日本地球惑星科学連合2021年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-CG 固体地球科学複合領域・一般

[S-CG50] 変動帯ダイナミクス

2021年6月3日(木) 09:00 〜 10:30 Ch.21 (Zoom会場21)

コンビーナ:深畑 幸俊(京都大学防災研究所)、岩森 光(東京大学・地震研究所)、大橋 聖和(山口大学大学院創成科学研究科)、座長:橋間 昭徳(海洋研究開発機構)、大橋 聖和(山口大学大学院創成科学研究科)

09:30 〜 09:45

[SCG50-03] 日本列島の変形運動を理解するための枠組み:島弧間変動と島弧内変動

*深畑 幸俊1、岡崎 智久2 (1.京都大学防災研究所、2.理化学研究所)

キーワード:島弧間変動、島弧内変動、GNSS、歪み速度場、日本列島

日本列島の変形運動は、大局的には東西圧縮が最も顕著であるが、伊豆や日高山脈では衝突が起こり、太平洋プレート及びフィリピン海プレートの沈み込みによる変形も加わるなど、実際のところはかなり複雑である。日本列島は、千島弧・東北日本弧・西日本弧・伊豆弧・琉球弧の5つの島弧の複合体である。そこで、日本列島の変形運動をこれらの島弧間の変動と島弧内の変動という具合に分けて考えると見通しが良くなるのではないか、というのが本講演の趣旨である。勿論、既に多くの方が、無意識的に、あるいはそれ相当に意識してそのような考えを持っていらっしゃると思うが、GNSSデータの最新の解析結果(岡崎・深畑・西村、2021, JpGU)も援用しつつ、それを明確な枠組みとして用いることを提案したい。

まず、島弧間あるいは島弧内の変形を考える前に、沈み込む海洋プレートとの関係を考える必要がある。海洋プレートの沈み込みは、プレート境界面での固着と滑りを通して直接的に大きな地殻変動を生じるが、その大半は周期的なものである。しかし、例えばフィリピン海プレートの沈み込みが房総沖の3重会合点の移動を通して東北日本弧と西日本弧(まとめて本州弧と呼ぶ)の東西圧縮を引き起こす(高橋、2006)ように、しばしば島弧間あるいは島弧内変動の原因となっていると考えられる。沈み込む海洋プレートの影響について、以下では個別に言及する。

千島弧は東北日本弧と北海道中軸部で東西方向に衝突し、日高山脈が形成されている。衝突の原因は、千島弧が太平洋プレートの斜め沈み込みにより前弧スリバーとして運動しているためと考えられているが,前弧スリバーと内帯とを境する大きな活構造は知られていない。それを反映してか、北海道東部の前弧では大きな歪み速度が観測されている(岡崎ほか、2021)。

東北日本弧と西日本弧は、前述のように3重会合点の移動に起因して東西に短縮している。両者の境界は糸魚川ー静岡構造線とすることが多いが、歪み速度の解析結果(岡崎ほか、2021)を見ると、白山ー伊勢湾付近まで、あるいは近畿三角帯の西縁まで境界ゾーンとして考えた方が適当かも知れない。

伊豆弧は伊豆半島の付け根を境として本州弧と衝突している。一方、琉球弧と西日本弧は九州の中部〜南部で南北方向に伸張している。別府島原地溝帯が有名であるが、最近の測地データでは南九州の方がより伸張的である(岡崎ほか、2021)。

島弧内変動としては、中央構造線の右横ずれ運動、伊豆弧の東西伸張、琉球弧の背弧拡大が大規模なものとして挙げられる。これらはいずれも海洋プレートの沈み込みが起源となっていると考えられる。奥羽脊梁で顕著な東西短縮が起こっている一方、茨城から奈良に至る前弧で変形が少ないことも興味深い特徴である(岡崎ほか、2021)。また、火山周辺でもしばしば顕著な変動が起こっている(岡崎ほか、2021)。