09:15 〜 09:30
[SCG50-02] フィリピン海スラブ-上盤プレートの接触による西南日本弧の応力場への影響
キーワード:応力蓄積、西南日本弧、フィリピン海スラブ、近畿三角帯、1891年濃尾地震、有限要素法
西南日本弧では、フィリピン海プレートが南海トラフから北西方向に沈み込み、大局的には東西圧縮の応力場が形成されている。フィリピン海スラブは、南海トラフが直線状であることからみて沈み込み開始時点でほぼ無変形であるのに対し、沈み込んだフィリピン海スラブはスラブとしては稀に見る大きな変形を被っている。特に、濃尾平野下〜紀伊半島下で顕著な尾根-谷状の形状をしている。最近のレシーバ関数解析により、濃尾平野下ではフィリピン海スラブが上盤プレートの下部地殻を下から押し込むように接触していることがわかった。スラブ-地殻接触部の直上およびその西側では、逆断層が発達しており、近畿三角帯と呼ばれる変形帯の一部をなす。その東側では横ずれ的な応力場が形成され、日本での観測史上最大の内陸地震である1891年濃尾地震(M8)が発生した。このような地殻活動パターンに対し、フィリピン海プレートの下部からの接触はいかなる影響を与えてきたのだろうか?
本研究ではこの効果を調べるために、スラブ-上盤接触域を含む領域の3次元有限要素モデル(FEM)を構築した。このモデルにおいて、ユーラシア-フィリピン海プレート境界形状は地震分布にもとづく既存研究により定めた。先行研究によれば、この地域の地震活動は長期的な東西圧縮により説明できる。そこで、本研究では、モデルに側方圧縮の境界条件を与える一方、フィリピン海プレートの沈み込み運動の直接の影響は無視した。プレート境界面における相対運動の条件として、面に垂直な成分は0とし、面に平行な成分については、フィリピン海プレートの沈み込み方向にのみ動くことが可能であるという拘束条件をつけた。また、長期間の応力蓄積を扱うために上盤リソスフェアとスラブは弾性体であるが、それらの下部は粘弾性体とした。上盤リソスフェアの厚さは20 kmから70 kmの厚さについて検討し、スラブの厚さは70 kmと固定した。粘性率を標準的な値(1019 Pa s)とすると、側方圧縮を始めて500年程度で定常的な応力蓄積状態に達する。この応力蓄積状態について、側方圧縮方向、上盤リソスフェアの厚さ、スラブの下端深度についてパラメータースタディを行った。
まず標準モデルとして側方圧縮方向を0°(東西方向)にとり、上盤リソスフェアの厚さを35 km、スラブの下端深度を100 kmとする。このモデルで内陸地震の発生域である深さ5-20 kmでの応力速度場を計算すると、スラブ-上盤地殻接触域およびその西側で逆断層的、東側で横ずれ的な応力蓄積パターンが形成された。これは観測による応力パターンをよく説明できる。次に、標準モデルから上盤リソスフェアの厚さを変えて応力速度場の変化を見ると、厚さ40 km以下では標準モデルとほぼ同じ応力パターンを示すのに対し、50 km以上では、一様な逆断層的応力パターンとなる。一方、側方圧縮方向やスラブの下端深度を変化させた場合の応力速度場への影響はそれほど大きくはなかった。
以上の結果から、近畿三角帯周囲の応力パターンは、西南日本における東西圧縮に対してフィリピン海スラブ-上盤地殻接触が与える影響によって説明できることがわかる。このモデルにより西南日本下の弾性リソスフェアの厚さは40 km程度と見積もられる。一方で、スラブ-上盤地殻接触から離れた領域(中国地方)の応力場はこのモデルでは説明できず、フィリピン海プレートの沈み込みの影響を考慮する必要がある。
本研究ではこの効果を調べるために、スラブ-上盤接触域を含む領域の3次元有限要素モデル(FEM)を構築した。このモデルにおいて、ユーラシア-フィリピン海プレート境界形状は地震分布にもとづく既存研究により定めた。先行研究によれば、この地域の地震活動は長期的な東西圧縮により説明できる。そこで、本研究では、モデルに側方圧縮の境界条件を与える一方、フィリピン海プレートの沈み込み運動の直接の影響は無視した。プレート境界面における相対運動の条件として、面に垂直な成分は0とし、面に平行な成分については、フィリピン海プレートの沈み込み方向にのみ動くことが可能であるという拘束条件をつけた。また、長期間の応力蓄積を扱うために上盤リソスフェアとスラブは弾性体であるが、それらの下部は粘弾性体とした。上盤リソスフェアの厚さは20 kmから70 kmの厚さについて検討し、スラブの厚さは70 kmと固定した。粘性率を標準的な値(1019 Pa s)とすると、側方圧縮を始めて500年程度で定常的な応力蓄積状態に達する。この応力蓄積状態について、側方圧縮方向、上盤リソスフェアの厚さ、スラブの下端深度についてパラメータースタディを行った。
まず標準モデルとして側方圧縮方向を0°(東西方向)にとり、上盤リソスフェアの厚さを35 km、スラブの下端深度を100 kmとする。このモデルで内陸地震の発生域である深さ5-20 kmでの応力速度場を計算すると、スラブ-上盤地殻接触域およびその西側で逆断層的、東側で横ずれ的な応力蓄積パターンが形成された。これは観測による応力パターンをよく説明できる。次に、標準モデルから上盤リソスフェアの厚さを変えて応力速度場の変化を見ると、厚さ40 km以下では標準モデルとほぼ同じ応力パターンを示すのに対し、50 km以上では、一様な逆断層的応力パターンとなる。一方、側方圧縮方向やスラブの下端深度を変化させた場合の応力速度場への影響はそれほど大きくはなかった。
以上の結果から、近畿三角帯周囲の応力パターンは、西南日本における東西圧縮に対してフィリピン海スラブ-上盤地殻接触が与える影響によって説明できることがわかる。このモデルにより西南日本下の弾性リソスフェアの厚さは40 km程度と見積もられる。一方で、スラブ-上盤地殻接触から離れた領域(中国地方)の応力場はこのモデルでは説明できず、フィリピン海プレートの沈み込みの影響を考慮する必要がある。