日本地球惑星科学連合2021年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-CG 固体地球科学複合領域・一般

[S-CG47] 地殻表層の変動・発達と地球年代学/熱年代学の応用

2021年6月4日(金) 17:15 〜 18:30 Ch.16

コンビーナ:長谷部 徳子(金沢大学環日本海域環境研究センター)、末岡 茂(日本原子力研究開発機構)、堤 浩之(同志社大学理工学部環境システム学科)、田上 高広(京都大学大学院理学研究科)

17:15 〜 18:30

[SCG47-P07] モンゴルオルゴイ湖堆積物のOSL, IRSLおよび放射性炭素年代測定とハンガイ山脈における氷河後退への示唆

五十嵐 雄大1、Udaanjargal Uyangaa1、國分(齋藤) 陽子2、藤田 奈津子2、長谷川 精3、Niiden Ichinnorov4、勝田 長貴5、Davaasuren Davaadorj6、*長谷部 徳子1 (1.金沢大学、2.日本原子力研究機構、3.高知大学、4.モンゴル科学アカデミー、5.岐阜大学、6.モンゴル国立大学)

キーワード:堆積物コア、マルチ年代学、中央アジア

オルゴイ湖はモンゴル中南部「Valley of the Gobi Lakes」と呼ばれる湖が集中している谷に存在し,この地域の湖の主な水供給源であるハンガイ山脈の麓に位置する湖である.本研究では,オルゴイ湖で掘削された長尺コアに石英,カリ長石を対象とした光励起ルミネッセンス(以下OSL)年代測定と堆積物TOC,植物残査,貝化石を対象とした放射性炭素(以下14C)年代測定を適用し,年代の比較・検討を行うことでオルゴイ湖における連続的な時間的情報を提供する.

OSL年代測定用サンプルは17OLG02から一定間隔で7点を採取し,測定対象鉱物である石英とカリ長石を分離した.波長470 nm青色励起光による石英ののBlue-OSL,830 nm 赤外励起によるカリ長石のInfrared stimulated luminescence(以下IRSL)で年代測定を行なった.14C年代測定用サンプルは,17OLG01,17OLG02両コアからTOC8点,植物残査6点,貝化石3点を採取し,JAEA東濃地科学センターおよび加速器分析研究所で加速器質量分析計(AMS)により年代測定を行なった.暦年代較正曲線はIntcal20(Reimer et al.,2020)を参照した.

石英OSL年代は0.6±0.1 kaから10.7±2.5 kaの範囲,カリ長石のIRSLは,1.1±0.1 kaから52.9±5.0 kaの範囲の値が得られた.14C年代は,1.4 kaから48.6 kaの値が得られた.TOCの年代は,深度約40 cmから深度約400 cmにかけて年代の逆転があったが,貝化石および植物残査の年代は同一の線型的な増加傾向を示していた.本研究では,深度750±2 cmの同一層で3点の植物残査を測定しており,それらの年代,およびδ13Cはよく一致していた.以上より,14C年代軸の信頼性は高いと考えられる.カリ長石IRSLと14C年代を比較すると,深度580 cm,870 cm,1050 cmのIRSL年代は誤差範囲内で14C年代と整合的であった.石英OSL年代はそれらとは不一致な若い年代を示した.14Cの較正年代を,確率密度分布として示し,R パッケージBchron(Parnell et al., 2008)を用いて,年代―深度モデルを作成した.ITRAX XRFスキャンによって測定された地球化学的データおよび堆積物特性より,融解水流入イベントが示唆された層があり,それらは湖底より550-560 cm,850-860 cmの深度であった.これら長尺コアの分析結果の変動に年代軸を与え,オルゴイ湖での環境変動記録を議論する.