日本地球惑星科学連合2021年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-CG 固体地球科学複合領域・一般

[S-CG52] 機械学習による固体地球科学の牽引

2021年6月3日(木) 09:00 〜 10:30 Ch.18 (Zoom会場18)

コンビーナ:久保 久彦(国立研究開発法人防災科学技術研究所)、小寺 祐貴(気象庁気象研究所)、直井 誠(京都大学)、矢野 恵佑(統計数理研究所)、座長:小寺 祐貴(気象庁気象研究所)

10:15 〜 10:30

[SCG52-06] 物理的手法とデータ駆動科学的手法の統合による自然災害の予測

★招待講演

*宮本 崇1 (1.国立大学法人山梨大学)

キーワード:現象の予測、データ駆動科学、時空間データ

近年に著しい発展を遂げたデータ駆動科学の手法は,防災分野でもその活用が期待されており,ハザードの予測や現況の把握,災害対応といった場面における応用が研究されている.一方で,自然現象の本質的な不確実性や重大事象の稀少性の下ではデータの質や量の確保が難しく,データ駆動科学的手法の適用が困難になる場面が増えてきている.特に,災害事象の時間発展を予測する上では,これまでに未経験な状況を含む将来状態を予測しなければならず,このような外挿的予測の精度向上はデータ駆動科学上の大きな課題とされている.

このような背景に対して,自然法則をモデル化する物理的手法をデータ駆動科学の手法と組み合わせることにより,問題の解決を試みるアプローチが近年に有力視されている.このようなアプローチは,データから柔軟にモデルを構築するデータ駆動的手法の利点と,自然法則の適用によって外挿的な予測を可能とする物理的手法の利点を相補的に利用するものであり,自然現象の予測にも適していることが期待される.

本発表では,このような物理的手法とデータ駆動的手法の統合手法に関して概観した後,発表者による具体的な研究事例として降雨の短期予測を行った手法を紹介する.この手法は,降雨の従う支配方程式をラグランジュ的描像の下で降雨量の実質的変化項と移流項に分けて捉え,それぞれの項を別々のデータ駆動的手法によってモデル化するものである.降雨量の実質的変化項のモデル化には,動的現象の背後にある法則のデータ駆動的発見手法であるクープマン作用素解析の方法を用いており,同手法による降雨の発達・衰弱の表現性能や,従来の短期予測手法との比較結果を紹介する.