17:15 〜 18:30
[SCG52-P01] 地熱地域での微小地震観測網を対象とした深層学習による震源決定自動化
キーワード:深層学習、フェーズピック、微小地震観測、地熱開発、流体流動
地熱資源開発に伴う地震活動の変化等を評価することを目的として,地熱地域では坑内観測点を含んだ稠密な微小地震観測網が整備されている場合がある。この観測網を用いて,微小地震震源群を高分解能に追跡することで,地下の流体流動傾向を詳細に把握できる可能性がある。しかしながら,目視でのP, S波ピックに基づく震源決定は,労力やコストの面から適用が難しい場合がある。また,STA/LTAを用いた人力によらない自動イベントピック手法を用いた場合においても,高分解能な震源決定の際には,目視によるピック補正が必要となる。
そこで本研究では,特に地熱地域での微小地震観測を対象として,深層学習を用いて,目視と同程度の精度を有するイベントピック手法を開発することを目的とした。本研究では奥会津地熱地域(福島県)に2015年5月より展開されている稠密地震観測網(地表5点,坑内4点)を利用して,当該手法の開発を試みた。また,開発した手法の他地熱地域への適用可能性を検証するために,Basel地熱地域(スイス)での稠密観測網(坑内6点)で得られた地震データへの適用を行った。
奥会津地熱地域で観測された微小地震(ローカルマグニチュード-1.5~2.5程度)から得られた教師ピック(P波:33,008波,S波:65,925波)を利用して学習させた後,検証波(P波:3,344波,3,310波)で精度を確認した。その結果,P波では平均~0.03秒,標準偏差~0.46秒程度,S波では平均~0.01秒,標準偏差~0.30秒程度でピック可能なことが分かった。さらに,奥会津地熱地域で取得された連続地震データに対して,STA/LTAによりイベントを特定した後,深層学習に基づくピック手法でピック位置を補正して震源決定を行ったところ,手動ピックに基づく震源分布とほぼ同様の結果を得ることができた。本モデルをBasel地熱地域へ適用した際には,全3,069イベント(P波:17,138波,S波13,702波)に対して,P波では平均~0.15秒,標準偏差0.58秒,S波では平均~0.16秒,標準偏差~0.65秒の精度でピックされることを確認した。
今後,国内外で展開されている地熱開発地域の観測網への適用のために,当該地熱地域のデータを用いた転移学習や,層の追加等で更に精度を向上させる手法の検討を行う。
本研究の一部は独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構の地熱発電技術に関する委託研究「地熱貯留層評価・管理技術」の一環で実施された。
そこで本研究では,特に地熱地域での微小地震観測を対象として,深層学習を用いて,目視と同程度の精度を有するイベントピック手法を開発することを目的とした。本研究では奥会津地熱地域(福島県)に2015年5月より展開されている稠密地震観測網(地表5点,坑内4点)を利用して,当該手法の開発を試みた。また,開発した手法の他地熱地域への適用可能性を検証するために,Basel地熱地域(スイス)での稠密観測網(坑内6点)で得られた地震データへの適用を行った。
奥会津地熱地域で観測された微小地震(ローカルマグニチュード-1.5~2.5程度)から得られた教師ピック(P波:33,008波,S波:65,925波)を利用して学習させた後,検証波(P波:3,344波,3,310波)で精度を確認した。その結果,P波では平均~0.03秒,標準偏差~0.46秒程度,S波では平均~0.01秒,標準偏差~0.30秒程度でピック可能なことが分かった。さらに,奥会津地熱地域で取得された連続地震データに対して,STA/LTAによりイベントを特定した後,深層学習に基づくピック手法でピック位置を補正して震源決定を行ったところ,手動ピックに基づく震源分布とほぼ同様の結果を得ることができた。本モデルをBasel地熱地域へ適用した際には,全3,069イベント(P波:17,138波,S波13,702波)に対して,P波では平均~0.15秒,標準偏差0.58秒,S波では平均~0.16秒,標準偏差~0.65秒の精度でピックされることを確認した。
今後,国内外で展開されている地熱開発地域の観測網への適用のために,当該地熱地域のデータを用いた転移学習や,層の追加等で更に精度を向上させる手法の検討を行う。
本研究の一部は独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構の地熱発電技術に関する委託研究「地熱貯留層評価・管理技術」の一環で実施された。