日本地球惑星科学連合2021年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-CG 固体地球科学複合領域・一般

[S-CG47] 地殻表層の変動・発達と地球年代学/熱年代学の応用

2021年6月4日(金) 17:15 〜 18:30 Ch.16

コンビーナ:長谷部 徳子(金沢大学環日本海域環境研究センター)、末岡 茂(日本原子力研究開発機構)、堤 浩之(同志社大学理工学部環境システム学科)、田上 高広(京都大学大学院理学研究科)

17:15 〜 18:30

[SCG47-P06] ジルコンのアルファリコイルトラック年代測定に向けた取り組み:アメリシウム線源の吟味

*中島 大輝1、長谷部 徳子1、横山 明彦1、山田 記大1 (1.金沢大学)

キーワード:アルファリコイルトラック、年代測定

地球科学において年代値は過去の現象に対し時間軸を与える最も基礎的なデータの一つである。放射壊変を利用した年代測定法のひとつに、アルファ壊変時に親核種が反跳して形成される放射線損傷を利用するアルファリコイルトラック法(ART法)がある。
 早坂ほか(2018)では、ジルコンでART年代測定を行っている。しかし、年代既知のジルコンでARTを数え、年代測定を行ったところ、期待される年代よりも若く見積もられた。その原因として、ARTの認定の不正確さによるART数の過小評価やARTの形成過程が不明なため経過時間に比例してARTが増加しているのかどうかがわからないことが考えられる。そのことを確認するためには、ジルコンに人工的にARTを発生させ、観察することが必要である。
 本研究ではARTが時間とともに増加するか確認する最初のステップとして、鉱物に人工的にARTを作る方法を確立することを目的とする。
 252Cfを利用した実験(Hashimoto et al., 1980)では、白雲母に人工的にARTを発生させることに成功しているが、252Cfはアルファ壊変だけでなく、自発核分裂するため、スパッタリング現象により周辺を汚染してしまう危険がある。そこで本研究では241Amを利用して、同様の実験が可能であるか検証した。線源としては、金沢大学アイソトープ理工研究施設所蔵の3MBqのアメリシウム線源と、アメリシウム溶液から金属板に電着させたものの二つを使用した。その後、線源の上に真空下で照射したい試料をのせ、一定時間放置し、エッチングを行ってARTができているかを確認する。今回は照射試料として、白雲母を用いて観察を行った。トラックの計数方法としては1mm四方で20カ所観察し、平均をとった。
 様々な照射パターンで行ったが、照射なしの白雲母とトラックの個数に大きな変化は見られなかった。変化が見られなかった原因として、3MBqのアメリシウム線源は線源部が1~2㎛の金、パラジウムで覆われているため、娘核種が試料方向へ飛び出すのを妨げている可能性がある。また、作成した電着板は付着したアメリシウム濃度が低かったことが原因であると考えられる。電着板作成後、実験器具にアメリシウムが大量に残っていた。このことから、より濃度の高い電着板を作成できるように検討していく必要がある。