日本地球惑星科学連合2021年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-CG 固体地球科学複合領域・一般

[S-CG49] 島弧の構造・進化・変形とプレート沈み込み作用

2021年6月4日(金) 15:30 〜 17:00 Ch.21 (Zoom会場21)

コンビーナ:石川 正弘(横浜国立大学大学院環境情報研究院)、篠原 雅尚(東京大学地震研究所)、松原 誠(防災科学技術研究所)、石山 達也(東京大学地震研究所)、座長:篠原 雅尚(東京大学地震研究所)、石山 達也(東京大学地震研究所)

16:30 〜 16:45

[SCG49-11] 沈み込むスラブの年代の違いによる西南日本の火山分布の特徴~熱構造の観点から~

★招待講演

*松本 拓己1、巽 好幸2,3、末永 伸明4、吉岡 祥一4,5、金子 克哉5,3 (1.国立研究開発法人防災科学技術研究所、2.神戸大学 高等研究院海共生研究アライアンス、3.神戸大学 海洋底探査センター、4.神戸大学 都市安全研究センター、5.神戸大学 大学院理学研究科)

キーワード:火山、2次元熱対流数値シミュレーション、脱水反応、地殻熱流量

フィリピン海プレートの沈み込みによって形成された西南日本弧では、その西側の九州には13の第四紀火山が形成されているのに対し、東側の中国地方には2つの第四紀火山しか形成されておらず、火山の分布が不均一であることが見てとれる。また、四国地方、近畿地方の一部では第四紀火山が存在しないにもかかわらず高温泉が湧出している地域も存在するほか、深部低周波地震(LFEs)などの特徴的な活動が見られる。
 九州地方と中国地方の火山分布の違いの成因を理解するために、14 Ma までの PHS プレートの運動をマグマ活動の推移などに基づき再構成するとともに、2次元熱構造モデルを用いて、2つの地域の地下の熱構造を推定した。 この推定にあたり、地殻熱流量データは主に2種類を用いている。陸域は防災科学技術研究所高感度地震観測網(Hi-net)の坑井(深さ100~200m)から求められた地殻熱流量データである。20kmメッシュの観測点配置となっていることから、空間的に高密度なデータとなっており、前弧側の地域にやや高い地殻熱流量地域が存在するなどの特徴がみられる。海域は地殻構造探査に基づく推定値を用いており、非常に高密度なデータを活用している。
 フィリピン海プレートの沈み込みに伴う熱構造の推定にあたり、Suenaga et al. (2019)のモデルを用いて2次元熱対流の数値シミュレーションを行った。運動方程式とエネルギー方程式は差分法を用いて時間発展問題として解いた。エネルギー方程式には、粘性散逸、断熱圧縮、放射性元素の発熱、プレート境界面での摩擦熱、第四紀の侵食・堆積に伴う温度変化などの熱源を考慮している。
 こうした高密度地殻熱流量データより推定した熱構造モデルと脱水反応のための岩石学モデルに基づいた検討から、古い(50 Ma 以上の)火山の最上部の含水層では 90-100 km の深さで流体が活発に放出されており、九州の下には冷たいスラブが沈み込んでいることが示唆された。対照的に、中国地方の下にある若い(15~25 Ma)スラブは、浅い側、すなわち非火山性である前弧側の地下で大部分の流体を放出し、深部低周波微動やLFEsを引き起こすとともに、非火山地域に湧出する特殊な塩水泉の供給源となっていると推定される。