日本地球惑星科学連合2021年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-CG 固体地球科学複合領域・一般

[S-CG48] 地殻深部のマグマ供給系の解明

2021年6月4日(金) 09:00 〜 10:30 Ch.25 (Zoom会場25)

コンビーナ:麻生 尚文(東京工業大学)、飯塚 毅(東京大学)、行竹 洋平(東京大学地震研究所)、座長:麻生 尚文(東京工業大学)、飯塚 毅(東京大学)、行竹 洋平(東京大学地震研究所)

09:45 〜 10:00

[SCG48-04] 雌阿寒岳・日光・焼岳での周期的に発生する火山性深部低周波地震活動

*栗原 亮1、小原 一成1 (1.東京大学地震研究所)

キーワード:深部低周波地震

多くの火山地域では,深さ10–50 kmで深部低周波地震(Deep low-frequency earthquake, 以下DLF とする)と呼ばれる同規模の通常の地震に比べて低周波に卓越する地震が発生している。DLFの発生メカニズムを理解するうえで、その活動様式の理解は重要である。マッチドフィルタ法を用いて作成した全国52地域でのDLFのカタログを作成し、DLFについて波形相関に基づくグループ分類を行った結果、群発的にDLFが発生するグループと、定常的にDLFが発生しているグループがあることがわかってきた (Kurihara and Obara, 2020)。

DLFの発生間隔に注目すると、既往研究においては群発的な活動が見られたカムチャッカのKlyuchevskoy火山と定常的な活動が見られたハワイのマウナケア火山において周期的なDLFの活動が観測されている(Frank et al., 2018;Wech et al., 2020)。このような周期的なDLFの活動は発生メカニズムに二次沸騰のような要因が考えられる(Wech et al., 2020)。そこで、本研究では日本全国52地域におけるDLFの発生間隔について調べた。
    その結果、そのうち雌阿寒岳、日光、焼岳においては顕著に発生間隔が揃った活動が見られた。雌阿寒岳では2つのグループ1,2があり、その両方で群発的なDLFが発生している。グループ1では2015年11月から2016年3月にかけて、群発DLFが発生しており、その活動は細かく分けると数日間続く9つのエピソードが2週間程度の間隔で繰り返している。その活動では、エピソード内のDLFのマグニチュードの上限がエピソード毎に徐々に大きくなっていく様子が見られた。一つのエピソード内では初期にやや発生間隔が短くなり、そこから徐々に発生間隔が延びていく傾向が見られた。また、雌阿寒グループ2では半年継続するエピソードが発生しており、マグニチュードは徐々に大きくなり、発生間隔は徐々に延びていく傾向があった。
     日光でのDLFは7個のグループに分類された。日光グループ1では非常に群発的な活動が観測された。ここでは全22エピソード発生しており、そのうち9日以上の継続時間がある活動は6エピソードであった。この長いエピソード中でのDLFのマグニチュードと前の地震からの発生間隔に注目すると、発生間隔は最初の1日でやや短くなり、それ以降は系統的に間隔が長くなっていた。
    焼岳でのDLFは5つのグループに分類される。焼岳ではグループ1では非常に群発的な活動が見られる。発生間隔に注目すると、全期間を通じて発生間隔1000秒以下の活動は極めて少ない。つまり焼岳では各エピソード内において、DLFが周期的に発生している。
一方で、特徴的な発生間隔が見られたのはこれら3地域と桜島など群発的な活動が見られる一部地域の一部のDLFのグループに限定されており、残りの地域では発生間隔に特徴は見られなかった。例えば富士山では多くのDLFが発生しており、群発的な活動と定常的な活動が混在したような傾向であった。富士山でのエピソードの多くは継続時間が数時間以内と極めて短く、また発生間隔に特徴は見られなかった。
このように一部のグループでは群発的な活動中において発生間隔が揃ったDLFが発生していることがわかった。一方で、定常的な活動が見られたグループと群発的な活動が見られた一部のグループを含む多くのグループにおいては発生間隔に目立った特徴は見られなかった。このように活動様式がグループごとに大きく異なることから、DLFの発生にはグループ毎に異なる複数のメカニズムが関与している可能性がある。