日本地球惑星科学連合2021年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-CG 固体地球科学複合領域・一般

[S-CG51] 広域観測・微視的実験連携による沈み込み帯地震研究の新展開

2021年6月3日(木) 17:15 〜 18:30 Ch.12

コンビーナ:木下 正高(東京大学地震研究所)

17:15 〜 18:30

[SCG51-P02] コア試料大量CTスキャン法の紹介と南海トラフDSDPおよびODPコアの予察データ

*藤内 智士1、久保 雄介2、木下 正高3、岡崎 啓史2 (1.高知大学理工学部、2.海洋研究開発機構高知コア研究所、3.東京大学地震研究所)

キーワード:南海トラフ、熱水変質、X線CT

X線CTスキャン(以下,CT)は,密度や元素によるX線吸収量の違いを使って対象物の三次元内部構造を非破壊かつ高い空間分解能で得ることができる.地質コア試料の基礎情報としても価値が高いため,Chikyuの掘削コア試料は船上でCTデータが取られている.一方で,それ以外の掘削コア試料についてはCTデータが基本的には取られていない.大量のコア試料についてCTデータを取る際の課題の一つは作業時間であり,今回,我々は高知コアセンター(以下,KCC)において従来よりも短時間でCTデータを取得する方法を構築したので報告する.
 KCCのCTスキャナでは通常はコア試料を1本ずつスキャンする.報告する方法では,一度に12本のコア試料をスキャンし,構築した画像処理プログラムを使ってコアごとのCTデータに分割する方法にした.これらの工夫により,作業の量と時間を従来の10分の1以下に減らすことができた.具体的にはODPやIODPの1サイト程度のコア試料(数百m長)であれば,1–2日間程度でCTデータを取得できる.できたCT画像の空間分解能は約0.5 mm/pixelで,1本で撮影した場合の分解能0.2 mm/pixelに比べるとやや劣るが,コア試料の地質構造やクラックの認定あるいはCT値の深度変化の解析などには十分活用できると判断した.
 上記の方法を南海トラフ周辺の複数の掘削コアに適用して,予察的なCTデータを取得した.南海トラフでは,IODP第370次航海において室戸沖の付加体先端部のデコルマン下位の掘削コア(Site C0023)より熱水変質帯が報告されている(Tsang et al., 2020).この報告では,熱水変質した岩石の多くが重鉱物や炭酸塩鉱物の充填によって周囲の岩石よりもCT値が高くなる特性(Tonai et al., 2019)が活用された.よって,この変質帯の規模や成因を明らかにするのに,南海トラフ周辺で掘削された他のコア試料のCTデータが有効と考え,JRなどで掘削された高知県足摺沖南海トラフを中心とした7サイトのコア試料についてCTデータを取得した.その結果,複数の箇所で高いCT値を示す区間が確認された.特に,南海トラフ海側斜面のSite1177では,四国海盆堆積層の下部にCT値の高い領域があることがわかった.同じ試料を使った先行研究と比べたときに,少なくともこれらの高CT値領域の一部では,対応しそうな記載や物性測定データは確認されなかった.以上のことから,CTデータを大量に取得することでコア試料の新たな地質情報を拾い出せる可能性があると考える.