09:15 〜 09:30
[SCG48-02] マグマ供給系の化石のイメージング:大崩山花崗岩体の電気比抵抗構造
キーワード:花崗岩体、マグマ供給系、比抵抗構造、MT法
多くの研究から地殻内のマグマ供給系の形状が想像されている。古典的なイメージは単一または複数の回転楕円形状のマグマだまりがダイクなどを通路として繋がっているというものである。一方、近年の研究では地殻内に柱状に広がるマグマ供給系が想像されている(Cashman et al., 2017)。 このシステムはマグマ溜まりの大部分が結晶含有量40-50 % を超えるマッシュ状であり、その中に結晶含有量40-50 % 以下のレンズ状のマグマ領域が複数連結し合っているというものである。マッシュ状マグマは比較的流動性がないのに対して、結晶量の少ないマグマは流動性があり、噴火可能である。活火山の下において、よく柱状の低比抵抗体が見られるが (e.g., Bertrand et al., 2012, 2013; Comeau et al., 2015; Aizawa et al., 2014)、これらが地殻内を上昇するマグマ供給系、あるいはマグマ性の流体 (e.g., Aizawa et al., 2014) やグラファイト(Bedrosian et al., 2018) のような電気を流しやすい物質に対応しているかを判断するのは容易ではない。
また、マグマだまりが完全に固化した場合、それらは電気を流しにくい高比抵抗体としてイメージングされる (e.g., Aizawa et al., 2014, Bedrosian et al., 2018)。宮崎県―大分県県境に位置する大崩山の周辺では、14 Ma 前頃に貫入した花崗岩体 (巨大なためバソリスと言われる) と、それを囲む環状岩脈が隆起、浸食を受けてその天井部分が地表に露出している (Takahashi, 1984)。マグマだまりの化石であるバソリス (33 x 23 km) は空隙が少なく壊れにくいため、高比抵抗な値を示すことが予想される。本研究では地下の電気比抵抗構造を推定することで大崩山のマグマ供給系の化石の形状をイメージングすることを目的とする。
2020年に大崩山周辺で新たに13点の広帯域MT観測を行った。2015年、2017年に行われたMT観測のデータも含めて合計84点のデータの解析を行なった。前段階として、MT観測84点のデータから周波数応答関数 (0.003125 s to 3276.8 s) を求め、1Dインバージョンにより、比抵抗構造を推定した。得られた応答関数から1次元仮定が成立しうるのはおよそ周期1s(103~104 Ωm の一様な比抵抗値を示す深さ5~15 kmの領域に対応)までであることがわかった。そして、84点の1D構造は高比抵抗領域がおおよそ環状岩脈の内側に対応しており、特に環状岩脈の西側で極めて高比抵抗であることを示している。また、地震活動との比較により、環状岩脈の西縁では地震が起きているが高比抵抗体の内側ではほとんど地震が発生していないことがわかった。これは高比抵抗なバソリスは壊れにくいため、その周辺で地震が発生するという考えと一致する (Bedrosian et al., 2018)。発表では、3次元比抵抗構造解析の結果を示す予定である。
謝辞
本研究は科研費(JP20K04132)、「災害の軽減に貢献するための地震火山観測研究計画(第2次)」、および東京大学地震研究所共同利用(C002051)の助成を受けて実施された。
また、マグマだまりが完全に固化した場合、それらは電気を流しにくい高比抵抗体としてイメージングされる (e.g., Aizawa et al., 2014, Bedrosian et al., 2018)。宮崎県―大分県県境に位置する大崩山の周辺では、14 Ma 前頃に貫入した花崗岩体 (巨大なためバソリスと言われる) と、それを囲む環状岩脈が隆起、浸食を受けてその天井部分が地表に露出している (Takahashi, 1984)。マグマだまりの化石であるバソリス (33 x 23 km) は空隙が少なく壊れにくいため、高比抵抗な値を示すことが予想される。本研究では地下の電気比抵抗構造を推定することで大崩山のマグマ供給系の化石の形状をイメージングすることを目的とする。
2020年に大崩山周辺で新たに13点の広帯域MT観測を行った。2015年、2017年に行われたMT観測のデータも含めて合計84点のデータの解析を行なった。前段階として、MT観測84点のデータから周波数応答関数 (0.003125 s to 3276.8 s) を求め、1Dインバージョンにより、比抵抗構造を推定した。得られた応答関数から1次元仮定が成立しうるのはおよそ周期1s(103~104 Ωm の一様な比抵抗値を示す深さ5~15 kmの領域に対応)までであることがわかった。そして、84点の1D構造は高比抵抗領域がおおよそ環状岩脈の内側に対応しており、特に環状岩脈の西側で極めて高比抵抗であることを示している。また、地震活動との比較により、環状岩脈の西縁では地震が起きているが高比抵抗体の内側ではほとんど地震が発生していないことがわかった。これは高比抵抗なバソリスは壊れにくいため、その周辺で地震が発生するという考えと一致する (Bedrosian et al., 2018)。発表では、3次元比抵抗構造解析の結果を示す予定である。
謝辞
本研究は科研費(JP20K04132)、「災害の軽減に貢献するための地震火山観測研究計画(第2次)」、および東京大学地震研究所共同利用(C002051)の助成を受けて実施された。