日本地球惑星科学連合2021年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-CG 固体地球科学複合領域・一般

[S-CG47] 地殻表層の変動・発達と地球年代学/熱年代学の応用

2021年6月4日(金) 17:15 〜 18:30 Ch.16

コンビーナ:長谷部 徳子(金沢大学環日本海域環境研究センター)、末岡 茂(日本原子力研究開発機構)、堤 浩之(同志社大学理工学部環境システム学科)、田上 高広(京都大学大学院理学研究科)

17:15 〜 18:30

[SCG47-P05] レーザーパラメータがLA-ICP-MS分析結果に及ぼす影響

*伊藤 陽平1、田村 明弘1、長谷部 徳子1 (1.金沢大学)

一般的にLA-ICP-MSは、(1)試料エアロゾル生成のためのレーザーアブレーション
、(2)エアロゾルの輸送、(3)ICPトーチ内のエアロゾルのイオン化の3つの段階の
組み合わせから構成されている。試料の分析結果の確度および精度は、それらLA-ICP-
MSプロセスの各段階の最適化、および粒径や調製方法などの試料の状態に依存してい
る。金沢大学ではこれまでエキシマレーザー(波長193nm) を利用していたが、装置
の老朽化に伴いYAGレーザーを導入した。本研究ではYAGレーザー(波長213nm)へ
の変更に伴い,LA-ICP-MS測定結果がどのように影響を受けるか評価するために,レ
ーザーアブレーション段階でのレーザーパラメータの影響の理解に焦点を置き、単一
結晶試料および粉末試料ペレットのそれぞれでレーザースポットサイズ、フルエンス
、レペティーションレートを変更したLA-ICP-MS分析を行なった。ICP-MS分析は
Agilent 7500sで行なった。また粉末試料のLA-ICP-MS分析に圧縮ペレットを利用した
場合、広いスポットサイズや高いレペティーションレートなどのペレットへの衝撃が
大きいレーザー設定では3回程度の分析でペレットの破損が確認された。そこで、先行
研究の報告例は少ないが,複数回の分析が可能な強度を保有するLA-ICP-MS分析用の
樹脂タブレットが、粉末試料の分析に利用可能かの調査を行った。
LA-ICP-MS分析で得られた各元素シグナルは外部標準・内部標準を用いてキャリブ
レーションを行い濃度に換算した。単一粒子試料のDurangoアパタイトと3Fジルコン
、粉末試料のBCR-2とJA-2を分析試料として使用し、LA-ICP-MS分析結果にレーザー
パラメータが及ぼす影響を調査した。ウラン濃度を調整したシリカゲルペレットの分
析からペレット分析精度確度を確認した。レーザーの設定は、単一結晶試料ではスポ
ットサイズ15~30μm、レペティーションレート3~8 Hz、フルエンス4~12 J/cm²で変更
した値で7つの設定を準備し、粉末試料ペレットではフルエンス6~8 J/cm²で一定とし
てスポットサイズ100~200μm、レペティーションレート5,10 Hzで変更した4つの設定
を適用し分析を行った。単一結晶試料では広いスポットサイズと高いレペティーショ
ンレートが,で8 J/cm²程度のフルエンスのレーザー設定では、比較的精度と確度がと
もに高い分析に繋がることが分かった。粉末試料ペレットではエキシマレーザーより
,マトリックス効果の影響を受けやすかく,適切な内部・外部標準を使用する必要が
あった。しスポットサイズは175μm程度であること、また強度を加味した考慮してレ
ペティーションレートを設定することが質の高い分析に繋がることが分かった。樹脂
タブレットは、樹脂ブランクと比較した樹脂からのシグナル強度への影響は誤差の範
囲内ほどの小ささであった。またタブレット同士のキュリブレーションから確度が改
善されることが示された。