17:15 〜 18:30
[SCG48-P02] Matched Filter法を用いて富士山の低周波地震を検知する研究:序報
キーワード:火山、富士山、低周波地震
本講演では、Matched Filter法(MF法)を用いて、富士山の低周波地震を検出する研究の序報を報告する。
富士山直下の深さ10-25kmの範囲で通常の地震よりもゆっくりとした地震波を励起する低周波地震が観測されている(浜田, 1981; Ukawa et al., 2005)。富士山の低周波地震は常時一定の活動度で起きている様に見えるが、2000年秋のように顕著に活発化することもある(吉田他, 2006)。火山直下の低周波地震の発生原因は、火山深部のマグマ性流体が深く関わっていると考えられている(例えば、Nakamichi et al., 2003)。一方で、低周波地震と山体の膨張を示す火山性地殻変動や浅部の通常の地震の活動や地表面現象など火山活動との関係は必ずしも明瞭ではない事例の報告もある(例えば、原田他, 2010)。従って、低周波地震と火山活動の関係について検証の必要があり、低周波地震を詳細に把握することが重要である。
本研究では、はじめに、温泉地学研究所が構築した箱根山の低周波地震を検知するMF法を用いたシステムを(行竹, 2017, Yukutake et al., 2019)、富士山に適用できる様に改良した。MF法はS/N比の良い地震波形を雛形にして、連続地震波形と雛形地震波形との相関処理により、イベント検知を行う方法である(例えば、Peng & Zhao, 2009)。次に、気象庁が維持管理する一元化震源のカタログからテンプレート地震(雛形地震とも呼ぶ)の選択を行った。ここでは、2012-2020年に富士山直下で起きた比較的規模の大きいマグニチュード(M1.1以上)の39個をテンプレート地震として選択し、選択したテンプレート地震のテンプレート波形を準備した。この準備されたテンプレート波形に対して、富士山周辺の32観測点で記録された2012-2020年の連続波形に対して相関処理を行った。この処理は、テンプレート地震と相関のあるシグナルが含まれている場合に地震が起きたと判断するものである。最後に、この検知された地震の震源情報をリスト化して、震源カタログを作成した。
低周波地震の詳細を把握する前に、その低周波地震の大まかな特徴を理解する必要があるため、作成された震源カタログの性能評価を行った。例えば、2012-2020年の低周波地震はほぼ一定の割合で起きており、これは、気象庁の一元化震源カタログに収録されている低周波地震も同様であることを確認した。ただし、前者は年間約1,250個の割合で低周波地震が起きており、後者(年間約125個の割合)の約10倍に相当する。また、大きい低周波地震ほど数が少なく、小さい低周波地震ほど数が多い傾向にあり、これも、気象庁の一元化震源カタログに収録されている低周波地震で見られる特徴であることを確認した。
本研究は現在も実施中で、テンプレート地震の選択方法を工夫したり、マグニチュードが過大評価されているのを改善したりする課題も見えてきた。今回の序報では、これらを改善した結果を報告する予定である。
謝辞
本研究では、気象庁一元化震源カタログ、気象庁、防災科学技術研究所及び東京大学地震研究所観測点における地震波形記録を使用しました。また、本研究は、公益社団法人ふじのくに地域・大学コンソーシアムの共同研究助成、日本学術振興会による科研費(20K05050)の助成、中部電力株式会社「原子力に係る公募研究」の助成を受けて実施しました。
富士山直下の深さ10-25kmの範囲で通常の地震よりもゆっくりとした地震波を励起する低周波地震が観測されている(浜田, 1981; Ukawa et al., 2005)。富士山の低周波地震は常時一定の活動度で起きている様に見えるが、2000年秋のように顕著に活発化することもある(吉田他, 2006)。火山直下の低周波地震の発生原因は、火山深部のマグマ性流体が深く関わっていると考えられている(例えば、Nakamichi et al., 2003)。一方で、低周波地震と山体の膨張を示す火山性地殻変動や浅部の通常の地震の活動や地表面現象など火山活動との関係は必ずしも明瞭ではない事例の報告もある(例えば、原田他, 2010)。従って、低周波地震と火山活動の関係について検証の必要があり、低周波地震を詳細に把握することが重要である。
本研究では、はじめに、温泉地学研究所が構築した箱根山の低周波地震を検知するMF法を用いたシステムを(行竹, 2017, Yukutake et al., 2019)、富士山に適用できる様に改良した。MF法はS/N比の良い地震波形を雛形にして、連続地震波形と雛形地震波形との相関処理により、イベント検知を行う方法である(例えば、Peng & Zhao, 2009)。次に、気象庁が維持管理する一元化震源のカタログからテンプレート地震(雛形地震とも呼ぶ)の選択を行った。ここでは、2012-2020年に富士山直下で起きた比較的規模の大きいマグニチュード(M1.1以上)の39個をテンプレート地震として選択し、選択したテンプレート地震のテンプレート波形を準備した。この準備されたテンプレート波形に対して、富士山周辺の32観測点で記録された2012-2020年の連続波形に対して相関処理を行った。この処理は、テンプレート地震と相関のあるシグナルが含まれている場合に地震が起きたと判断するものである。最後に、この検知された地震の震源情報をリスト化して、震源カタログを作成した。
低周波地震の詳細を把握する前に、その低周波地震の大まかな特徴を理解する必要があるため、作成された震源カタログの性能評価を行った。例えば、2012-2020年の低周波地震はほぼ一定の割合で起きており、これは、気象庁の一元化震源カタログに収録されている低周波地震も同様であることを確認した。ただし、前者は年間約1,250個の割合で低周波地震が起きており、後者(年間約125個の割合)の約10倍に相当する。また、大きい低周波地震ほど数が少なく、小さい低周波地震ほど数が多い傾向にあり、これも、気象庁の一元化震源カタログに収録されている低周波地震で見られる特徴であることを確認した。
本研究は現在も実施中で、テンプレート地震の選択方法を工夫したり、マグニチュードが過大評価されているのを改善したりする課題も見えてきた。今回の序報では、これらを改善した結果を報告する予定である。
謝辞
本研究では、気象庁一元化震源カタログ、気象庁、防災科学技術研究所及び東京大学地震研究所観測点における地震波形記録を使用しました。また、本研究は、公益社団法人ふじのくに地域・大学コンソーシアムの共同研究助成、日本学術振興会による科研費(20K05050)の助成、中部電力株式会社「原子力に係る公募研究」の助成を受けて実施しました。