 1992).中でも,北アルプス黒部地域では,10~0.8Maにかけて,複数回にわたって花崗岩類の貫入イベントがあったことが知られている(Ito et al., 2013, 2017).しかし,このような若い花崗岩類が,どれくらいの速度で,どのようなメカニズムで,地下深部から削剥され地表に露出するに至ったかは,十分には理解されていない.この理由の一つとして,深成岩体の削剥史の推定に有効な熱年代学の手法を適用した場合,このような若い岩体では,削剥による冷却だけではなく,岩体の初期冷却に伴う温度低下も反映するため,両者を区別するのが困難であることが挙げられる.加えて,黒部地域のように複数回の貫入イベントがあった場合,より新しい岩体の貫入や,それに伴う熱水活動による年代値のリセット,あるいはこれらによる地温構造への影響など,様々な要因に留意する必要がある.そのため,黒部地域ではいくつかの熱年代学的な研究が実施され,数Ma~1Ma以下の極めて若い年代が報告されているものの,削剥史については決定的な結論は得られていない(例えば,Ito & Tanaka, 1999; Yamada & Harayama, 1999; 山田, 1999; Spencer et al., 2019).本研究では,このような複雑な熱史・熱構造の影響を受けずに削剥史を推定する方法として,地質温度圧力計に着目した.すなわち,10~0.8Maの複数の花崗岩類について,Al-in-Hbl地質温度圧力計(Hollister et al., 1987; Schmidt, 1992; 高橋,1993; Mutch et al., 2016)で形成深度を,ジルコンU-Pb法で形成年代を決めてやれば,10Ma以降の削剥史が復元できるという狙いである.本講演では,速報値として,4地点5試料から得られた形成深度の値を報告し,Ito et al. (2013)および本研究で得られたジルコンU-Pb年代と組み合わせて,黒部地域の削剥史を議論する.地点数が少ないため以下は予察的な解釈だが,1)約5Maと約0.8Maの岩体の形成深度は,いずれも6~9km程度で有意差がなかったことから,本地域の隆起・削剥は約0.8Ma以降に本格化したと考えられる,2)約0.8Ma以降の平均削剥速度は,祖母谷の付近では,8~10mm/yrと計算できる,3)東西方向でも形成深度に有意差はみられず,黒部-高瀬破砕帯の逆断層運動により上盤側(東側)が東傾動しているという従来のモデル(原山ほか,2003,2010;原山,2015)とは不調和である.より詳細な議論は,現在測定中のAl-in-Hbl地質温度圧力計およびジルコンU-Pb年代のデータが出そろってから改めて報告する予定である.
【謝辞】
本報告は経済産業省資源エネルギー庁委託事業「平成30-令和2年度高レベル放射性廃棄物等の地層処分に関する技術開発事業(地質環境長期安定性評価技術高度化開発)」の成果の一部である.
【謝辞】
本報告は経済産業省資源エネルギー庁委託事業「平成30-令和2年度高レベル放射性廃棄物等の地層処分に関する技術開発事業(地質環境長期安定性評価技術高度化開発)」の成果の一部である.